つくろう、島の未来

2024年12月03日 火曜日

つくろう、島の未来

先進的な地域づくりで知られる島根県・海士町(島名は中ノ島)は2022年に「離島医療会議」を始めました。その狙いとは?運営を担う株式会社風と土との阿部裕志さんに聞きました。

※この記事は『季刊ritokei』43号(2023年8月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

阿部裕志(あべ・ひろし)さん
株式会社風と土と代表取締役。1978年愛媛県生まれ。2008年に海士町へ移住。
株式会社巡の環(2018年より「風と土と」へ社名変更)を仲間と創業。地域づくり事業・人材育成事業・出版事業を行う

島に住み続けるために医療と向き合う

もともと身体が強くなかったという阿部さんにとって、医療は重要なインフラでした。15年間の島暮らしを経て、海士町が掲げるキャッチコピー「ないものはない」と違わず「島でできること、できないことがある」現実も理解しているものの、やはり「不安になる気持ちはどうしようもない」。島に住み続けられるかどうかの判断に「医療が最後の関所のひとつ」だと阿部さんは語ります。

「離島医療会議」はコロナの余波が残る2022年にスタートしました。狙いは「横串の関係」で島にとって必要な医療について語り合い、その理想を追求すること。「海士町で初めてコロナ感染者が出た時、『もしあなたが感染したらどげな声かけてもらうとうれしいだらぁか?』というチラシを島の有志でつくって配布したんです。

雲南市でコミュニティナースとして活躍する矢田さんが早い段階から『自分だったらどう声をかけたらうれしい?』という声かけを実践していたのを見て取り入れました。

元々全国にコロナが広がった時に、各地の地域のリーダーと医療関係者という『横串の関係』でゆるく本音を語れる意見交換の場をつくっていたからすぐに取り入れることができたんです。」(阿部さん)。

普遍 × テクノロジー × 仕組み 横串で語り理想を求める

コロナ禍を経て医療分野のオンライン化は進み、あらゆるテクノロジーも進化しています。そんな今、島にとって必要な医療をセクター横断型で語り合おうという提案は、先進的な地域づくりを牽引してきた海士町らしく、初開催された2022年には、離島振興の専門家や医療従事者が意見を交えました。

「離島センターの三木さんには、離島医療の状況や離島が存在する意義を教えていただきました。また、離島のハンデを補う技術として、オンラインで小児科の診療を受けられる『キッズパブリック』や、眼科のオンライン診療、超聴診器など、テクノロジーの可能性も感じました」(阿部さん)。

今年の第2回目では、海士町のみならず、隣の西ノ島町、知夫村との共催という横串の体制で開催することができました。地域側の視点も強化。「島の人にとって必要な医療や、医療者側にとっての離島医療の心は、どれだけ時代が進化しても変わらない部分があると思うんです。

それを色々な島の皆さんと考えるきっかけにできたら」(阿部さん)。島のリアルと、地域医療のリアル、そして最新テクノロジーや仕組みなど、横串で語り合うことで、離島医療の理想を具現化する「離島医療会議」にご注目ください。
 


今年も開催されます!「離島医療会議」2023年

日時:2023年9月17日(日)13:00〜18:00
対象者:医師、医療関係者、自治体関係者
会場:オンライン(Zoom)※アーカイブ公開あり
参加費:3,000円
共催:海士町、西ノ島町、知夫村、アンター株式会社、株式会社風と土と
後援:島根県、一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会、隠岐広域連合立隠岐島前病院、NPO法人離島経済新聞社

チケット予約:https://ritouiryoukaigi2023.peatix.com/


セッション①「地域からみた離島医療」
地域住民の視点で離島医療の重要性や未来について語る。

【出演者】

矢田明子
Community Nurse Company 株式会社 代表取締役、一般社団法人Community Nurse Laboratory 代表理事

山下賢太
東シナ海の小さな島ブランド株式会社 代表取締役

鯨本あつこ
NPO法人 離島経済新聞社 代表理事・統括編集長

阿部裕志 モデレーター
株式会社 風と土と代表取締役


セッション②「離島医療の心」
時代が変わっても変わらない離島医療に向き合う心について語る。

【出演者】

小川信
国民健康保険大和診療所 所長

白石吉彦
島根大学医学部附属病院 総合診療医 センター長

本村和久 モデレーター
まどかファミリークリニック


セッション③「仕組みで支える離島医療」
育成や医師確保など、離島医療を支える仕組みづくりについて語る。

【出演者】

白石吉彦
島根大学医学部附属病院 総合診療医 センター長

谷口倫子
厚生労働省 医政局 地域医療計画課 医師確保等地域医療対策室

金子惇
横浜市立大学大学院 データサイエンス研究科 ヘルスデータサイエンス専攻、医学部臨床疫学・臨床薬理学講座准教授

中山俊 モデレーター
アンター株式会社CEO、整形外科医


セッション④「テクノロジーで変わる診療風景」
テクノロジーは離島の診療風景をどのように変えていくか最前線の取り組みを紹介する。

【出演者】

那須道高
仁愛会 浦添総合病院 救急集中治療部集中治療重症 管理部長

岡部大地
株式会社ジャパンヘルスケア 代表取締役医師

青柳直樹
ドクターメイト株式会社 代表取締役医師

西山知恵子 モデレーター
アンター株式会社 取締役


【関連サイト】
離島医療会議2023 特設サイト

特集記事 目次

特集|島で守る命と健康

命と健康について考えることはありますか?
400島あれば400通りの個性がある日本の島々で健やかに生き、幸せに命をまっとうするためには、自分や大切な人たちの命と健康とどのように向き合い、守ればよいか。
リトケイの命と健康の特集では、誰にとっても大切なテーマを島の皆さんや読者の皆さん、有識者の皆さんと一緒に考えていきます。

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