特集【きれいな島をいつまでも】では、「きれいな島がいつまでも続くように」という願いを込めて、島のごみについて考えていきます。
続くキーワードは、ごみの減量化に向けて注目したい「ゼロ・ウェイスト」。「無駄、浪費、ごみをなくす」という意味で、出てきた廃棄物をどう処理するかではなく、そもそもごみを生み出さないようにしようという考え方です。
この記事では、島で「ゼロ・ウェイスト」を推進するふたつの事例を紹介します。
※この記事は『季刊ritokei』41号(2023年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
18歳以下のCFOの問いからはじまったゼロ・ウェイストへの道
石垣島(いしがきじま|沖縄県)の中心部にあるカフェ「ユーグレナ・ガーデン」は、2020年9月に沖縄県では初となるゼロ・ウェイスト認証を取得した。ゼロ・ウェイスト認証は、一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンが運営する認証制度で、ごみや無駄をなくす活動に取り組む事業所を公的に認証する制度だ。
ユーグレナは、2005年に石垣島で微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の大量培養技術の確立に成功したことから、事業を拡大してきた企業。
サステナビリティを事業軸に据える革新的な経営手法が多方面から注目され、なかでも2019年に導入した18歳以下がCFO(※)に就任する取組は話題を集めた。
※Chief Future Officer:最高未来責任者
ゼロ・ウェイストに踏み出すきっかけもCFOの発案だった。当時のCFOが地球環境を良くしていくための提言で問うたのは、「環境に良くないといわれるペットボトルをなぜ使うのか?」ということ。商品を売りやすいからという考え方を改め、2020年には全社的にごみの削減に踏み出し、ユーグレナ・ガーデンのゼロ・ウェイスト認証取得に向けた活動も始まった。
認証要件のうち「ゼロ・ウェイスト活動に必要な知識を備えており、そのための人材育成を行っている」「適切なごみの分別、資源化を行っている」「ゼロ・ウェイスト活動を継続的に発展させていくための計画が組まれている」ことを満たし認証に至った。
認証に向けては、ゼロ・ウェイストの先進地として知られる徳島県上勝町のCEO(※)とユーグレナ・ガーデン担当者などで意見交換を実施。
※Chief Environment Officer:最高環境責任者
基本となる考え方を共有し、ごみの分別を徹底することから始めた。ユーグレナ・ガーデンのゼロ・ウェイスト認証では、特に、地域社会と交流を深めながら季節ごとの旬の地元食材を調達し、生産や流通過程で廃棄されやすい食材を無駄なく使っていることや、資材や備品にもごみが出にくく環境負荷の低いものを選択する工夫がなされていることも評価されている。
ユーグレナの広報担当者は「当社は石垣島で『石垣島ユーグレナ』や『八重山クロレラ』を育ててきました。その生産拠点として環境を守っていこうという意識で取り組んでいます。島と共に発展していけたら」と話す。ごみの削減に向けて、企業活動がゼロ・ウェイストにシフトする意義は深い。
量り売り・共同購入・自然に還る家 ごみが減らせる小さな循環
取材・中島遼
屋久島(やくしま|鹿児島県)でエコビレッジ「aperuy(アペルイ)」を営む田中あゆみさんは、2021年9月に調味料や自然食品の量り売りを始めた。
きっかけは、オーガニック食品を通販で購入していた際、島内に同様の友人がいると知り、段ボールや梱包資材のごみを減らすために共同購入を提案したことだった。その後、より多くの人に知って欲しいと店舗の開店に至った。
取り扱うのは醤油や砂糖などの調味料、玄米、小麦粉、ドライフルーツ、ナッツ、豆類、スパイスなど。屋久島産の食品も揃い、人気は米粉パンづくりに適した無農薬米粉(900g/1,200円)や、昆布(130円/10g)、原木椎茸(108円/10g)などの乾物類だ。
利用客は友人知人、単身女性が半々で、単身の若い女性客が多いのは意外だった。「離島は取り寄せに送料がかかるため、少量の自炊の材料を買いたい人にとって、量り売りはありがたい存在。他にも引っ越しなどの荷物整理で、量り売りに使える空き容器を提供しにやってくる人もいます」(田中さん)。
国際協力でアフリカに滞在した経験を持つ田中さんは、現代の日本の暮らしに疑問を抱くようになり、自らが望む暮らしをしようと2008年、夫の俊三さんと屋久島に移住した。家は屋久島の地杉だけを使用し、台所のシンクは全て廃棄物を再利用。断熱材は不使用のため朽ちると自然に還る。
ごみを出さないだけでなく、人のエネルギーも最小限に、暮らしやすくデザインしている。「食べ物の自給率を上げたい。自給できない物は買わざるを得ないし、離島が故に外からしか買えない物もある。
ここで乾物も調味料も野菜も手に入るようになれば、もっとごみを減らせると考えています」という田中さんは、ものを「取り入れること」に対して「出すこと」を意識しない人が多いのではないかと課題感を抱くが、そこは島に利点がある。
「人が出したものがどのように処理されて、何処にいくのか。できるだけ循環させるために、人や自然の繋がりが見える環境は大切で、屋久島はそれが見える場所です」。