つくろう、島の未来

2024年04月27日 土曜日

つくろう、島の未来

ひとえに「島の観光」といっても、地理的条件や自然環境、歴史、文化、産業構造、人口規模などの違いによって個性があります。

400島あれば400様ある個性の一端にふれるべく、7つの島に「観光の歴史」「見どころ」「課題」「取り組み」について尋ねました。

香川県の直島は、宇野港(玉野市)から定期船で約15~20分、高松港(高松市)から定期船で約50~60分でアクセスできる島。直島町まちづくり観光課に聞いた、直島観光とは? (取材・上島妙子)

この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』29号「島と人が幸せな観光とは?」特集(2019年8月27日発行)と連動しています。

昭和41年より企業による観光開発が本格化した直島観光

直島の観光は昭和41年に藤田観光パラダイスがオープンし、海水浴場、キャンプ場、展望台などが整備されたことから本格化しました。しかし、国立公園特別地域の規制によるホテル建設計画の頓挫や石油ショックなどで経営が悪化。

昭和62年に開発会社が解散しましたが、同年、開発会社の所有地を福武書店(現:ベネッセホールディングス)が一括購入。

日本の原風景が残る瀬戸内の美しい自然や地域固有の文化の中に「現代アート」と「建築」をおくことで特別な場所を生み出す「直島文化村構想」のもと、ホテルや美術館などを整備し、現在は文化性の高い観光地として国内外から多くの観光客が訪れるようになりました。

直島・本村の風景(写真・青地大輔)

瀬戸内国際芸術祭も盛況。来島者の約半数が欧米中心の外国人観光客

「現代アートと建築」「瀬戸内海の多島美に囲まれた風景」「古い町並みとそこに暮らす人々」の3つが直島観光の見どころで、観光客は、外国人の割合が約半数ほどで、アメリカ、フランスなど欧米の方が特に多く、近年は香港、台湾、中国などアジアからのお客様も増加し、女性が非常に多いです。

今年は3年に1回、瀬戸内海の島々を舞台に開催される第4回「瀬戸内国際芸術祭」が開かれており、期間限定の見どころも多数あります。

草間彌生「赤かぼちゃ」2006年直島・宮浦港緑地(写真・青地大輔)

観光公害が住民生活に影響しやすいことが直島観光の課題

瀬戸芸の期間中だけでも多くの観光客が来島する直島は、開催地の中でも特ににぎわいを見せています。来場者や住民に過度な負担が及ばないよう、しっかりと受入対策をすべく、観光客が勝手に住民の家に入ったり、自転車の左側通行などのルールを守らない方へは、ガイドからお声がけさせていただくようにしています。

直島では、観光産業の場が地域住民の生活エリアの中にあるため、裏返せばゴミの問題やマナー、混雑といった観光公害が、住民生活に直接大きく影響します。

直島の観光客は増加傾向ですが、世界的に有名な現代アートや建築があっても、地域に根付く自然や、そこに住む人々の生活・文化が損なわれれば、魅力ある観光地ではなくなるため、このバランスが崩れないよう、注意を払う必要があります。

観光をきっかけに移住する例も。経済効果だけでなく地域の活性化にも期待

現代アートや建築などの観光資源が、地域住民の生活エリアにあるため、観光することで島の生活を知ることができます。地域住民と触れ合う機会が多いためか、近年は観光で訪れた方が移住された事例もあります。

多くの離島では過疎化が急激に進み、直島も例外ではありません。観光地として多くの方に直島を好きになってもらうことで、経済効果だけではなく、地域の活性化に大きな効果を発揮するのではないでしょうか。

贅沢がつまった直島観光は日帰りよりも宿泊をして楽しんで欲しい

周囲16kmの小さな直島ですが、東洋一の金を製造する製錬所があり、世界的に有名なアート作品や美術館がある贅沢な島です。

船でしか渡れない島なので、日帰りよりは、ぜひ一泊して、直島を隅々まで楽しんでいただければと思います。

アート作品のライトアップや、島々に夕日が沈む景色、対岸の高松の夜景や地元の人も集まる飲食店など、夜の直島も魅力的です。レンタサイクルでゆっくり島めぐりをし、島の魅力を存分に感じていただけたら幸いです。

特集記事 目次

特集|島と人が幸せな観光とは?

現在、国が定義する日本の有人離島は416島。豊かな自然や多様な歴史文化、人と人が助け合う共助社会が存在する島は、いずれも住民やゆかりを持つ人にとって重要な場所であり、海洋資源や国土保全の視点に立てば、すべての日本人にとって重要な拠点ともいえる。 しかしながら、多くの島では戦後から人口減少が続き、離島地域に暮らす0~14歳の人口は、平成17年から27年までの10年間だけで、20%も減少している現実がある(平成17年、27年国勢調査)。 いくら愛着があっても、島を担う人が不在となれば、その島の文化は途絶えてしまう。離島経済新聞社では、住民にとって、島を想う人にとって、すべての日本人にとって、重要な島の営みが健やかに続いていくことを願い、「島の幸せ」を「健全な持続」と説き、持続可能な離島経済のあり方を追求。 今回は、多くの島で産業の中心を担う「観光」をテーマに、持続可能な観光を考える。 この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』29号「島と人が幸せな観光とは?」特集(2019年8月27日発行)と連動しています。

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