伊豆諸島北部に位置する伊豆諸島最大の島、伊豆大島(いずおおしま|東京都大島町)。移住から5年経つ今も、島の魅力発掘の冒険にいそがしいデザインユニット「トウオンデザイン」。彼らが運営しているコミュニティースペース『kichi』での活動や日々の出来事をつれづれに。
アートに触れる場所をつくる
先日、kichiで絵かきの朝倉弘平さんの個展を開催しました。
朝倉さんには伊豆大島出身の友人がいて、以前からよく伊豆大島を訪れていたそうです。
そういえば、一昨年の冬に元町港の船客待合所で開催したクリスマスイベント「ハトバ聖夜際」でも新聞やガムテープでかぶり物をつくってモンスターに変身するワークショップを行っている「モンスターズ」というグループの一員として参加していただきました。
彼の描く絵は色彩に満ち、生命の粒子がほとばしるような光に満ちた世界を描いていて、とても好きです。以前から気になっていた方で、今回のkichiでの個展開催をとてもうれしく思いました。
個展のタイトルは「黄色い雨と青い火山」。
朝倉さんは“黄色い雨”や“青い火山”といった本来あり得ない言葉を用いることで、異常気象や環境汚染といった今の自然環境をとらえようとしていました。今回の展示について以下のような言葉を寄せてくださいました。
『「黄色い雨と青い火山」展示に向けて
去年猛威を振るった台風26号。伊豆大島は大打撃を受けました。
降った雨の量は観測史上3番目の雨量。リトケイで読んだ。
雨って、今回のような被害をよく出す恐ろしいもの。
だけど雨がなくちゃ生き物は生きて行けない。私たち人間も。
日本は地震も津波もたくさん起きる。活火山もたくさん。三原山もそうだし。
自然災害はいつも身近にあるもの。
だからこそ、日本人は自然とうまく付き合う智慧を育んできた。
自然に殺され、自然に守られる命。
でも、ここ最近、昔からのバランスが崩れつつある。
異常気象、温暖化、放射能、PM2.5、農薬…
経済発展のために推し進められてきたことが、今世界中の僕たち生き物を苦しめてる。
どうやって暮らす?
わからない?
考えよう。
ぼくも考える。』
“どうやって暮らす?”という言葉、この問いかけは常に意識の中にとどめておこうと思いました。ここ最近の気象状況や災害発生状況を見ると、自分自身や大切な人の身を守るには日ごろからの準備が必要です。また、“暮らし”については色々と思いがあって伊豆大島に引っ越してきたわけですが、忙しさから“暮らし”について考えることから少し遠ざかっていたような気がします。あらためて“どうやって暮らす?”と考えることは良い機会だと思いました。
さて、今回の個展は3月15日から3月22日の8日間でしたが、開催初日はオープニングイベントを開催しました。午後3時から5時までは「ステッキペンで描こう」と題して、木の枝と3色の絵の具で描くワークショップ。
多くの島の子どもたちが参加してくれてワイワイにぎやかなワークショップになりました。子どもはやっぱりお絵かきが好きなんですね。みんな夢中にそれぞれの世界を描いていて、親子で楽しんでいる様子にほっこりしました。
そして、午後6時からは「オープニングパーティ」。
メインイベントはライブペイント。シンガーソングライターの吉廣麻子さんとギタリストの花輪直弥さんとのデュオによる演奏にのせて朝倉さんが即興で絵を描いていきます。
描かれていく様子がプロジェクターで映し出されるので、吉廣さんと花輪さんの素敵な演奏とともに、踊るように筆がはしる様子が見てとれてとても心地よい時間でした。お酒やお料理も進んで心身ともに緩やかに刺激される感じが何ともクセになるひとときでした。
お料理はもちろん「つばきッチン」プロデュース。今回は鹿肉を使ったお料理やシェフ自ら釣り上げたメジナを使った椿油と明日葉ジェノベーゼソースのカルパッチョ等、相変わらず手の込んだ美味しいお料理が並びました。
そして、個展はすべての日程を終えて無事に終了。
作品搬出の日、フライヤーに採用されていた作品「黄色い雨と青い火山」はkichiに残ることになりました。
実はちょうどこの時、東京都が推進する「東京文化発信プロジェクト」の東京アートポイント計画のひとつとしてkichiの新しいプロジェクト「三原色(ミハライロ)」がはじまる頃で、伊豆大島の象徴である三原山が独自のタッチと色彩で描かれた作品がプロジェクトのイメージに重なったため、購入に至りました。
「三原色(ミハライロ)」については、また別の機会にご紹介させていただきます!
今回のイベントや個展の開催にご協力いただいた関係者の皆さまやスタッフの皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。素敵なパフォーマンスを魅せてくれた吉廣さん、花輪さん、ありがとうございます。
最後に、個展を開催してくれた朝倉さん、今回の企画の仕掛け人である吉本くん、本当にありがとうございました。
(つづく)