1万4,125の島からなる日本には421島の有人島があり、そのうち416島が有人離島と呼ばれています。
人の営みがある島のそれぞれに、自らが暮らす地域を支える人がいて、島の外から島を支える人や、島を支えるさまざまな法律や制度があります。
特集「島を支える仕組みのキホン」では、離島特有の法律や制度を中心に、島を支える仕組みのキホンを紹介します。
編集・ritokei編集部
取材協力・国土交通省、公益財団法人日本離島センター、長嶋俊介(日本島嶼学会参与)
※この記事は『季刊ritokei』42号(2023年5月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
島を支える島の人と島を支える国の仕組み
皆さんが暮らす島(あるいは好きな島やゆかりのある島)は、どのような人と仕組みに支えられているのでしょうか?まずは島を起点に「島を支える仕組み」をとらえていきましょう。
人が生きる島にはそれぞれ、独自の文化や暮らし、産業や自然などが存在しています。それを「島の宝」と呼ぶならば、宝を支える一番の主体は「島の人」であり、そんな島と人をとりまく形で、島外から島を支える人や仕組みが存在しています(図1)。
日本の有人島には、最も大きな本州から最も小さな仁右衛門島(にえもんじま|千葉県)まで、大きさや人口規模など、多様な個性があります。それぞれの島が東西南北3,000キロメートルに散在し、気候や風土もさまざま。
屋久島(やくしま|鹿児島県)のように水が豊富な島もあれば、波照間島(はてるまじま|沖縄県)や与論島(よろんじま|鹿児島県)のように昔は雨水が命をつないでいた島もあり、たくさんの野菜や果物が実る島や魚が捕れる島から佐渡島(さどがしま|新潟県)のように金が採れる島まで、土地の恵みひとつとっても多種多様です。
土地が広く、資源に恵まれる豊かな島であれば、その島だけで暮らしを営んでいくこともできるでしょう。しかしながら、衣食住や医療や教育、産業や社会インフラなどを得るならば、ひとつの島だけでまかなうことはできません。
また、他地域と行き交うための交通手段の確保や、海洋ごみや気候変動のような世界規模の問題への対応、島を侵略するかもしれない他国の脅威から暮らしを守ることなど、ひとつの島だけでは太刀打ちできないこともあるため、ひとつの国としてまとまって日本列島を守る仕組みがあるのです。
島を支える仕組みのキホンは「永遠の微調整」
大小の島々が連なりタツノオトシゴのようにも見える日本列島は、1万4,215の島からなる島国です。世界中の国のなかでも、自国の海として活動できる海洋面積(排他的経済水域/EEZといいます)が広く、その広さは世界6位。「豊かな海に恵まれた島国・日本」として存在できる理由は、大きな島だけでなく、小さな島にも人の営みがあるからに他なりません。
日本列島は、国民主権・平和主義・基本的人権の尊重という三大原則に則る日本国憲法のもと、選挙によって選ばれた国民の代表者がつくる2,000種類もの法律によって、国民の安心安全が維持されています。
国には国民の安心安全を守る責務があり、その方針をもとに、都道府県や市区町村が、それぞれの地域特性にあわせた制度や規則をつくり、人や地域の困りごとが解消されたり、未然に防がれているのです。
さらに、国や地方公共団体の仕組みのほかにも、公益団体や法人による独自の支援制度や、ボランティア・寄付・地域の自治活動など、地域の困りごとを助ける多様な仕組みが存在しています。
この特集では、そうした仕組みのなかでも離島ならではの法律・制度を中心に、「島を支える特別な仕組み」のキホンを学んでいきますが、はじめに断っておきたいのが、どの仕組みも「万全」ではないことです。
400島あれば400通りの暮らしがあり、人の価値観もさまざま。社会も絶えず変化していますから、すべての地域、すべての価値観にぴったりの仕組みをつくることは至極困難。そもそも「永遠の微調整」(※)を行う必要があるものなのです。
※『自分ごとの政治学』(NHK出版)より、常に世の中の変化に合わせて漸進的に変化していくことが大切であることを「永遠の微調整」と表現する、政治学者・中島岳志氏の言葉を引用
微調整のもとになるのは国民や島民として生きる一人ひとりの「声」。ですから、ここで知った仕組みについて、ギモンや意見が心に湧いた人は、今後の仕組みの微調整に活かす大事な「声」にしてください。
なお、特集をご覧になって「そんなことなら知っているよ」と感じたあなたは、すでに島を支える仕組みのキホンマスター。知られているようで知られていない仕組みを知るキホンマスターの皆さんはぜひ、身近な人にキホン知識をご伝授ください。
島を支える特別な法律
島を支える仕組みのキホンとして知っておきたいのが、島を支える特別な法律や制度の存在です。まずは特別な法律と対象となる島の分布を学びましょう。
日本には有人離島の営みを支える特別な法律があります。理由は、島が国にとっても大事な地域だから。1万4,125の島からなる海洋国家にとっては、1島1島が大切な拠点であり、特に人の営みがある島は大切な場所なのです(詳しい理由は「島は優遇されている?!キホンのQ&A 【特集|島を支える仕組みのキホン】」で紹介)。
416島の有人離島のうち、島特有の特別な法律で支えられている島は305島(2023年2月現在)。歴史的背景や地理的条件などから5つの法律に分かれるため、対象となる法律の種類や分布は「島を支える法律のエリア分布」(図2)と「日本の島嶼構成」(図3)をご覧ください。
※国土交通省国土地理院の地図を基にした総合海洋制作推進事務局作成資料および海上保安庁「日本の領海等概念図」を基に作成
※本概念図は、外国との境界が未画定の海域における地理的中間線を含め便宜上図示したものです
※各法律のエリア分布を便宜上図示しているため、それぞれの境界は正確ではありません
※数値は令和2年度国勢調査より抽出。最新の数値とは異なります
ちなみに、本土との間に橋がかかるなどして、日常的に本土と往来できる島は特別な法律の対象にならない「法対象外の島」となります。どの島が法律の対象になるかは、国土審議会の意見を聴いた上で主務大臣(国土交通大臣、総務大臣、農林水産大臣)が決定しています。
>>次回:「知っておきたい島の6法 【特集|島を支える仕組みのキホン】」に続く