島々の営みは、さまざまな仕組みによって支えられています。離島ならではの事情に配慮する上で欠かせない法律の一つが「離島振興法」。今回は、公益財団法人日本離島センターの小島愛之助さんに、島のなりたいを叶える仕組みと活用ポイントを聞きました。
※この記事は『季刊ritokei』42号(2023年5月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
さかのぼること昭和27年。5人の知事が要望を出したことから「離島振興法」は生まれました。当時は都市・地方・特定地域という3つで日本を区分けして支援を行う国土総合開発法が運用されていました。島は特定地域の中に入っていましたが、島特有の事情がフォローされるように、特定地域から切り離す形で昭和28年に同法が施行されました。
その後、戦後しばらく米統治下にあった奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)や小笠原諸島(おがさわらしょとう|東京都)、沖縄では本土復帰に合わせて、各地域の振興開発を目的とした特別措置法ができ、平成29年には離島振興法だけではカバーできない国境域の離島保全や地域社会維持を目的とした「有人国境離島法」も生まれました。
令和5年4月1日から新たな離島振興法がスタートしました。離島振興法はいわばプラットフォームで、さまざまな法律が離島振興法を参考にしています。島をとりまく法律制度の基本が離島振興法なのです。
法律のできた流れを汲むと、仕組みを活用する島ごとの意識に差が出てきます。かつては「こういう補助金があるから」という流れで支援事業が行われていましたが、今は逆。「これをやりたい!」という意思やアイデアがあれば、支援の仕組みや制度も使いやすく改善していける世界です。
一部離島(※)の場合は自治体担当者の意識に委ねられるところが全域離島以上に大きいように感じられます。
※同一行政区内に本土地域と離島地域が含まれる市町村の離島
宮崎県の延岡市、福岡県の宗像市、愛知県の西尾市や鹿児島県の薩摩川内市には自治体に離島振興の専門セクションがあります。専門セクションのない自治体でも、三重県の鳥羽市や山口県の萩市では離島振興に前向きに取り組まれています。
いずれの自治体でも地方創生推進交付金は何にでも活用できる仕組みですので、積極的に利用すると良いでしょう。自治体や島の領域を超えて協議会をつくってしまう方法などもあります。
こうした仕組みをうまく活用している島の例として、すぐに思いつくのは社会増が実現している島です。島根県の知夫村は、地域おこし協力隊や特定地域づくり事業協同組合など島に人を集められる制度を大いに活用しています。制度活用のノウハウを首長や役場の担当者が持っているのはやはり強いですね。
補助金にしても、交付金にしても、使い方に関して疑問が出てきても、工夫次第で解決策は拓けるはずです。そうなると最後の壁は、こうした事業を単年度で行わなければならない根拠となっている単年度予算主義かもしれませんね。
>>次回:「有識者に聞く 島のなりたいを叶える仕組みと活用ポイント(日本島嶼学会参与 長嶋俊介さん)【特集|島を支える仕組みのキホン】」に続く