つくろう、島の未来

2024年05月19日 日曜日

つくろう、島の未来

割高なガソリン代の値引きや雇用の促進、防災や医療へのサポート、特区による観光物産の振興など、島々の暮らしや産業を裏から支えるさまざまな制度をご紹介します。

※この記事は『季刊ritokei』42号(2023年5月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

割高な離島のガソリン代を値引きでサポート
離島のガソリン流通コスト対策事業 対象離島:母島ほか172島(2022年度)

ガソリンは車や農機具、船などを動かす燃料として島の暮らしに欠かせませんが、本土に比べて消費量が少なく、島に運ぶコストもかかるため、割高になります。

そこで、資源エネルギー庁が販売店に「値引販売数量 × 値引単価」分の金額を助成。値引き単価は島ごとに異なり、東京都内から船で片道26時間かかる母島(ははじま|東京都)の場合、1リットルあたり70円が助成されます。

小さな仕事を組み合わせ、島で働く人に安定雇用を保証
特定地域づくり事業協同組合制度 対象地域:海士町ほか全国85市町村

離島地域には通年できる仕事が少ないものの、さまざまな分野で季節性労働の需要があります。そこで誕生したのが、地域の小さな仕事を組み合わせる「マルチワーク(複業)」の仕組み。

特定地域づくり協同組合を設置し組合が人を雇用、地域の事業所に職員を派遣する形で安定雇用と人手不足の解消を実現しています。2023年度は全国85市町村で導入されています。

島の貴重な自然を守り、持続可能な観光を目指す
入域制限 対象離島:西表島(竹富町)

2021年に「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」として世界自然遺産に登録された西表島(いりおもてじま|沖縄県)では、観光客の急激な増加による影響を最小限に抑えるため、島に訪れる観光客の数を年間33万人、1日あたり1,200人までに制限。

また、イリオモテヤマネコをはじめとする野生生物のロードキルを防ぐため、島内での車の走行速度は時速40km以下に制限されています。

西表島(沖縄県)
世界自然遺産にも登録される西表島は入域観光客数を1日1,200人に制限することで貴重な自然を保護している

来島者から集めたお金で観光スポットをきれいに
入島税(法定外目的税) 対象離島:8島(伊平屋村・伊是名村・座間味村・渡嘉敷村)

小さな島にとって観光は重要な収入源になりますが、来島者が増えることで、ごみ処理の費用や観光施設の維持管理費用なども増加します。

沖縄県の一部の島々では、「環境協力税」(伊是名村・伊平屋村・渡嘉敷村)「美ら島税」(座間味村)として来島1回あたり1人100円を徴収。集めたお金は、草刈りや公園・道路の清掃、観光施設の維持整備のために活用されています。

伊平屋島(いへやじま|沖縄県)
法定外税である伊是名村、伊平屋村、渡嘉敷村の「環境協力税」や座間味村の「美ら島税」は環境美化や環境保全などに活用されている

オンライン診療で薬の処方が可能に
調剤制限の緩和 対象離島:未定

2022年、厚生労働省は都道府県に対し、離島などの診療所で医師や薬剤師が荒天で渡航できず不在の場合、本土の医師によるオンライン診療において、一定の条件を満たせば看護師が患者に薬剤を提供することは「差し支えない」と通知。

医師や薬剤師の常駐していない島もあり、住みなれた島で安心して生活を送るために、柔軟な医療体制づくりが期待されています。

手軽にゆっくり、小型モビリティで公道を走れるように
道路運送車両法の規制緩和 対象離島:姫島村、笠岡市、土庄町、三豊市、佐世保市ほか

道路運送車両法の規制が一部緩和される「最高時速20km未満の車両」は、窓ガラスがなくても公道を走行でき、シートベルト等の着用も免除されます。

細い路地の走行に適した小型車両の導入や、集落と最寄りのバス停を結ぶサービスなど、離島地域の暮らしに適した乗り物として「グリーンスローモビリティ」に注目が集まっています。

姫島(ひめしま|大分県)
時速20キロメートル未満で公道を走ることのできる電動車「グリーンスローモビリティ」は多様な島で導入が進んでいる

小さな島の実情に合わせた救急医療体制が組めるように
消防法施行令の一部改正 対象離島:離島振興対策実施地域(256島)

消防法では救急車1台につき救急隊員3人が義務付けられていますが、財政力の低い自治体にとって、夜間を含めた常時隊員を配備するのは大きな負担です。

そこで、離島や過疎地域などに限り、救急隊員2人と准救急隊員1人で隊が編成できるよう規制が緩和されています。本土の過疎地域と、離島振興対策実施地域、奄美群島、小笠原諸島、沖縄本島を除く沖縄の離島が対象となっています。

地域の食文化に触れる日本酒づくり体験をバックアップ
日本酒特区 対象離島:佐渡島

2019年に創設、清酒の製造場で製造体験することで地域の活性化を図る「日本酒特区」では、新潟県佐渡市が全国初の特区に。廃校を酒蔵として再生した「学校蔵」を運営する尾畑酒造が第一号として認定されました。

特区により既存の製造場以外の場所で体験のための日本酒造りが可能になり、今後も地域の食文化を発信できる日本酒造りの学びの場が増えることが期待されています。

佐渡島(さどがしま|新潟県)
美しい棚田が広がる佐渡島は酒処としても有名。日本酒特区制度により島の恵みが学びとしても還元される

地域ならではの農産物を活用した特色ある焼酎造りを後押し
焼酎特区 対象離島:青ヶ島、三島村

2017年度に創設された「焼酎特区」では地域の農産物を使うことで小規模の焼酎製造が可能に。青ヶ島(あおがしま|東京都)の「青酎特区」では、60度の初垂れ(はなたれ)を島でしか飲めない幻の焼酎として島内の民宿や飲食店限定で提供。

黒島(くろしま|鹿児島県)の「みしま村芋焼酎特区」では村が直営の焼酎蔵を開設、村内産サツマイモを原料に焼酎製造に乗り出すなど、特区を地域振興や観光に役立てる動きが生まれています。

奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)の島々
黒糖と米麹を原料に造る奄美黒糖焼酎は、酒税法の基本通達により奄美群島のみで製造が認められている

ふるさと納税で島の生産者や自治体の取り組みを応援
ふるさと納税 実施離島:全国の離島

返礼品として島の幸を受け取りながら寄付金控除も受けられる「ふるさと納税」。

同制度を利用し自治体が寄付を募る「ガバメントクラウドファンディング®(GCF®)」も、コロナ禍で財政難となった定期航路の維持支援(新潟県粟島村)や、地域の医療をサポートする「Dr.コトー診療所基金」(鹿児島県薩摩川内市)が創設されるなど、島々の地域づくりに活用されています。

都市部からの移住と地域づくり活動、起業をサポート
地域おこし協力隊 実施地域:3大都市圏外のすべての市町村、3大都市圏内の条件不利地域

都会で暮らす若者らが人手不足に悩む地方へ移住し、その地域での定住を視野に、特産品や観光メニュー開発などのまちおこし活動や、農林水産業の支援などを行う「地域おこし協力隊」制度。

全国で6,447名(※)もの隊員が活動し、離島地域でも数多くの隊員が活躍しています。最長3年の任期終了後は、地域での起業や事業継承もサポートされ、およそ65%の隊員が定住しています。
※2022度実績

特集記事 目次

特集|島を支える仕組みのキホン

1万4,125の島からなる日本には421島の有人島があり、そのうち416島が有人離島と呼ばれています。 人の営みがある島のそれぞれに、自らが暮らす地域を支える人がいて、島の外から島を支える人や、島を支えるさまざまな法律や制度があります。 この特集では、離島特有の法律や制度を中心に、島を支える仕組みのキホンを紹介します。

ritokei特集