つくろう、島の未来

2024年03月19日 火曜日

つくろう、島の未来

島の環境を活かして「ネット依存」の克服を目指すプログラムが、兵庫県・家島諸島(いえしましょとう)で行われています。
悩みを抱える子と親を支える学びのプログラムとは?主催する公益財団法人兵庫県青少年本部に話を伺いました。

島で過ごした時間や学びから子どもの主体性を育む オフラインキャンプ

スマホやタブレット、オンラインゲームなどの普及により、子どもたちのインターネット依存(以下、ネット依存)が顕在化しつつあります。犯罪に巻き込まれる恐れもあることから、改善できるよう強く叱ってしまう保護者もいるのではないでしょうか。そんな子どもたちのネット依存問題に、家島諸島の取り組みがヒントになるかもしれません。

2016年、家島諸島・西島(にしじま)を舞台に始まった「人とつながるオフラインキャンプ」を主催するのは、公益財団法人兵庫県青少年本部。ネット依存を抱える県内の青少年を対象に、毎年夏休みに西島で4泊5日の合宿を開催しています。

ネットワーク通信がほぼ圏外の西島で、同じ悩みを抱えた20名の仲間と4泊5日の共同生活。大自然の中でのびのびと遊び、仲間と共に課題と向き合いながら生活改善を目指す(写真提供:公益財団法人兵庫県青少年本部)

西島には一部携帯電話がつながるエリアもあるものの、滞在施設はほぼネットの圏外。スマートフォンやゲーム機などは、夕食後にある1時間の自由時間に専用の「スマホ部屋」で使用することができるという環境で過ごします。

子どもたちは、大自然の中でカヌーやキャンプファイヤー、魚釣りなどのアウトドア体験を楽しみながら、同じ悩みを抱えた20名の仲間や、大学生のメンターと共に日常生活を振り返ったり、お互いの生活改善に向けたアイデアを話し合ったりします。

生活習慣の改善には家族の見守りや協力も欠かせないため、キャンプの初日と最終日には子どものネット依存に悩む保護者を対象とした講演会や希望者への面談なども実施。

さらに、キャンプから3カ月後に保護者同伴で島に集まる日帰りのフォローアップキャンプを開催し、子どもたちが立てた生活目標の達成度の振り返りと修正を行います。

参加者アンケートでは「親子関係が改善した」との声が多く寄せられたと担当者。島で過ごした時間や学びをきっかけにして、まずは保護者が子どもの状況を理解し、受け入れる。そして、親子のコミュニケーションの改善が、子どもの生活改善につながっていく。

子どものネットやゲームへの依存を防ぐには、依存を子ども個人だけの問題として捉えるのではなく、親自身が家庭の中に子どもの居場所をつくれているかどうかを振り返ることもポイントになるようです。

常にネットがつながる日常からひととき離れ、大自然の中でのびのびと遊び、仲間と共に課題と向き合う体験は、子どもの主体性を育みます。そんな我が子の様子に、親も一歩引いて子どもの成長を見守るような関わり方を学んでいくそう。

ほぼ“圏外”の環境が、人との関係や生活を改善するきっかけになる。そんなオフラインキャンプには、複雑な現代社会を生き抜くヒントが隠れています。


人とつながるオフラインキャンプ
実施時期:
オフラインキャンプ 毎年8月
フォローアップキャンプ 毎年11月
主催:公益財団法人兵庫県青少年本部
対象:原則県内の青少年
定員:20名
問合せ先:078-891-7410
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk16/offlinecamp.html

特集記事 目次

特集|島だから学べること

地球レベルの気候変動にテクノロジーの進歩と社会への浸透、少子高齢化、孤独の増加、人生100年時代の到来etc……。変化の波が次から次へと押し寄せる時代を生き抜くため、近年、教育や人材育成の現場では「生きる力」や「人間力」を養う学びに注目が集まっています。 そんななか、離島経済新聞社が注目したいのは学びの場としての島。厳しくも豊かな自然が間近に存在し、人と人が助け合い支え合う暮らしのある離島地域には、先人から継承される原初的な知恵や、SDGsにもつながる先端的なアイデアや挑戦があふれています。本特集では全国の島々にある学びのプログラムや、それらを運営する人々を取材。「島だから学べること」を紹介します。

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