つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

離島経済新聞社では、学びとしての場としての島に注目。全国の島々にある学びのプログラムや、それらを運営する人々を取材し、「島だから学べること」を紹介します。

今回は、農業・漁業などの一次産業、自然環境、歴史や独自の文化etc……。その地域ならではの魅力を活かした体験を組み合わせ、修学旅行を受け入れる島々の体験・交流プログラムを紹介します。

※ ページ下の「特集記事 目次」より関連記事をご覧いただけます。ぜひ併せてお読みください。

※ この記事は『季刊ritokei』39号(2022年8月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

>>前回:「手に負えない自然のなかで知識が知恵に代わる学びを【特集|島だから学べること】」はこちら

瀬戸内海4島での修学旅行は離島留学につながることも?!

約140島の有人離島がある瀬戸内海の沿岸地域では、広島の平和学習と近隣の離島や里山地域での民泊体験を組み合わせた修学旅行を提案。

広島県と山口県から8地域が参画し、うち半数が離島地域で、周防大島、大崎上島、江田島、田島・横島の4島4市町が修学旅行を受け入れています。

2013年から民泊に取り組む大崎上島(おおさきかみじま|広島県)の修学旅行では、かつて水軍の早船として活躍した手漕ぎ船を体験する「櫂伝馬(かいでんま)」が人気。島の歴史を学び、実際に船を漕いで競漕する際は、ひと組14人の漕ぎ手が息を合わせないとスピードが出ないため、チームワークの大切さも実感できます。

左:漁業や農業の体験で得た島の海の幸や山の幸を使い、郷土料理づくりも体験できる/右:瀬戸内を縦横無尽に駆け回った海賊の雄姿を彷彿とさせる「櫂伝馬」の競漕体験

「漁業体験」や「農業体験」など、地元の方と触れ合いながら働くことや食べ物の大切さなどを学ぶ体験もおすすめ。ちなみに大崎上島では「高校魅力化プロジェクト(※)」を推進する広島県立大崎海星高等学校が、全国から離島留学生を受け入れているため、修学旅行で来島した中学生が島の高校に進学する例も増えているとか。

※ 高校魅力化プロジェクト……島根県立隠岐島前高等学校で始まった、学校を生徒が行きたい、保護者が通わせたい魅力ある場にするプロジェクト。グローバルとローカルを結び、不確定性の高い時代にも対応できる人材の育成を目指す

留学中は、民泊で受け入れを担当した地元の方が「島親」として島暮らしを手厚くサポートしてくれるので心強いですね。島での修学旅行が、さらなる学びのステップにつながっているようです。

〈お問い合わせ先〉
広島湾域まるごと感動体験
実施時期:通年
主催:広島湾ベイエリア・海生都市圏研究協議会
(広島商工会議所内)
対象:中学生・高校生の修学旅行
定員:プログラムにより異なる
問合せ先:082-555-8081(体験型修学旅行誘致推進室)
https:/hiroshima-bayarea.net/

世話好きな島人が迎えてくれる こころ通う、しま旅体験

五島列島の南部、福江島(ふくえじま|長崎県)を中心に11の有人島からなる五島市では、市と民間企業からなる五島市体験交流協議会が「五島感動しま旅!」を企画。

豊かな漁場などの自然を活かした「海との共生や環境保全」、島で生産される米・魚介類・野菜を味わう「健全で豊かな食生活」、人との交流から「コミュニケーション能力」を学ぶプログラムを提供しています。

島での宿泊は生徒が数名ずつに分かれて受け入れ先の家庭に滞在する「民泊体験」。「漁業体験」で捕った魚介を使った夕食をつくり、家主や仲間と寝食を共にして絆を深めます。

民泊の受け入れ先は約150軒登録されており、家主の趣味や特技を活かした釣りや家庭菜園なども体験できます。

左:五島列島には約50もの教会が点在。一部が世界文化遺産の構成資産に認定されている/右:お世話になった民泊家庭の皆さんに感謝を伝えてお別れをする最終日の離島式

世話好きな島の人たちに温かく迎え入れられ家族の一員として過ごすなか、普段は口数の少ないおとなしい生徒でもリラックスして明るい表情に。港などで行われる離島式では「帰りたくない!」とお互い涙ながらの別れになる場面もあるそうです。

コロナ禍の状況下、教育旅行による民泊の受け入れは実施できていませんが、再開に向けて協議会では新たなプログラムを開発中とのこと。SDGsも学べる洋上風力発電による再生可能エネルギーや、潜伏キリシタンの歴史をたどる島歩きなど、島ならではのプログラムに注目です。

〈お問い合わせ先〉
五島感動しま旅!
実施時期:通年
主催:五島市体験交流協議会
対象:主に中学生・高校生の修学旅行
定員:プログラムにより異なる
問合せ先:0959-76-3600(株式会社JSH)
https://www.goto-shimatabi.com/

1島1校でゆったり島人体験 多彩な学びが得られる沖縄の島

沖縄県では、2003年からいち早く民泊体験のできる修学旅行を始めた伊江島(いえじま)をはじめ、さまざまな島が地域特性を活かしたプログラムを提供しています。近年人気を集めているのは久米島(くめじま)。

環境学習や地域の歴史文化、国指定重要無形文化財久米島紬の染・織り体験、平和ガイドによる戦跡巡り、集落の散策など、多彩な学びが1島に詰め込まれ、「1島1校」で、移動時間も少なくゆったりと学ぶことができます。

ほかにも、石垣島(いしがきじま)ではシュノーケリング体験のみならず、ビーチクリーンを行う環境学習や、国境離島の警備を担う海上保安部の講話と巡視船見学、石垣航空基地の見学で国境平和について学ぶプログラムなど、多様な学びが得られます。

左:久米島の森を散策しながら自然と人の暮らしのつながりを学ぶ「ニブチの森散策」/右:石垣島では国境離島警備を担う海上保安部の協力による国境平和を学ぶプログラムも

島々を訪問するうえで大切なのが、地域の事前学習。探究心や課題意識を持って地域に入ることで、より深い学びが得られるでしょう。沖縄観光コンベンションビューローでは、学習資料提供や学校へのアドバイザー派遣などの事前学習もサポート。

同社が運営する旅行社や教職員のための修学旅行専門サイト『おきなわ修学旅行ナビ』では、希望エリアとジャンルからプログラムが検索可能。気になる島の学びを探してみては?

〈お問い合わせ先〉
おきなわ修学旅行ナビ
実施時期:通年
主催:一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー
対象:中学生・高校生
定員:プログラムにより異なる
問合せ先:098-859-6129(教育旅行チーム)
https:/education.okinawastory.jp/

>>次回:「リトケイ読者の私が島で学んだこと(近藤功行さん)【特集|島だから学べること】」に続く

特集記事 目次

特集|島だから学べること

地球レベルの気候変動にテクノロジーの進歩と社会への浸透、少子高齢化、孤独の増加、人生100年時代の到来etc……。変化の波が次から次へと押し寄せる時代を生き抜くため、近年、教育や人材育成の現場では「生きる力」や「人間力」を養う学びに注目が集まっています。 そんななか、離島経済新聞社が注目したいのは学びの場としての島。厳しくも豊かな自然が間近に存在し、人と人が助け合い支え合う暮らしのある離島地域には、先人から継承される原初的な知恵や、SDGsにもつながる先端的なアイデアや挑戦があふれています。本特集では全国の島々にある学びのプログラムや、それらを運営する人々を取材。「島だから学べること」を紹介します。

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