つくろう、島の未来

2024年10月10日 木曜日

つくろう、島の未来

世界中の暮らしに変化をもたらしているコロナ禍は、社会にさまざまな新常識を生み出そうとしている。中でも、ポストコロナの島々でも定番となるかもしれない「新しい●●」をリトケイがピックアップ。知っておきたい新常識を要チェック!

※この記事は『季刊ritokei』33号(2020年11月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

島×新しい地域づくり

コロナ禍でイベント・講習会・会議などが全国規模でオンライン化された流れは、もともと移動に制限がある離島地域にとって喜ばしい変化だ。

飛島(とびしま|山形県)ではUIターン促進イベントや、仕事をつくることをテーマにしたオンラインアイデアソン(※)が実施され、鹿児島離島の新たな価値を創造するコミュニティ「鹿児島離島文化経済圏」でも、勉強会がオンラインに切り替えられた。

こうした流れを背景に、オンラインの可能性に気づいた人も多いだろう。人々の往来がコロナ前と同様に戻ったとしても、必要に応じてリアルとオンラインを使い分けるハイブリッドな地域づくりが定着すれば、これまで負担が当たり前とされていた経費や時間の節約が可能になる。

※ アイデア発想のためのグループワーク。アイデアとマラソンを掛け合わせた造語

飛島のオンラインイベント「島ターンオンライン」や「離島アイデアソン」はいずれも山形県が主催し、企画と事務局を合同会社とびしまが担当。同社は農業から情報発信まで、幅広い事業で飛島の地域づくりを担う

島×新しい学校教育

コロナ禍を機に、文部科学省が推進する「GIGAスクール構想(※)」が前倒しで進んでいる。もともと、学校でのICT利活用で世界から遅れをとり、教育環境の地域差も問題となっていた日本だが、7島に複数の小中学校が点在するトカラ列島(とかられっとう|鹿児島県)など、複式学級保有率の高い離島地域では、小規模校同士の遠隔合同授業を行うために、テレビ会議システムを導入するなど、島の教育環境を改善するためにさまざまなICT活用が進められてきた。

GIGAスクール構想による「児童生徒1人1台コンピュータ」や、オンライン授業コンテンツの活用による教育格差の改善などが進めば、自然環境に囲まれた小さな島で最先端の教育を受けられる学校が増えるかもしれない。

※ 義務教育を受ける児童生徒のために、1人1台の学習者用PCと高速ネットワーク環境などを整備する5カ年計画

トカラ列島の宝島(たからじま|鹿児島県)。7島にそれぞれ小・中学校がある十島村では、2010年にインターネット環境を整備し、児童生徒の交流や教員の研修等でオンラインを活用している

島×新しい売り方

コロナ禍の外出自粛により外食産業が低迷したことで、販路を失った農産・畜産・海産物が地域にあふれた。販路が遮断された事業者がやむなく廃業したケースもあるが、クラウドファンディングや、オンラインショップの立ち上げ、動画やSNSを活用したPRなどを急速に取り入れながら、新たな販路を切り拓いた事業者も少なくない。

一方、生産者から直接、産品を購入できる「ポケットマルシェ」などのオンラインプラットフォームを活用する事業者のなかには、事業者同士で勉強会を開きながら、コロナ前には持ち得なかったノウハウを取得する人も。「必要は発明の母」であるよう、コロナを機に生まれた「売り方」も、ポストコロナのスタンダードとなるはずだ。

コロナ渦で販路を失った生産者の一部は、産直プラットフォームを通じて消費者に食材を販売。「ポケットマルシェ」のユーザー数は2月からの約半年で4.5倍に増加している

島×新しい滞在

感染防止に「三密(密閉・密接・密集)」回避が求められたことで、IT系企業を中心に従業員の「テレワーク」を推進する企業が爆発的に増加。テレビ会議やメール、チャット等で仕事ができるなら「島でも良いのでは?」と考える人が増えている。

こうした変化をつかむべく、多くの島が働きながら長期滞在する「ワーケーション」の推進に動きだし、施設の整備やPRを加速。HafHやADDRESSといった、多拠点居住者向けの宿泊サービスを導入する島も増加している。

以前から求められていた「観光以上、移住以下」の長期滞在者は、地域を支える「関係人口」としても期待される存在でもある。新たな滞在手法もコロナを機に定着するかもしれない。

ワーケーションの推進で注目を集める五島市では、2021年1月に「島ぐらしワーケーション in 五島列島2021」を計画。50名の定員に対して80人の応募があった(新型コロナウイルスの感染再拡大により中止)

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