ひとえに「島の観光」といっても、地理的条件や自然環境、歴史、文化、産業構造、人口規模などの違いによって個性があります。
400島あれば400様ある個性の一端にふれるべく、7つの島に「観光の歴史」「見どころ」「課題」「取り組み」について尋ねました。
北海道の奥尻島は、函館空港からは飛行機で約30分、江差(江差町)からの定期船でおよそ2時間10分の島。奥尻島観光協会に聞いた、奥尻島観光とは? (取材・上島妙子)
この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』29号「島と人が幸せな観光とは?」特集(2019年8月27日発行)と連動しています。
球島山からの風景(提供:奥尻島観光協会)
昭和中期に観光客が増え始めたことが観光産業の始まり
それまで島内に民宿もあったのですが、奥尻島は1960年に「檜山道立自然公園」へ指定され、美しい海岸線と温泉、素朴で荒削りの風景に惹かれた観光客の来島が始まりました。
1967年にフェリーボートが就航し、観光客が来島しやすい環境ができたことが奥尻島の観光業のきっかけと思われます。1969年に観光協会が立ち上がり、観光産業が本格化しました。
奥尻島観光協会(提供:奥尻島観光協会)
高級食材のウニやアワビを堪能し、透明度25mの海にそびえる奇岩を楽しむ
奥尻島でおすすめしたいのは何といっても海の幸です。高級食材であるウニやアワビなどがお手頃な値段で楽しめます。キビトロ(ギョウジャニンニク)やネマガリダケなど、素朴な山の幸もぜひご賞味ください。
迫力ある島の「奇岩巡り」も必見です。奥尻島のシンボル的存在である「鍋釣岩」は日本海の荒波によりつくり上げられたもの。ドーナツ型で鍋の弦に形が似ていることが名前の由来となっており、夜間はライトアップされます。そのほかにもホヤ岩、カブト岩などの奇岩も見どころです。
「オクシリブルー」といわれる透明度25mにもなる海も自慢で、カヤックやSUPも楽しめます。
オクシリブルーの海(提供:奥尻島観光協会)
幅広い年代の観光客が来島
観光客の方はシニア、カップル、ファミリーと幅広い年代の方が来島されます。多くの方々は1泊2日の滞在で、海の幸を堪能されるほか、奇岩巡りや釣り、日本海を望む温泉などを楽しまれているようです。
ファミリー層や若いには、オクシリブルーの海でのカヤックやSUP、海水浴、キャンプを楽しまれる方も多くいらっしゃいます。
鍋釣岩(提供:奥尻島観光協会)
新たな海の幸の開発、そして災害からの復興を教訓にしたプログラムにも取り組む
ホテル閉鎖により団体客の誘客ができないため、個人客及びファミリー層の取り組みに力を入れています。近年は、漁協青年部が、より多くのお客様に奥尻の海の幸を楽しんでいただけるよう、岩ガキの養殖を開始し、少しずつそのおいしさが認知され始めています。
また、奥尻島では、平成5年7月に起こった北海道南西沖地震の教訓をもとに、主に教育旅行向けの防災学習プログラムも用意しています。
地震が発生したことを想定し訓練を行う「防災ロールプレイ」や、奥尻島津波館で被災当時の映像・写真や、復興した街並みを見学。島人からの震災体験や教訓などの聞き取り、炊き出しなどを体験していただきながら、地震の記憶を風化させぬよう努めています。
宮津弁天(提供:奥尻島観光協会)
観光業者の高齢化・後継者不足が課題
宿泊経営者が高齢となり、後継ぎのいない施設が閉館や縮小営業になる可能性があることが課題となっています。
観光客が増えることにより、島での消費が増えれば、漁師・農家の方も恩恵が受けられるため、観光客を増やすにはどうしたらよいのかを模索しています。
ゆっくりと流れる「島時間」を楽しんでほしい
海の幸も山の幸が豊富で、奥尻島で、ゆっくりと流れる島時間をお楽しみください。