古き良き価値に、必要を満たす新たな技術が掛け合わされると、かつての「不可能」 が 「可能」になり、あたらしいミライが育ってゆく。離島地域では、島国をあたらしいミライに導くモデルケースが続々と育っています。
暮らしをより良くしたいと願う住民の熱意と、新技術を持つ民間企業とのマッチングを国も後押し。改正離島振興法、国土形成計画、 デジタル 田園都市国家構想総合戦略でも、離島地域への新技術やデジタル技術の導入は重視されています。
どのようなミライが育っているのか。 離島振興対策実施地域(※)に含まれる256島を対象に新技術の導入を推進する国土交通省の「スマートアイランド」の事例等から、その一部を紹介します。
※スマートアイランド推進プラットフォームサイト 「スマートアイランド推進実証調査の事例」および「スマートアイランド推進カタログ」をもとにリトケイ編集部が作成
※人口は令和2年度国勢調査
※この記事は『季刊ritokei』46号(2024年8月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
野山の鳥獣対策に、海の磯焼け対策に 新技術による省人化・省力化で人手不足を解消
真鍋島/岡山(人口147人)五島市/長崎(人口34,391人)※有人11島
近年、全国各地でイノシシによる被害が深刻化している。近距離であれば海を渡ってやってくるイノシシは、瀬戸内海や九州沿岸部の島々でも繁殖。人口減少や高齢化が進む島では対策が追いつかない状況だ。
真鍋島では、住民グループや笠岡市が企業と連携。AI画像解析や鳥獣ワナ監視通報システム、低周波等でイノシシを威嚇・誘導する仕組みにハンティングドローンを活用しながら、イノシシのいない生活環境の実現を目指して実証調査を行った。
一方、豊かな漁場を誇る五島市では、海の砂漠化といわれる「磯焼け」を引き起こすガンガゼ駆除に技術を活用。高速通信を使用した水中ドローンを遠隔操作して駆除したガンガゼを、加工・商品化する実証実験を行った。
オンライン診察室やマルチタスク車両が病院が遠い通院困難者の課題をクリアに
答志島/三重(人口1,657人) 坂手島/三重(人口243人) 菅島/三重(人口455人)神島/三重(人口290人) 新居大島/愛媛(人口131人)
三重県鳥羽市では、有人4島の診療所と本土側の鳥羽市立診療所3施設が「クラウド型電子カルテ」と「遠隔診療支援システム」を導入した実証実験を実施。遠隔聴診器や医療用高精細ハンディカメラを導入しながら、症状が安定している再診患者には、診療と服薬指導をオンラインで実施。薬を自宅まで配送することで、 通院の負担軽減が図られている。
愛媛県の新居大島では、医療機器やビデオ会議システムを搭載した「マルチタスク車両」 が運行している。 病院に通いづらい地区に住む住民の元へ、マルチタスク車両を配車しながら、保健指導・栄養指導・オンライン診療を遠隔で提供。「動く医療サービス」 の運用により医師や患者の移動負担を軽減している。
二次離島の「必要」を補う五島列島のドローン配送 小規模離島の人手不足を超える運搬ロボット
五島市/長崎(人口34.391 人)※有人11島 新上五島町/長崎(人口17.503人)※有人7島 飛島/山形(人口158人)
256島の離島振興対策実施地域のうち半数は人口が100人に満たず、日用品や食品を購入できる店が限られる。多数の二次離島がある五島市と新上五島町では、五島市を発着するドローンが日用品や食品、医薬品の配送を行っている。
二次離島ではこれまで、必要な医薬品を当日中に手配できなかったが、ドローンなら注文から1〜2時間で到着。船便が欠航した場合も飛行できる安心は、住民にあたらしい安心をつくっている。
山形県の飛島では空を飛ぶドローンのほか「帆船型ドローン」 や 「海ごみ運搬ロボット」「除草ロボット」の有効性を検証。暮らしに必要な物資輸送から、島に流れ着く大量の海洋ごみの運搬まで多様な場面で技術の活用が図られている。
高齢者の課題をクリアする自動運転パプアースクーター いつでも移動できる手段を実現する自律航行型EV船
佐久島/愛知(人口196人) 大崎上島/広島(人口7.084人) 生野島/広島(人口11人)
愛知県の佐久島では、高齢者を中心にした移動困難者の課題をクリアするため、電気自動車と「自動運転パプワースクーター」を活用した島内移動システムの検証が行われた。高齢者による試行運転により、自動運転や安全機能等を検証。道幅の狭さやガソリン依存を克服しながら、人々が移動できる手段して期待がかかる。
一方、広島県の大崎上島町では「自律航行型EV 船」の実証プロジェクトが進む。オンデマンド水上タクシーの事業化に向けた実証調査や、二次離島の生野島まで低コストで商品宅配を行う貨客混載サービスを組み入れるスキームは、深刻化する船員不足の解消にも有効。完全無人航行の実現には法整備も必要になるが、島での実証実験が新たなミライを拓く一歩となる。
神集島×ドローン隊によるあたらしい住民自治 男木島×AI スマートマップによる防災
神集島/佐賀 (人口261人)男木島/香川 (人口132人)
佐賀県の神集島では住民グループが企業と連携し、住民自らがドローンパイロットとなるドローン隊を結成。悪天候時や災害時における物資輸送や、害獣の調査、密漁船の監視や、台風時の被害状況把握などにドローンを活用する「自発の地域づくり」が進められている。
高松市の男木島でも新技術を活用した地域ぐるみの防災が進む。企業と連携し、自治会、町内会、商工会、観光協会、防災関連団体、子育て支援団体、社会福祉協議会、民生委員など、地域の自治運営に携わる人々が地図を使って情報共有やコミュニケーションを行える「コミュニティスマートマップ」を導入。メタバースを活用したインフラ整備・点検や、島民の防災意識が検証されている。
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