つくろう、島の未来

2024年10月10日 木曜日

つくろう、島の未来

海から離れた地域で暮らす人にとって「海ごみ」は「遠い問題」とも感じられがちだが、それを間近に見つめる島々の人たちは、問題解決の糸口を日々探っている。ここでは「島と海ごみ」にまつわる注目の取り組みをご紹介。(文・写真 水野暁子)

ペットボトルを捨てなくて良い島へ。西表島で動き始めた「マイボトルで水おかわり!」

八重山諸島に位置する人口2474人の西表島は、2019年2月に世界自然遺産へ再推薦され注目を集めている。そんな西表島では、海ごみになりやすい「ペットボトル」の利用そのものを減らそうという取り組みが生まれている。

世界自然遺産に登録されたら、今よりも多くの観光客が西表島に押し寄せるかもしれないーー。西表島の住民らが始めた「MMO(マイボトルで水おかわり)iriomote(以下、MMO)」の活動には、「それが現実になってもペットボトルのゴミを極力出さない島でありたい」という願いが込められる。

西表島東部地区の宿泊施設3軒から始まった「給水どころ」は現在、35カ所まで拡大。宿泊施設や土産店、アウトドア会社などの協力を得ながら広がりをみせている。

MMOの活動は、2018年11月に西表島の地域住民を対象に開かれた世界自然遺産登録に向けた意見交換会をきっかけにスタートした。意見交換会のワークショップで 「世界自然遺産をきっかけに実現したいこと」の意見交換が行われたなか、のちにMMOのメンバーとなるひとりがペットボトル撤廃のモデルケースとして、マイボトルの利用拡大や島内に給水所をつくることを提案。その考えに共感した参加者が集い、プロジェクトの実現に向けた話し合いが始まった。

数人から始まったMMOのメンバーは、現在11名。民宿経営者、食品加工業者、由布島勤務者、環境省職員、主婦、フリーランスのWebデザイナーなど、多様な顔ぶれのメンバーが月2〜3回の頻度で集まり、熱心なミーティングを行っている。

「小さなコミュニティだからこそ可能なプロジェクトだと思う。島ならではの協同体の意識を見習い、お手本にしながら活動していきたい」と話すMMOのひとりは「始まったばかりのプロジェクトなので、まだ何も結果を出せていないが、西表島に住むみんなで取り組めるような活動にしていきたい」と展望する。

島の住民が主体となって進むMMOでは、活動の推進に向けて企業や個人のスポンサーを募集し、大手飲料メーカーへ協力要請もはじめている。

「MMO(マイボトルで水おかわり」iriomote」の名前には、西表島をモデルケースに他の離島地域でも「マイボトルで水おかわり●●島」と広まって欲しいという期待も込められている。西表島ではまず「給水どころ」100カ所を目指して活動を継続していく。ペットボトルごみを極力出さない生活、観光を目指して、「マイボトルで水おかわり!」

【関連リンク】
MMO(マイボトルで水おかわり) https://produced1458.wixsite.com/mmoiriomote

特集記事 目次

特集|島と海ごみ

四方を海に囲まれる海は離島地域では近年、「海ごみ」の急増に頭を痛める人が増えています。 海洋ごみ(本特集では海ごみと表記する)は主に、海を漂う「漂流ごみ」海岸にたどり着く「漂着ごみ」海底に沈み堆積する「海底ごみ」の3つに分類され、いずれも世界規模で解決が迫られる大問題となっています。 なかでも問題になっているのは、人工的に合成され、ほとんど自然に還らないプラスチックごみ。ペットボトル、発泡スチロール、漁業につかわれる網など。都市や田舎に限らず、現代の暮らしに浸透するプラスチック製品が、なんらかの原因で海に流れ出し、海を漂流し続け、島に流れ着いているのです。 紫外線を浴びて変質した微細な「マイクロプラスチック」は回収困難といわれ、多くの恵みを与えてくれる海が「プラスチックスープ」になると警鐘を鳴らされています。 海から離れた地域に暮らす人には、遠い話にも聞こえる海ごみ問題は、その一端を知るだけでも、現代社会の恩恵を享受するすべての人が関係する問題であることがわかります。 本特集では、そんな海ごみ問題を「島」の現状や取り組みを軸に紹介します。 この特集は有人離島専門フリーペーパー『季刊リトケイ』28号「島と海ごみ」特集(2019年5月28日発行)と連動しています。

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