つくろう、島の未来

2022年05月22日 日曜日

つくろう、島の未来

インターネットの浸透に加え、コロナ禍で加速した「新しい働き方」や「新しい生き方」を求めて、離島地域に眼差しを向ける人々がいます。

そんな人々が島と出会い、つながるきっかけとして注目されているのが、地域に滞在しながら自らの仕事も行う「ワーケーション」という滞在方法。

今回は「共創型ワーケーション」をキーワードに、ワーケーションの実証実験を行う「沖縄しまむすびワーケーション」(※)に参加する3地域のキーマンに、受け入れ側の期待やワーケーション利用者の声などについて伺います。

※沖縄県の令和3年度沖縄しまっちんぐ実証事業として「共創型ワーケーション」を展開する実証実験プログラム。令和3年度は国頭村・久米島町・多良間村の3地域が参加

>>「沖縄の島々と人がつながる共創型ワーケーションとは?リトケイ編集長が3人のキーマンに聞きました(前編)」はこちら。


沖縄しまむすびワーケーションのキーマンたち


多良間村(多良間島)
波平雄翔(なみひら・かずと)さん

多良間島出身の若きシーサー(自他ともに認める「シーサー顔」)。「好きすぎる島を住み続けられる場所にしたいから、力をつけて30歳で島に帰る!」を目標に活動。大学卒業後は粟国島に移住し、特産品開発を支援。制作プロダクションを経て2021年4月に独立。現在、多良間島を拠点に「地域離島コーディネーター」として、島での生活を極めた島暮らしのプロ(住民)、行政、島外の企業などを巻き込み、様々な共創プロジェクトに取り組む。プロフィール詳細はこちら https://www.shimamusubi.net/index.php/interview/tarama

久米島町(久米島)
石坂達(いしざか・とおる)さん

埼玉県朝霞市出身、久米島在住。東京農工大学農学部卒業後、ITメガベンチャーに勤務。2012年10月、隠岐の島・海士町へ移住・転職し、地域づくり・教育事業コーディネーターとして働く。海士町の学びを他地域で活かすべく2016年5月、久米島町に移住。移住定住をミッションとする地域おこし協力隊として従事後、合同会社PLUCKを起業。「複業型身の丈起業」に取り組む「久米島複業ギルド」を運営。プロフィール詳細はこちら https://www.shimamusubi.net/index.php/interview/kumejima/

国頭村(沖縄本島)
久保勇人(くぼ・はやと)さん

東京都出身、国頭村在住。妻の出身地である沖縄本島・国頭村(くにがみそん)の自然や文化、人々と触れ、国頭村が自分の故郷になった気がして嬉しくなる。20年以上勤めた企業を辞め、Uターンに慎重な妻を説得し、移住(嫁ターン)。国頭村役場に提案した、移住体験住宅とコワーキングの複合施設(CAMP HENTONA LOUNGE)が、地域創生加速化交付金事業に採択され、立ち上げから企画運営を務め、現在に至る。プロフィール詳細はこちら https://www.shimamusubi.net/index.php/interview/kunigami/

聞き手

リトケイ編集長
鯨本あつこ(いさもと・あつこ)

2010年に離島経済新聞社を創業。NPO法人離島経済新聞社代表理事兼『ritokei』統括編集長。子育てを機に2014年よりテレワークを開始。那覇出身の夫(ルーツは宮古諸島とやんばる地域)との縁で、自身の地元(大分県)を生活拠点に東京や那覇、全国の島々を飛びまわる。沖縄振興審議会離島過疎地域振興部会や多様な人材育成に関する沖縄万国津梁会議等の委員も拝命。美ら島沖縄大使。

「ワーケーションに来る人」と「島の人」の声とは?

今回の共創型ワーケーションは新型コロナウイルス感染症の影響により、リアルでの実施が叶わなかった島もありますが、これまでもワーケーションと言える滞在をされた来訪者の方はいるかと思います。皆さんの地域でワーケーションをされた方は、どんなことを体験したり、感じていらっしゃいましたか?

今回の実証実験はオンライン開催のみになってしまったので、深く交流できていないんですが、(過去にワーケーションと言える滞在をした人のうち)僕らと交流してくれた人に関しては、かなり濃密な島の状況とか未来を語り合っているとは思います。

そこでよく語っているのは、僕らから見た島の課題感だったり、外から来た人たちの視点でみた「多良間島の良さってこういうところだよね」という話だったりします。

島に住んでいると当たり前になるものごとを、真新しい感覚で語ってくれる人との会話はわくわくしそうですね。島の方々の反応はいかがでしょう?

例えばバガス(サトウキビの搾りかす)を加工する企業さんが来た時は、実際に農家さんを訪問して収穫方法を聞いたり、飲み会をしたり……という時間を過ごして、「(バガスでできた商品は)こんな風になるんだよ」と教えられた島の人たちは感動して「八月踊りの衣装をつくる糸に使えないのか?」と話していました。

伝統行事の衣装に島の未利用資源が使えたら素敵ですね!

僕は売れるものをつくることばかり考えていましたが、地域の人と交わることで「これは島で使える」と、島の営みに取り入れられるかどうかを考えるきっかけになったのは大きかったですね。

島の営みに取り入れられるアイデアを考えるきっかけとは良いですね。

アウトドアブランドの商品をレンタルできるコンテンツもやったんですが、多良間は標高が低いので、地域の人から「津波とかの有事に備えるための防災キャンプに活用して、子どもたちに体験してもらいながら防災意識を高めるきっかけにできるのでは?」という地域目線の提案をもらったのも新しいなと思いました。

いいですね。久米島は共創型ワーケーションをリアルとオンラインで開催されたとのことですが、どうでしたか?

12月上旬には個人事業主さん向けのワーケーションプログラムが4泊5日でリアル開催できました。2回目に予定していた企業向けのプログラムはコロナ禍によりオンラインとなり、2日間の日程で開催しました。

どういった方がいらっしゃったんですか?

アーティストや中小企業診断士、アウトドアコーディネーターなどで、子連れでいらっしゃった現代アーティストの方は、久米島で在来馬を復活させている馬牧場の方とつながり「また来ます」という関係性が生まれていました。

在来馬を復活させる久米島の馬牧場。しまむすびワーケーションの参加者は観光体験だけでなく、耕作放棄地を馬で耕し、馬と文化を残すという事業背景にも触れた

(ワーケーションの)特徴だなと感じたのは、沖縄本島から来られて馬牧場を回られた方が、観光で来ていたら馬に乗って楽しかったでおしまいになるところ、今回は馬牧場で「なぜ馬を飼っているのか」「馬とコミュニケーションをとるにはどうしたらいいか?」といった裏側まで体験できたので、「また来たい」「また馬に会いたい」という関係性がつくれたことです。

観光とワーケーションとの違いかもしれませんね。オンラインにはどのくらいの人が参加したんですか?

23名のお申し込みがありました。ここで感じたのはやはり、ソリューションを持っている人は島との関係が生まれやすいということですね。例えば、離島のクラフトビールのPRをされている参加者は、「久米島でクラフトビールをつくっている事業者さんとすぐに仲良くなり、「今度一緒にイベントをやりましょう」という話になっていました。

とはいえ、分かりやすいソリューションを持たれてない人からも、「久米島という地域を知れてよかった」「コロナが明けたら行きたい」「こういうことでもお役にたてるか?」という感想をいただきました。

コロナ後であれば「もっとつながれる」

そのお話を伺って感じたのは、ワーケーションで来られる人と島の人との間でお互いに交換できるものを持っていればマッチングしやすいんだなとイメージできました。では久保さん、国頭村は1カ月間のプログラム(※)だったとのことで、どのくらいの方が参加されたのでしょう?

※ 国頭村では2022年1月8日〜1月17日を第1ピリオド、1月18日〜27日を第2ピリオド、1月28日〜2月6日までを第3ピリオドと区切り1カ月間実施
 

リアルで1カ月間実施することができましたが、思っていた通りにはできなくて。当初は、交流会という名の飲み会で、毎日のようにたくさんの地域の人に出会ってもらおうと考えていたのですが、(コロナ禍のため)ほとんど開催できなかったんです。

ツアー参加者は5人で、途中で帰られた人もいるので1カ月間滞在されたのは2名。中には、地域の方とつながって、独自に交流を深めて三線を習い、商店街で発表会をされた方もいました。

第1ピリオドだけでも10日間はありますので、それなりに地域の人とはつながれそうですね。ただ、交流会ができないのは辛いですよね。

第1ピリオドのプログラムや交流会を通じてたくさんの地域の方に会っていただいて(参加者から)「また、あの人に会って話をしたいな」という声が出てきたら、私たちがつないで、その後は参加者本人でつながってもらえたらと思っていたんですが、交流会が開催できなかったこともあり、なかなか……。

コロナ禍であることが恨まれますね……。

どんなプログラムでも、最初は(参加者も地域の方も)お互いに何を聞きたいのか分からない状態だと思うんです。そして夜になって皆でお酒を飲みながら他愛のない話や、お互いのバックグラウンドを語り合ったりしているうちに「あれはどういうことなのですか?」というような、会話が自然と生まれてくるものだと思うんですよね。

私も取材で島に伺いますけれども、人見知りな人は人見知りですし、いきなり腹を割って話すのは難しいです。お酒を飲みながら、心をときほぐしながら腹を割って会話できるとお互いの信頼関係も生まれやすくなりますよね。

だから参加者のみなさんが体調を悪くするくらい、たくさん「飲み会をしたい!」と感じていました。なので、今回のプログラムでは「魂」の部分がそがれちゃった感じもしています。

分かります。ここは強調して「本当はもっともっとつながれるよ!」と伝えたいですね。
それでは最後に、皆さんの地域をワーケーション先として検討される読者のために、伝えておきたいメッセージがあればお願いします。では、多良間島から。

共創型ワーケーションの理想は「お互いにハッピー」

以前、多良間島に来られた方が自身のSNSに「きれいな最新設備を備えた高層ホテルは今からできても、きれいで古来のありのままの自然を手に入れるのはもはや難しい」と投稿されていたのがめちゃくちゃ刺さったんです。

僕たちが漠然と感じていることをさらっと言語化できるのはすごい。この言葉を聞いた時、僕は自分の島の価値に気づけたし、島の人も気づけるように思ったんです。

古来中国から伝来した「琉球風水」の思想を受けて形成されたといわれる多良間島の村落でみられるフクギの包護林。ワーケーション滞在ではこうした環境のなか、都市生活では得られない時間を過ごすことができる

ワーケーションに来られる人と一緒に島の課題を解決したいというのももちろんですが、今、島に住んでいる人の自信につながったり、発信する活力につながったり、そういう展開になるのが理想なので、(島のことを)島の住民と一緒に言語化してくれる人に来てもらうことが、僕が今後の共創型ワーケーションで向かっていきたい方向性の一つなのかなと思っています。

なるほど。そう聞いて、離島振興の礎を築かれた民俗学者の宮本常一先生が、佐渡島(さどがしま|新潟県)で島の方々と「おけさ柿」を特産品にするべく尽力されていたようなことも、現代でいう共創型ワーケーションなのかもしれないと思いました。石坂さんはいかがですか?

今の時代、「TikTok」のように30秒で楽しさを感じられるような、安い・早い・うまいというような方向に流れがちで。そうすると観光も消費型の滞在になって、来島者が地域を消費するような関係になってしまうと、地域の豊かさも感じてもらえないと思うんです。

共創型ワーケーションは、基本的にゆったりした時間を過ごしながら、地域なり人なりと触れ合って、その地域ならではの自分の人生を味わってもらえる。それって安くもないし、早くもないし、うまいかどうかも分からない。けれど、確実に安い・早い・うまいの世界では味わえない何かがあると思っています。

そういった感覚を味わえるようなプロデュースが僕ら自身も含めて地域側には必要だなと思いました。結論は出ないんですけれども、ゆったりとよく分からないものを楽しもうよ!という話にはなるかなと思います。

すごく大きな会社にお勤めで、自ら手がけている仕事で、安い・早い・うまいものを開発している人の中にも、仕事に対する疑問を感じて島のような場所に答えを探しに行かれる人も見かけます。皆さんの地域で、ファストではない時間を味わうことは、その人にとっても地域にとっても意味があると感じますね。最後に久保さんはいかがでしょう?

来年度はローカルベンチャーコミュニティを立ち上げようと思っています。夢を持った若者が国頭村に集まり、起業をサポートすることと平行して、地域の人と交流したり、誰よりも国頭が好きになるプログラムを用意し、万が一事業が上手くいかなくても、応援してくれる地域の方がいて、国頭村との良い関係がずっと続いていくような仕組みを創ろうと考えています。

もうひとつ、今までは企業向けのワーケーションに少し懐疑的だったんですが、ふと思いついたアイデアがあり、来年度はそれにトライしてみたいと考えています。

地域に課題があるように、企業にも課題があるはずです。例えば、ワーケーションを通じて従業員満足度を高めたいけど会社の仕組みが追い付いていないよねとか、会社として地域貢献に取り組みたいけど何から手を付けていいか分からないとか。国頭村でのワーケーションを通して、企業側の課題解決にも繋げることができるのではないかと感じたんです。

ですから共創型ワーケーションを通じて、企業と地域が、お互いにハッピーになるワーケーションの実現に向けて、引き続き来年度もチャレンジしたいです。

「お互いにハッピー」というのがとても大事ですね。それこそが、共創型ワーケーションなのかもしれません。

【関連リンク】沖縄しまむすびワーケーション(外部リンク)

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