つくろう、島の未来

2024年12月03日 火曜日

つくろう、島の未来

琉球大学医学部付属病院がんセンターは、3月に沖縄の離島・へき地8エリアに応じた冊子『がん患者さんのための療養場所ガイド』を発行。地域住民に向けて、がん診療に関わる疑問や不安を解消するべく説明会の実施も始まった。

img01

沖縄の離島地域・へき地ごとにがんの治療内容と診療施設を紹介

「がん患者さんのための療養場所ガイド」とは

琉球大学医学部付属病院がんセンター発行『がん患者さんのための療養場所ガイド』は、がんの種類ごとに沖縄県の離島地域・へき地で受けられる治療内容と関連施設を紹介した冊子。どの医療機関で何を相談でき、どんな治療が受けられるのか解説されている。

冊子は全8巻。沖縄の離島地域・へき地を8つに分類し、「竹富町・与那国町編」「石垣市編」「多良間村編」「宮古島市編」「伊平屋村・伊是名村・伊江村編」「本島北部編」「本島周辺の離島村編」「久米島町編」として編集され、沖縄県がん診療連携協議会運営サイト「うちな〜がんネット がんじゅう」でPDFファイルがダウンロードできるほか、今後は離島の診療所や役場窓口で無料配布を行う予定だという。

発行の経緯「島の近隣施設でもがん治療が受けられることを伝えたい」

『がん患者さんのための療養場所ガイド』の発行者、琉球大学医学部付属病院がんセンター長・診療教授の増田昌人さんは血液・腫瘍内科医。以前から来院する患者のがん治療に関する相談を受けてきた。

「沖縄県の離島地域やへき地の患者はがん治療を受ける際に那覇市に通院しなければいけないと考えがちですが、そんなことはありません。各島の診療所でも受けられるがん治療があることや、例えば石垣市なら県立八重山病院で受診できるがん治療がたくさんあることなど、近隣の医療施設でも充実したがん治療ができることを伝えたいと思いました」(増田さん)。

これまで接してきた患者の遺族のなかには「本島で治療を受けさせてあげられなかったから、助けられなかった」と思い悩む人もいるという。「私も田舎の人間なので気持ちは分かります。でも、決してそういうことではなくて、近隣の医療施設でも那覇と変わらない治療を受けられる。この本の存在をきっかけに、『ちゃんと治療を受けさせることができた』と思えるようになればとも思っています」(増田さん)。

今後の展望「がん診療に関わる交通費などの負担軽減にもつながる」

がん治療は1年目は毎月、2~3年目は3カ月~半年に1回のペースで外来で経過観察が行われることが一般的。対応できる診療所は多いため、離島地域から本島に通う交通費の負担を減らすこともできる。

増田さんは現在、各島の診療所の医師と連携し、「がん療養場所ガイド活用説明会」を開催している。「各島の診療所に相談することで、がん末期の過ごし方を充実させられることも広めたい」(増田さん)。


【関連サイト】
沖縄県がん診療連携協議会運営サイト「うちな〜がんネット がんじゅう」

     

関連する記事

ritokei特集