つくろう、島の未来

2024年11月24日 日曜日

つくろう、島の未来

九州と沖縄の間に浮かぶ奄美群島の沖永良部島(おきのえらぶじま)は、知名町(ちなちょう)、和泊町(わどまりちょう)の2町合わせて約1万2,000人が暮らす中規模の島。実は「ワーケーションにおすすめ」という沖永良部島に暮らす宮澤夕加里さんが、島のワーケーションスポットや滞在方法について全5回の連載で紹介します。(前回の記事はこちらから)

(取材・宮澤夕加里)

仕事の時間が終わったら遊びはもちろんのこと、グルメもしっかり堪能したいですよね。まずは沖永良部島の食文化について、簡単にご紹介します。

沖永良部島は鹿児島県の離島ですが、地理的には沖縄に近く、古くは「えらぶ世之主(よのぬし)」と呼ばれる琉球北山王の二男が島を治めていました。そのため踊りや音楽など、人々の暮らしに琉球文化が息づいており、ここが“琉球文化圏の北限”とも言われています。食文化も沖縄料理の影響が強く、ゴーヤーなどの「チャンプルー」は飲食店の定番メニューとして出されるほか、おやつの時間になれば丸い形をした揚げドーナツ「アンダギー」をよく食べます。

一方で、鹿児島本土や奄美地方の食文化も少なからず見受けられます。例えば、島近海で獲れた新鮮な刺身に付けるのは九州独特の甘口醤油。スーパーには黒豚など鹿児島本土の食材が多く並んでいます。そして地酒と言えば、奄美群島でのみつくられている奄美黒糖焼酎です。

つまり沖永良部は、沖縄と鹿児島のハイブリッドグルメを楽しめる島と言えるかもしれません。さらに、ジャガイモやキクラゲなど島の特産品を活かしたメニューや、独自の郷土料理も見逃せません。そこで今回は、知名町で島のグルメを満喫できるおすすめのお店をご紹介します。

おなかいっぱい、笑顔いっぱいのモーニング

島でモーニングを提供している飲食店は決して多くはありませんが、散歩がてら喫茶店やカフェで朝ごはんを食べるのも一興です。

私のお気に入りの一つ、観光鍾乳洞・昇竜洞の出口に立つ「昇竜洞茶房 草(そう)」(TEL 080-5252-4019)は、料理上手のお母さんが一人で切り盛りする小さなお店。ランチタイムはボリューム&栄養満点のメニューを目当てに訪れる人が多いのですが、モーニングも写真の内容でたったの500円! 

トーストと玉子焼きが乗ったプレートの他に、旬の地元食材を取り入れた小鉢が2つにスープとコーヒー。これで採算が取れるのか心配になって尋ねると、「お客さんに喜んでもらいたいから」とお母さん。毎朝通う常連さんがいるのも納得です。

「草」に行ったら、島の郷土おやつ「やちむち(やきむち)」もぜひご賞味ください。小麦粉と粉黒糖を混ぜてホットケーキのように焼き上げる昔ながらのお菓子で、特に焼きたてアツアツはいくらでも食べられちゃう美味しさ。沖永良部島が誇るスーパーフード・シマ桑の粉末入りも、さっぱりした味わいでおすすめです。

海を眺めながらくつろぎのランチタイム

四方を海に囲まれた離島ではありますが、海を見ながら食事ができるカフェやレストランは、実はほとんどありません。そんな希少なお店の一つ、景勝地・田皆岬からほど近い集落内にある「ニュートリショニスト DKあし」(TEL090-4581-7496)は、オーナーご夫婦が自宅の一部を店舗として開放している人気のカフェです。

店名の通り、奥様は元病院勤務の管理栄養士。栄養バランスも彩りも考慮された「本日のおまかせランチ」(写真)は、デザートとドリンクが付いて1,000円とお得です。

奥様は昨年、ご自身が体調を崩されたことをきっかけに薬膳コーディネーターの資格を取得。そして誕生した「島薬膳」は、奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)の郷土料理である鶏飯をメインに、家庭菜園で育てた長命草などのハーブを天ぷらや付け合わせにして提供する身体にやさしいメニューです。土・日・月曜日限定、前日までの予約が必要です。

海を望むテラス席の他に、屋内のテーブル席や畳敷きの個室(2021年4月19日以降利用可能)もあり、お一人様やママ会など幅広いシーンで利用できるお店です。

旬の味と地酒を楽しむ居酒屋ディナー

夜の町を楽しむなら、知名町の中心部・小米(こごめ)エリアがおすすめです。小米港からほど近い商店街通りを中心に、飲食店や商店など20~30のさまざまなお店が点在しています。

戦後、島の最高峰である大山の山頂付近には米軍基地が配備されていたため、お膝元である小米エリアは「米軍の町」として栄えました。夜間営業の居酒屋やスナックが多いのは、その名残でもあるようです。

そんな小米エリアでおすすめの居酒屋の一つが、「なつかしの味 旬香」(TEL 0997-93-2399)です。地魚や貝、ヒルアギ(ニンニクの葉)、ジャガイモ、キクラゲに島らっきょう―。島の旬の食材を中心に、鹿児島本土や沖縄から仕入れる豚肉や牛肉などを使った料理はどれもボリューム満点。ちょっと濃いめの味付けが、お酒によく合います。

生ビール1杯、焼酎2杯、料理3品で2,000円という、お得な晩酌セットもあります。カウンター席に座って、気さくなマスターとおしゃべりしながらグラスを傾けるのもいいかもしれませんね。

沖永良部島の買いもの事情

長期滞在になると、食材を調達して宿で自炊することもあるでしょう。スーパーは知名町、和泊町の各中心部に中規模の「Aコープ」が1軒ずつあるほか、知名町にはホームセンター併設のスーパー「ニシムタ」、和泊町には大型のドラッグストアチェーン「ドラッグストアモリ」などがあり、島内で日常生活に必要なものはひと通り揃えることができます。ただし、町の中心部を外れると小さな商店のみで、24時間営業のコンビニは和泊町に1軒なので、必要なものは計画的に買い揃えておくのが賢明です。

スーパーの地産地消コーナーのほか、島内各所に点在する無人販売所では採れたての野菜や果物を安く購入することができます。ドライブ途中に見つけたら、どんな食材があるのか覗いてみてくださいね。島バナナやタンカン、マンゴーなど、お土産に喜ばれる南国のフルーツもあるかもしれませんよ!

以上、沖永良部島・知名町のおすすめグルメ情報でした。次回は知名町で面白い取り組みをしている「人」にスポットを当てたいと思います。

     

離島経済新聞 目次

ここがおすすめ。沖永良部島×ワーケーション

鹿児島と沖縄の間に浮かぶ奄美群島の沖永良部島。知名町(ちなちょう)、和泊町(わどまりちょう)の2町があり、両町合わせて約1万2000人が暮らす中規模の島は、実に「ワーケーションにおすすめ」という。知名町在住のライター宮澤夕加里さんが、沖永良部島でおすすめのワーケーションスポットや、滞在方法について全5回の連載で紹介します。

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