つくろう、島の未来

2024年10月14日 月曜日

つくろう、島の未来

兵庫県・姫路市沖に浮かぶ家島諸島(いえしましょとう|兵庫県)を舞台に、水道の自動検針システムの開発が始まる。大手電気通信事業者のKDDI株式会社など4社が、姫路市水道局の協力のもとで取り組む。離島や山間部などの検針の効率化を目的に、西島(にしじま|兵庫県)で9月の実用化を目指す。

西島採石場3

西島

水道検針にともなう負担

一般的な水道検針では、担当者が家々を回りながら検針作業が行われる。一部では、業務の効率化のために、免許が不要な微弱電波を利用する特定小電力無線の発信機を水道メーターに設置し、無線対応ハンディターミナルを使って至近距離からデータを受信する方式が採用されている。しかし、離島や山間部などでは、家々を訪問すること自体の負担が大きく、課題とされてきた。

市内に大小44の島々からなる家島諸島があり、家島(いえしま)、坊勢島(ぼうぜじま)、男鹿島(たんがじま)、西島の4島に約6,000人が暮らす兵庫県の姫路市も、水道検針にともなう負担に悩まされていた。

widemap

大小44の島々からなる家島諸島

家島と坊勢島では民間に水道検針を委託しているが、定期航路などの便数が少ない西島と男鹿島は、市の職員が公用船をつかって島へ渡り、検針を行っていた。船の燃料代や維持費、検針担当者の人件費など、市の負担は小さくなく、安全面や悪天候時の欠航などのリスクも抱えていた。

姫路市水道局担当者は「西島は広くて集落が分散しているうえ、車が通れない道もあるため、公用船で海伝いに回り検針していました。採石が主産業の男鹿島は大型トラックが多く、移動の際に危険を感じることもありました」と苦労を語る。

男鹿島採石場B

男鹿島

姫路市水道局と関連4社が協力

そこで、KDDI株式会社と、第一環境株式会社(上下水道料金徴収業務)、アズビル金門株式会社(検針機器メーカー)、京セラコミュニケーションシステム株式会社(LPWAネットワークサービス)の4社が集まり、コンソーシアム(※)を結成。
通信規格のひとつ、SIGFOX(シグフォックス)を採用し、姫路市水道局の協力のもと、まずは定期航路が無く、交通手段が海上タクシーしかない西島と姫路市本土間での遠隔自動検針の実用化を進めることになった。

※複数の個人や法人、団体が集まり結成される組織・団体の一種。特定のテーマや目的に関連する企業や団体、個人が共同で活動を行なったり、参加者が財産や権利を出し合って共同で運用したりするもの

現在、携帯電話回線として使われているLTE(※)回線を用いて検針を自動化し、現地訪問を不要とすることも技術的には可能だが、通信費用などの運用コストや機器の電池寿命などがネックとなっていた。

※Long Term Evolutionの略語。携帯電話の通信規格の1つ

シグフォックス は、LPWA(※)と呼ばれる無線通信規格の1つで、複数の通信規格があるLPWAにのなかでも、シグフォックスは複数端末に対して小規模なデータ通信を行う用途に特化している。
日本国内でのサービス体制も整っているため、早期実用化が可能であると判断し、関連4社のコンソーシアム体制で自動検針の実用化に取り組むことになった。

※Low Power Wide Areaの略語。少ない消費電力でkm単位の距離で通信が可能な無線通信技術の総称。低価格、省電力で広域通信が可能なことから、インターネットに接続された機器が情報交換することにより相互に制御するIoT(Internet of Things)に適した技術として注目されている

「スマートメーターに取り付けた発信機から、西島の山頂の基地局へ電波を飛ばし、そこからデータセンターへと通信させます。当面は、電波が届くかなど実証しながら人力と無人の両方で検針を行い、検証ができ次第、実用化となります」(姫路市水道局担当者)。

西島での自動水道検針の実用化は、9月を予定している。自動検針技術が確立できれば、同様の課題を抱えるガス業界や、家島諸島のみならず全国の離島地域や山間部などにも応用が可能となるため、西島での成果に期待がかかる。

     

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