この夏、瀬戸内海の家島諸島(いえしましょうとう|兵庫県)の西島(にしじま|兵庫県)で、スマートフォンなどの使用を1日最大1時間に制限する4泊5日のオフラインキャンプが催される。兵庫県内の青少年を対象とし、インターネットから離れてカヌーや野外炊事などの自然体験やグループワークで日常生活を見直す。今年で2年目を迎える取り組みについて、公益財団法人兵庫県青少年本部の担当者に話を聞いた。(写真提供:公益財団法人兵庫県青少年本部)
深まる子どもたちのインターネット依存
近年、スマートフォンやタブレット、オンラインゲーム機器などの普及が進むなかで、子どもたちのインターネット依存が社会問題化しつつある。
2016年度に兵庫県が小・中・高校生を対象に実施した実態調査によると、インターネットへの依存傾向にある青少年は7.7%にのぼっている。特に、2015年度調査との比較では小学生が1.4%から3.5%と倍増しており、ネット依存の低年齢化が問題視されている。
兵庫県では、2016年に青少年愛護条例を改正。インターネット利用について子どもたち自身が考え適切に利用できるよう、ルールづくりの支援に努めることを、全ての人々の努力義務とするなど、インターネット依存への防止対策に積極的に取り組んでいる。
こうした対策の一環として、公益財団法人兵庫県青少年本部は、兵庫県内の小学5年生~18歳以下の青少年を対象に、ネットから離れてカヌーや野外炊事等の自然体験、ワークショップで日常生活を振り返る4泊5日の「人とつながるオフラインキャンプ」を2016年より実施。この夏、2回目の実施が計画されている。
キャンプを企画した担当者は「県の調査では、ネット依存傾向にある子どもの72.8%が知らない人とやりとりをしたことがあり、22.9%がネットで知り合った人と実際に会っていました。ネットを通じた不特定多数との交流から犯罪に巻き込まれる恐れもあり、実態を把握しネット依存を防ぐ対策が必要とされています」と語る。
アウトドアを楽しみ、生活を見直すオフラインキャンプ
参加者13名を集めて実施されるオフラインキャンプの舞台となるのは、姫路市南西沖の瀬戸内海に連なる家島諸島の西島にある「兵庫県立いえしま自然体験センター」。島内は携帯電話がつながるエリアもあるが、同施設内はほぼ携帯電話の圏外となっている。
参加者は、島の環境を活かしたカヌーやシュノーケリングなどの野外活動を楽しむ。原始的な火おこしに挑戦したり、西島の隣の坊勢島(ぼうぜしま|兵庫県)に魚などを買い出しに行って自分たちで料理をつくったり、サイバー犯罪被害防止教室などのプログラムもある。スマートフォンやタブレット、ゲーム機などは、夕食後に1時間ある自由時間にのみ、電波増幅器とWi-Fiが設置された専用の「スマホ部屋」で使用できる。
キャンプ中は、生徒指導を専門とし総務省「スマートフォン時代に対応した青少年のインターネット利用に関する連絡会」で座長を務める兵庫県立大学環境人間学部 竹内和雄准教授がコーディネーターとなり、同大学ソーシャルメディア研究会の学生がメンター(※)として活動を補佐する。
※メンター……仕事上や人生の指導者、助言者。指示や命令ではなく、助言と対話による気づきで被育成者の自発的・自律的な成長を促す
同研究会は、ネット依存やネットいじめなど子どものインターネット問題に取り組み、各地の学校で出前授業なども行っている。キャンプでは認知行動療法の要素を取り入れ、日常生活を振り返るグループワークや、キャンプファイアーなども予定されている。
昨年のキャンプでは、子どもたちから「楽しくてネットのことなんか忘れてた」という感想もあったという。
企画した公益財団法人兵庫県青少年本部の担当者は「日常生活でも、押し付けのルールではうまくいきません。利用ルールは、キャンプ中に子どもたち自身で考えてもらいました。保護者と子どもの間で意見が対立したケースでは、間に入って話し合いをまとめる手伝いもしました」と話す。
参加者は、7月に「兵庫県立いえしま自然体験センター」で開かれるオリエンテーションを経て、8月に4泊5日のオフラインキャンプに参加する。また、11月に保護者同伴で振り返りを行う日帰りのフォローアップキャンプが予定されている。