1月31日、2月1日に、沖縄県が主催する「おきなわ出会い応援シンポジウム」が宮古島と石垣島で開催された。沖縄県内で男女の出会いづくりをサポートする「出会い応援」の機運が高まった背景を、シンポジウムのレポートとともに紹介する。
子沢山の沖縄県が「出会い」を応援する理由
沖縄県は、沖縄本島を中心に南北約400kmに39の有人離島が点在する島嶼県である。日本の総人口は、2008年をピークに減少に転じているが、沖縄県は未だ増加傾向という稀有な地域だ。しかしながら、県内でも沖縄本島の都市部や石垣市をのぞくと、離島地域を含む多くの市町村では人口減少傾向にあり、県全体でも平成32年前後をピークに減少へ転じると予測されている。
人口減少の背景には少子化があるが、その要因の一に挙げられるのが「未婚化・晩婚化」の流れだ。
沖縄県の合計特殊出生率は全国一の水準を誇り、「子沢山」のイメージが強い。しかしながら、平成22年の生涯未婚率は47都道府県のなかで男性が2位(25.05%)、女性も4位(12.72%)と高く、平成27年の平均初婚年齢も男性が30.3歳、女性が29.0歳と上昇。未婚化・晩婚化の流れは顕著であり、シングルマザー・ファザーの増加と、それに伴う社会課題も多く浮上している。
未婚化・晩婚化は少子化を招き、地域の衰退を加速させることから、沖縄県では結婚に向けたファーストステップとなる「出会い」を県全体で盛り上げることを起案。
「出会い応援」に前向きな県内の企業・団体を「おきなわ出会い応援企業」として登録し、出会いの場をつくるイベントの開催や、情報提供を通して、県全体で出会いを応援する機運醸成と継続的なフォローアップ体制の構築を目指す。
お見合いが衰退した今、「出会いづくり」は「地域づくり」に
一般的に、男女の出会いはプライベートな問題として捉えられている。そのため、行政が出会い応援に踏み出すことを懐疑的に捉えることもできるが、出会いの在り方が、時代時代で大きく変化している事実を念頭におきたい。
1950年頃まで、地域や親類などの仲人が出会いを仲介するお見合い結婚が全体の54%を占めていたが、働き方、コミュニティの在り方、価値観の多様化などさまざまな背景により、1960年頃からお見合い結婚と恋愛結婚の割合が逆転。近年、お見合い結婚は全体の5%程度まで減少している。
「お見合い」が衰退した現在、民間では結婚相談所等のサービスも多数存在するが、その多くは都市部にあり、離島地域からの利用は難しい。そこで「お見合い」に変わり、地域が「出会い」を応援する流れが生まれてきたことは、ある種、自然な流れにも見える。
「おきなわ出会い応援シンポジウム」の冒頭、沖縄県子ども生活福祉部 青少年・子ども家庭課の武村幹夫班長は、沖縄県まち・ひと・しごと創生総合戦略のなかで、「雇用創出」や「子育てセーフティネットの充実」などの取り組みとともに、「若者同士の交流や出会いの機会の提供」の重要性を説明。
県内で行われた「結婚・子どもに関するアンケート(未婚者向け)」結果をもとに、「交際相手や結婚相手を見つけるための活動をしていない理由」について、「何をすればよいかわからないから」「活動をするための経済的な余裕がないから」「異性とうまく付き合えないから」「活動をするための時間的な余裕がないから」と回答した層を、出会いをサポートする対象層と定めた。
基調講演では、当メディアの統括編集長・鯨本あつこが全国の有人離島地域で行われている「島婚」などの事例を紹介。東京都新島村で開催されている「島婚 新島&式根島」や、ファッション・PR業界で活躍する東京の若者が離島地域と連携して企画・実施される五島列島(ごとうれっとう|長崎県)の島婚ツアーを例に挙げながら「島外の女性を募る場合には、島内外の人材が連携して取り組みを行うことが重要」と説明した。
「出会い応援」の必要性について鯨本は、お見合いに通じる「おせっかい年長者」の減少や、インターネット上を介したバーチャルコミュニケーションが増加した時代の変化、都市部に比べて結婚相談所等のサービスが少なく、交流人口や出会いの場も多くない、離島の諸条件について説明。
その一方、都市部に暮らす女性のなかには、地域全体が子育てに関わる離島地域への移住・嫁入りにあこがれる層が存在することを紹介。そうした層と地域との出会いを創出することは、結婚による個人の幸せにとどまらず、自治体の税収確保や、地域の伝統文化継承、自治会活動の維持など、地域全体の幸せにつながるため、「出会い応援」はそのまま「地域づくり」につながることであると、その重要性について語った。
続くパネルディスカッションでは、宮古圏域・八重山圏域の「出会い支援について考える」をテーマに、沖縄地域で婚活支援を行う婚活アドバイザーの仲原和香乃さんがコーディネーターを務め、市町村や団体の代表者が登壇。
多良間島(たらまじま|多良間村)の伊良皆光夫村長は、「子どもは地域の宝」として、幼稚園児の入園料・保育料無料化や高校卒業までの医療費無料化など、手厚い子育て支援を整える一方、出会いの支援が進まない村の状況を説明。出会いの機会創出について「できることは何でもやっていきたい」と前向きな姿勢を見せた。
一方、石垣島(石垣市)では、八重山広域市町村圏事務組合の理事長を務める中山義隆市長が、市民アンケートの結果、独身男女の8割が「異性と出会う機会が少ない」と回答した背景から、若い世代の出会いの場を創出するべく「お〜りたぼ〜り!美ら島リゾート婚活ツアー事業(結婚支援・移住促進事業)」(※)を実施。テレビ番組の誘致を行い、全国から花嫁を募集した事例や、今年度開催予定の婚活ツアーなどの先行事例について紹介した。
※おーりたぼーり……石垣島の方言で「いらっしゃい」
「出会い応援」の主催者を支える必要性
宮古島(みやこじま)、石垣島(いしがきじま)で行われた各シンポジウムには、各島の青年会議所、商工会青年部、まちづくりに関わるNPO担当者など、地域で行われている婚活イベント等の企画側、サポート側の代表者が聴講に訪れていた。
宮古島会場に参加した伊良部商工会青年部の豊見山貴仁さんは、2015年にサンセットクルージングを楽しみながら婚活を行う「船コン」を商工会で企画した経験を持つ。「イベントを企画したものの、まったくの手探りだったので、どこにアプローチしていいのかわからず、集客にも苦労した」と当時の課題を振り返りながら、シンポジウムで紹介された事例をもとに「これまでは島の中だけで考えて動いていたが、外の情報を取り入れ、島外の人と連携して島と両輪で実施していきたい」と期待を語った。
離島など小規模地域内で婚活イベントを開催する際、参加を「恥ずかしい」と感じる層も少なくない。しかし、豊見山さんは「恥ずかしいというだけで出会いを求めていないわけではない。船コンの時も『先輩から参加しろと言われて……』といったことを理由に参加してもらった人はいたが、実際の参加してみると『またこうした機会があったら参加したい』という人が多かった」と話す。
シンポジウムの聴講者から聞こえてきた感想には「地域の未婚者に向けて婚活を行いたいが、どうしていいかわからない」という声も多かった。
実際、地域内の出会いをサポートしたいと考えても、良策がわからずに立ち止まってしまうケースや、手間や配慮が必要となる一方、予算がなくボランティア活動となってしまうことから継続できないケースも少なくない。出会いを「地域づくり」と捉えるとならば、「出会い応援」をする主催者側のサポートも必須といえる。
沖縄県では、「出会い応援」の機運醸成を図るため、「おきなわ出会い応援企業」の募集登録を進めながら、県全体での縁結びを推進していくという。出会い応援の取り組みが、地域の良き未来を育む新たな一手となることに期待したい。
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