奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)で行われている島の特産品づくり「奄キャンものづくり事業」。奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の5島でつくられている産品についてご紹介します。
■「白ゴマ」の生産量は日本一!農業の島、喜界島
©下曽山 弓子
鹿児島と沖縄の間に浮かぶ奄美群島で行われている島の特産品を育てる取り組み「奄キャンものづくり事業(以下、奄キャン)」では、平成24年度から20事業者が参加し、島の特産品を育てています(事業のはじまりについては #01 をご覧ください)。
今回は、3月初旬に東京で開催される販売会に、奄キャンで育てた商品を出品する喜界島(きかいじま|鹿児島県)の「結いグループ喜界」を訪ね、活動内容や商品についてお話を伺いました。
奄美大島の東に位置する喜界島は周囲約48km、人口約7,400人の小さな島。しかしながら、生産量日本一を誇る「白ゴマ」をはじめ、サンゴ礁が隆起したアルカリ性の土壌で育まれた、ミネラル豊富な作物が採れる「農業の島」として有名です。
「結いグループ喜界」は、島の農家に嫁いだ女性たちが中心となり、島の農産物を使った特産品開発・加工・卸・販売を行うグループ。「喜界島の農作物を使った産品をつくることで、喜界島と農家に恩返しをしたい」という想いではじまった生活研究グループを前身とし、現在は奄キャンを活用して、喜界島の農産物が持つ魅力をさらに高めていけるよう、チャレンジしています。
■「喜界島の農作物を使って、島と農家に恩返しをしたい」
お話を伺ったのは「結いグループ喜界」が設立された平成15年6月28日当時から所属している代表の体岡広美さん。まずは活動をはじめたきっかけから、お話いただきました。
「設立当時の代表が、奄美大島の各市町村にある生活研究グループを視察した時に、それぞれが地元の食材を使った加工品を作っていたのを見て、喜界島でも同じことが出来ないかなと考えたのがきっかけです」(体岡さん)。
そこで最初に考えられたのが、生産量日本一を誇る「白ゴマ」を材料にすることでした。喜界島の白ゴマは何百年も前から島で自家用に栽培されてきた在来種。外国産のゴマに比べると小粒ですが、原種に近く、香り高いのが特徴です。その白ゴマを材料にした「ドレッシング」が最初の商品開発となりました。
「当時は設備も無かったからぜんぶ手づくりで、場所も喜界島の東部にある志戸桶(しとおけ)集落の改善センターだったのよ」と体岡さん。生産環境が整わないなかで、どのようにして白ゴマドレッシングはつくられたのでしょうか。
「白ゴマドレッシングは、生ゴマを洗浄して、干して、炒って、擂(す)って、調味料と混ぜるという手順でつくるんですが、改善センターの床一面にゴマを広げて乾かしてね、ゴマを炒るのもみんなでずらーっと並んで、フライパンを振っていました」(体岡さん)。
ドレッシングづくりは手作業で行われ、グループに所属するメンバーはみな農家に嫁いだお母さんのため、農業や家事の合間をぬったシフトを組み、作業にあたっていたとのこと。「作業のときはいつも8~9人くらいいましたね」(体岡さん)。
■材料の買取相場が上がるも「農家の皆さんに貢献できたかな」
白ゴマドレッシングづくりがはじまった頃から、喜界島では白ゴマの買取相場が上昇。しかし、農家の嫁が集まる結いグループ喜界には、「喜界島の農作物を使った産品をつくることで、喜界島と農家に恩返しをしたい」という想いがありました。
「買い取り相場が上がった分、仕入れは厳しくなったけど、農家の皆さんにも貢献できたんじゃないかな」と体岡さんは話します。
その後、結いグループ喜界ではさまざまな産品を開発。活動実績を積み上げて、平成19年度からは島に新設された喜界町農産物加工センター内に作業場を移転したとのこと。作業環境が整ったことで、作業効率があがり商品数も増加。現在は、特産品コンテストや物産展にも積極的に参加されています。
■「いくら良いものを作っても、儲からなければ農家さんに還元できない」
結いグループ喜界が活動拠点とする喜界町農産物加工センター内には、物販やカフェスペースが設けられ、特産品の製造だけでなく、温暖で平坦な地形で農作物の生育に適した喜界島の気候風土に育まれる食材の持つ可能性や、それに関わる人々についての情報も発信されています。
体岡さんに、奄キャンものづくり事業に参加したきっかけについて伺うと、「今までは『美味しいもの』『良いもの』を一生懸命作ろうとしていたの。でもね、いくら良いものや美味しいものを作っても、それが売れて儲からなければつくり続けることは出来ないし、農家さんに還元できないんです」と体岡さん。
「だからこの事業に参加して、作ったものを『商品』として見つめ直すことにしたんです。そのためにはまず原価計算。島の人々はおろそかにしがちなところをきちんと数値化したうえで、残すものと省くものを選別していこうと思ったのね。それが出来たら既存の商品を売れて儲かるものに磨きあげることが出来るし、新しい商品を作るときにも役立つと思ったんです」(体岡さん)。
奄キャン事業の目的は、奄美群島でつくられている産品がもつ課題をクリアにし、「売れた」から「売った」にシフトしていくこと。結いグループ喜界では「島と農家に恩返しをする」ために、産品のブラッシュアップにあたっています。
後半では、3月の販売会に出品する2つの商品について紹介します。