奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)で行われている島の特産品づくり「奄キャンものづくり事業」。奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の5島でつくられている産品についてご紹介します。今回は、3月初旬に東京で開催された販売会の様子をレポートします。
「奄キャンものづくり事業(以下、奄キャン)」は、奄美群島で行われている特産品を育てるプロジェクト(主催:奄美群島広域事務組合)。平成24年度からスタートし、奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の有人8島からなる奄美群島で特産品をつくる事業者に向けた継続研修を実施。奄美群島産品を育てています(事業のはじまりについてはこちらをご覧ください)。
今回、現在進行形で育成されている特産品の中から、奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)・喜界島(きかいじま|鹿児島県)の4商品が、さらなるブラッシュアップを図るために東京へとやってきました。3月上旬の土・日曜日に青山・国連大学前広場 Farmer’s Market@UNU(以下、Farmer’s Market)にて実施された、「島の味覚はいかがでしょう? 奄美群島 特産品ふるまい販売会」の様子をレポートします。
■奄美群島のお母さんがつくる”島の味覚”。東京の反応はいかに?
3月上旬の土日、日本全国からさまざまな食材が集まる青空市場、青山・国連大学前広場のFarmer’s Marketにて「島の味覚はいかがでしょう?奄美群島 特産品ふるまい販売会」が開催されました。
すっきりとしない空模様をものともせず、元気いっぱいに集まってきた奄キャンメンバーは、奄美広域事務組合の林さん、奄美大島大和村「まほろば大和生活研究グループ」の泉さん、和泉さん、大和村役場の大瀬さん。喜界島「結いグループ喜界」の体岡さんと、現在は関東に暮らしている体岡さんの実妹・菊池さんの6人。
お客さんに試食してもらうため、準備した島の味覚は4品。奄美大島からは、大和村産のすももコンポート「うん…まま、すもも」と、ヨーグルトにかけた「すもののくいぐいフルーツソース」。喜界島産の黒糖そら豆粉「毎日・まめオレ」はホットミルクで溶いて、「胡麻しゃぶだれ」はゆで豚と一緒に提供しました。
ブースに訪れたお客さんは、「奄美群島」という看板に足を止め、「うん…まま、すもも」の大きさや鮮やかな色や、「毎日・まめオレ」の空豆の粉でできたドリンクという意外性に、驚いたような反応を示します。
初めて目にする商品の原材料について説明を聞きながら、商品を味わってゆくお客さんたちから、「おいしい!」と感嘆の声があがると、「うれしい!」と奄キャンメンバーの笑顔がはじけます。
原材料の成り立ちや、おいしさを活かすための製法など、島で生まれ育つ商品背景の説明に、しっかりと耳を傾けてくれるお客さん。奄キャンメンバーは寒さも忘れ、言葉に熱を込めて説明を続けました。
■大好評の一方、ブラッシュアップのための課題も見えてくる
今回、販売会を行った目的は、島で生まれる商品群をより良くする「ヒント」を得ること。そのため、お客さんには食べてみた感想や、改良に向けた意見をもらうためのアンケートにも協力いただきました。
味見してくれたお客さんのなかには、商品を気に入り購入してくれる人も多く、島から持ってきた商品のなかには、1日目で売り切れてしまったものも。これには「こんなに売れるとは」と、うれしい悲鳴のメンバーたち。
この販売会で奄キャンメンバーが得た「ヒント」には、まほろば大和生活研究グループのすもも商品が、お客さんにも指摘されるほど「安い」ということがありました。
1つ300円の「うん…まま、すもも」はひと瓶に4〜5個のすももコンポートが入ったもの。価格設定の低さも手伝い、「多めに持参したつもりだった」という商品のほとんどが、次々に完売。「きちんと原価計算を行って臨んだ」とはいえ、「東京ではありえない」という声をいただいたことで、今後の販売方法を再考する材料を得ることができました。
一方、喜界島の結いグループ喜界の商品には「(価格が)高め」という声も。価格の背景には、原材料のそら豆やゴマが喜界島の在来種で、とても貴重だからという理由があり、そうした商品の背景をしっかり説明することで、お客さんも納得顔で購入されるため、商品をどのように紹介するのがよいのか、効果的なPR方法が課題として見えてきました。
今回の出店先となったFarmer’s Marketは、こだわりのオーガニック商品を扱っている出店者も多く、青山の真ん中という立地から安心・安全な食品への厳しい目を持ったお客さんが多く訪れます。離島でつくられる産品は、大量生産される商品とは対極にあり、少量ずつ丁寧につくられるため、Farmer’s Market@UNUに訪れるお客さんとの相性もばっちり。奄キャンメンバーとの会話を楽しみながらアンケートにもじっくり答えてくれ、また、商品に対する質問も多くいただきました。
■ここで得た収穫を胸に、次へ
出店の感想を各メンバーに聞きました。これまで百貨店の物産展で試食対面販売を経験してきたという、結いグループ喜界のメンバーは、「(物産展では)ひとりのお客さんにかけられる時間はごくわずかで、次々と販売をこなしていかなければならず、今回とはぜんぜん違う」と言い、「今回は出店者同士の横のつながりも刺激になり、非常に勉強になりました」と、ここで得た収穫について教えてくれました。
また、「これまで、商品について上手く伝えるのは苦手で接客に向かないため、つくり手側として黒子に徹していた」というまほろば大和生活研究グループの泉 美保子さんは今回、「一度はお客さんの生の反応に触れるべき!」という若手メンバーの言葉に後押しされ、東京までやってきたとのこと。その結果、「丹誠込めてつくったものが、こんなにたくさんの人においしいと言われ、うれしくてたまらない」と、お客さんの反応に目を細めていました。
大盛況のうちに幕を閉じたFarmer’s Marketの2日間。奄キャンのブースには多くの人が訪れ、息つく間もないまま終了を迎えました。「本当にやって良かった」「お客さんのよろこぶ顔に、これまでの苦労が報われた」そして、「これからはもっと…」と先を見据えてモチベーションを上げる奄キャンメンバー。たくさんの「ヒント」を得た顔に、疲れの色は見えませんでした。
次回は販売会終了直後に行われた奄キャンメンバーの座談会の様子をお伝えします。
(文・小林奈穂子)