つくろう、島の未来

2022年12月06日 火曜日

つくろう、島の未来

スロートラベルという言葉をご存知でしょうか?
イメージするなら、旅程をぎゅっと詰め込まず、気の向くままに心の向く場所へ行き、その土地の風土をたのしむ旅行のスタイル。そんな旅を、国内180島を歩いてきた『ritokei』統括編集長・鯨本あつこが沖縄離島3島で実体験。旅の様子をお届けします。

文・鯨本あつこ

北大東島編・世にも希少な小さな島でおどろきの自然と文化に出会う
南大東島編・ワイルドな自然と八丈島と沖縄のミックスカルチャーに酔う
渡名喜島編・子どもの視点で豊かさ広がるセンスオブワンダーな島時間

最短空路で南大東島へ

大東諸島(だいとうしょとう|沖縄県)では定期航路としては日本で最も“短い”空の旅が楽しめる。
北大東島(きただいとうじま)でのスロートラベルに後ろ髪を引かれながらプロペラ機に乗った私は、わずか10分であこがれの南大東島(みなみだいとうじま)に降り立ってしまった。

南大東空港には琉球エアコミューター(RAC)が就航。那覇空港までは約1時間。1日2便就航している

この日、初めて南大東島に上陸できた身としては、まずは島の様子を掴みたい。そのためには島の中でもなるべく高いところにのぼりたいが、南大東島は山がなく最高地点の標高も75メートルと高くない。そこで空港からほど近い「日の丸山展望台」に向かってみる。

「日の丸山展望台」は海抜63メートルの位置にある展望台。第二次世界大戦時はこの場所で旧日本軍が敵軍の監視を行っていたという

沖縄で「アカバナ」と呼ばれるハイビスカスの間を通り抜けて展望台に登る。北大東島と比べると3倍ほど大きな南大東島は、どんな様子だろう。

360度のパノラマで島を見渡すことができる展望台から、島の様子を伺う。北大東島と同じように、中央部分が盆地になっていて「幕(ハグ)」と呼ばれる環状の大地が外周を囲む地形。ちなみに南大東島では盆地部分が「ハグシタ」、台地部分が「ハグウエ」と呼ばれているが、「ハグ」の語源は「歯茎」を意味する八丈島(はちじょうじま|東京都)の言葉。

そう、この島は今から約120年前に八丈島から渡ってきた人々が開拓を始め、沖縄方面からやってきた人々とともに、島の文化をつくりあげてきたミックスカルチャーの島なのだ。展望台から見えるハグシタにはどんな世界が待っているのだろう。

南大東島といえばサトウキビである。飛行機からも展望台からも、一面に広がるサトウキビ畑が見えた。宿がある中心集落に向かう道すがら、ざわわざわわと広がるサトウキビ畑に降り立ってみた。

赤土の上にがっしりと根を張るサトウキビ畑を歩いてみると、その大きさがよくわかる

南大東島の60%を占める耕作地のほとんどがサトウキビ畑だというが、開拓前はビロウなどが生い茂っていた場所。そこを八丈島と沖縄の島々からやってきた開拓者たちが開拓し、これほどのサトウキビ畑をつくりあげてきたと思うと感慨深い。南大東島では、そんな島と人の約120年に渡るドラマをじっくりみていきたい。

1983年まではサトウキビを運搬する「シュガートレイン」が島内をかけめぐっていた

ダイナミックなスポットで癒される

もうひとつ気になるスポットがあったのでその足で「海軍棒プール」に向かう。大東諸島には砂浜がない。代わりに岩を掘り込んでつくったというなんともダイナミックなスポットがあるのだ。

駐車場に車を停めて、急勾配の坂道を駆け下る。ひゃっほー!

中央に見えるのが「海軍棒プール」。海が荒れているときはけして入らぬように

海が凪いでいる暑い日には、島の人々はここに集い、飛び込んだり、泳いだり。太平洋に突き出したプールを楽しむのだという。

この日は風が強く、高い波が押しよせていた。それでも青い海にみとれながら、ザッパーンという波の音としぶきを味わう時間はなかなか爽快。

島の東側に位置する海軍棒プール。目の前に広がる海は広大な太平洋

あたりには誰もいない。ザバーン、ザバーンと打ち寄せる波の力を感じながら、自分のちっぽけさを感じる静かなひととき。悩みごとをたんまり抱えてきたとしても、ワイルドな波音がザバザバと洗い流してくれる。

訪れた日が陽気なら海に飛び込み、荒天なら波音に心を洗濯してもらう。観光ガイドに載る写真には青空が多いが、そうでない日にも楽しみは多様にある(ただし、台風ほどの強風時には立ち入らないようにしましょう)。

心の洗濯を終えたところで島の南西にある中心集落に向かった。大東諸島といえば大きな台風が襲来することで知られている。建物も頑丈な石やコンクリート造りが多く、独特の街並みを楽しみながら歩く。

中心集落には特徴的な石造りの建物などおもしろい風景に出会える

宿泊する「ホテルよしざと」のそばに「ケンチャンストアー」というステキな名の商店に立ち寄ろうとすると、店の前には運動会のお知らせが。明日は日曜日だが運動会のため臨時休業。そう、小さな島にとって運動会は島をあげての一大イベントなのだ。

南大東島の幼稚園、小学校、中学校の合同運動会が開催されるというお知らせ。大きな行事がある時は臨時休業するお店が増えるので島旅の際はご注意を

商店でおやつを買ってホテルでしばし休憩していると時刻は18時前に。ここからが本番。島の文化を味わうため一路、ある約束の場所へ向かった。

いざ、南大東島の社交街へ

南大東島の人口は約1,200人だが、人口に対して飲食店の数が多く食堂や居酒屋、スナックが立ち並ぶ社交街が存在する。この島にある文化にふれるべく、旅の前に離島経済新聞社の取材でお世話になったことのある沖山さんに連絡をとり、待ち合わせをしていたのだ。

取材班とともに約束していた居酒屋「ろくさん」に入ると、沖山さんも到着していた。私の連絡を受けて友人の仲田さんも呼んでくれたという。まずはオリオンビールを注文して乾杯。大東名物のマグロたっぷりの刺し盛りに、ナワキリのバター焼き、イカの天ぷらに豚の炒めものなど、居酒屋メニューに浮かれた心を隠せない。

中央が「ナワキリのバター炒め」。ナワキリ(クロシビカマス)は南大東島近海で獲れる深海魚で縄を切ってしまうほど鋭い歯を持っている

どのメニューも美味しく、なによりこの空間がたまらない。隣席には毎月集まっているらしい島の方々が宴会を開いており、お店の女将さんと親しげに会話をしている。

そこに仲田さんがやってきて、沖山さんと仲田さんに話を聞く。「沖山」は八丈島の苗字である。40代の沖山さんは祖父の代に八丈島から南大東島にやってきて、島の開拓に加わった。八丈島にも親戚がいるので昔は何度も行っていたという。

一方の同世代の仲田さんも祖父の代に南大東にやってきたというが、ルーツは沖縄本島北部の伊是名島(いぜなじま)にあるという。ふたりとも南大東島で生まれ育ち「15の春」で島を離れ、進学や就職を経験したのちにUターンしていた。

ミックスカルチャーで生きる島人感覚

「大東にいると沖縄な感じがわからんよね」と二人がいう。八丈島出身者と沖縄出身者が混ざり合った背景もあるが、実は近代的な事情もある。

「僕らが子どものころはNHKしか映らなかった」と沖山さん。絶海の孤島であるゆえ大東諸島でテレビ放送が始まったのは1975年と遅かった。しかも当初は沖縄ではなく東京の衛星電波を拾っていたため、沖縄方面から届く情報が少なかったのだ。「那覇でテレビ番組をVHS録画したものが島でレンタルされていたよね」と二人は笑うが、情報が届かなった時の間に育った独自の視点が、島の人々に根付いているのだろう。

そんな話で盛り上がっていると隣席から歓声が聞こえてきた。見るとテーブルの上に火の灯ったバースデーケーキが登場している。「おめでとー!」の声に笑顔をこぼしたのは女将さんだった。この日、誕生日だった女将さんのために、常連さんたちが島で唯一ケーキを注文できるというお店からケーキを手配していたらしい。なんと温かい夜だろう。

ハッピーバースデーの歌に拍手を送っていると、後でケーキのおすそわけをいただいた。ケーキもとっても美味しかった ※写真に少しぼかしをいれています

居酒屋「ろくさん」を出た私たちは、社交街の小さな路地に入り込んで次の店におじゃました。その名も「サロン喜多」。お酒のボトルが並ぶカウンター席の常連さんが歌う沖縄の島唄はプロ級に上手く、聞き惚れながら泡盛をいただく。

グラスの下に畳んだおしぼりを置くのは沖縄らしい。水割りにした泡盛にシークワーサーを入れて味わう

皆で歓談を楽しみながらしばらくすると、カウンター席のマイクが隣のボックス席にバトンタッチしたようで、チェッカーズメドレーが流れてきた。先日、テレビ番組のロケでチェッカーズのF-BLOODが島にやってきたらしく、ちょうどこの日が放送だった。そこで、チェッカーズメドレーを選曲するという人の心が愛らしい。

すると、なんとマイクがこちらの席にもまわってきた。チェッカーズ世代のひとりがマイクを受け取り一緒になって熱唱。踊りの手つきは沖縄のカチャーシー風で、ここそこにあるミックスカルチャーを味わった。

隣席の常連客とチェッカーズメドレーで交わる我が取材班 ※写真に少しぼかしをいれています

ここで宴はお開きとなり沖山さんと仲田さんと別れた。仲田さんは明日の運動会で走るらしい。

時刻は22時。まっすぐ帰ろうと思っていたが、社交街のお店にはまだまだ明かりが灯っている。そういえば、居酒屋「ろくさん」にいた時、隣でお店をやっているというママがいたので、ママのお店にも立ち寄ってみる。すると、カウンター席で隣になった相席者と話が盛り上がり「ママ、ここは俺が払うから」と言って一杯ごちそうになってしまった。

八丈島はかつてたくさんの流人が流されてきた歴史を持ち、島の人はそんな流人を情け深く受け入れてきたという。南大東島の人々にもそんな気質が受け継がれているのだろうか。いずれにせよ、人々の温かさに包まれた夜が最高の思い出となったことは言うまでもない。

ふと出会った大東犬と運動会

翌朝はのんびり目覚めて朝食をとった後、散歩に出かけた。南大東島には池がたくさんあり、珍しい植物群落や鳥たちを見ることができる。島には世界一美しいコウモリといわれるダイトウオオコウモリなど希少な動物がいるのだが、この日の散歩中に出会えたのは大東犬。足が短くてガニ股の小型犬で、私を見てわふわふと尻尾をふってくれた。

散歩の途中、民家で飼われている大東犬を発見!

その後、集落を散歩していると小学校を発見。昨夜、沖山さんから「運動会来ます?」と言っていただいたこともあり、おじゃまにならないよう端のほうで見学させてもらった。

グラウンドに並んだ観客テントは集落ごとに分かれているらしく、子どもたちの踊りや走りに歓声が飛び交っている。学校の運動会といえば子どもたちの競技がメインだと思うが、島は違う。昨夜、仲田さんも走るといっていた「職域リレー」が始まると、島の大人が続々と集まってきてリレーがはじまった。

放送に耳を傾けると、職域チームには教職員、PTA 、教育委員会などの学校関係だけでなく、郵便局、航空会社、建設会社などがあり、島の産業に関わる大人がリレーで競い合うという。熱い声援と拍手が送られるなかで、裸足で全速力を出す人もいれば、観客に手を振りながら走る人もいて、なかなか楽しかった。

運動会で素朴な魅力にふれた後はランチへ。南大東島のミックスカルチャーランチといえば、大東そばと大東寿司である。

八丈島など東京の島々では、近海で獲れた魚の刺身を醤油ベースのタレに漬け、甘めのシャリにのせた寿司(東京の島々では島寿司と呼ばれる)を食べる文化があり、それが大東諸島に渡って大東寿司となった。「大東そば いちごいちえ」で大東そばのセットメニューを注文すると、コシのある大東そばとサワラの大東寿司が登場。お盆の上で隣り合う文化をおいしく味わった。

大東そばと大東寿司のセット。大東島産のとうもろこしも島の名産

呆気にとられるほど壮大な港へ

出発まで少しだけ時間があったので、島の北東部にある港に寄ることにした。

海軍棒プールで説明したように大東諸島には砂浜がない。そこでプールも岩を掘ってつくられていたわけだが、さらに大きく、壮大に彫り込まれた場所が日本唯一の岩盤掘り込み式漁港・南大東漁港である。

大東諸島では壮大な大自然に感動する一方、人間が成し遂げたことにもおどろかされる

マグロやソデイカなどの海の幸に恵まれる海域にあるものの、絶壁に囲まれた島には安全に着岸できる漁港がない。ならば……と20数年もの年月と約300億円をかけてつくられたという巨大漁港。壮大すぎるゆえ言葉でも写真でも伝わるまい。

続いて定期船が就航する南大東島西港へ。切り立った岩壁に直接、船をつけることは難しいため、船で大東諸島に来ると名物の「空中ゴンドラ」に乗ることになる。

島には南と北、西に港があってその日の風向きによってどの港に着くかが決まる。西港はその一つで色鮮やかに輝く海に向かって巨大なクレーンが鎮座していた。

この巨大クレーンは工事用のもの。真っ青な海からウミガメが姿を現すこともあるらしい

次は船で来てみたい。クレーンに吊られたゴンドラに乗る気分を味わってみたい。そう思いながら、BEGINが大東諸島を歌った曲『春にゴンドラ』が頭の中でめぐる。

歩いていける場所ならきっと こんな気持ちはわからんはずよ

うなるクレーン車 揺れるゴンドラ アバヨーイ 旅立ちのとき

BEGIN『春にゴンドラ』

この曲で歌われるのは「15の春」で島を離れる子どもたちの姿。歩いていけない絶海の孤島だからこそ感じられる気持ちは、この場所に立ってようやくリアルなものとなる。

空港で荷物を預けた後、琉球エアコミューターのカウンター業務にあたっていたお兄さんたちが午前中の運動会で走っていた人だと気がついた。これも島の日常なのだろう。

運動会では琉球エアコミューターチームとして走っていたお兄さん。おつかれさまです!

そして飛行機に乗り、ふわり島の上空へ。島影を眺め、そこに息づく豊かな文化を思い出しながらセンチメンタルになる。けれど悲しくはない。また来る楽しみがたっぷりあるからだ。

飛行機の窓から。眼下に見えるのがさっきまでいた南大東漁港。やはりスケールが違う

自然なら星野洞にバリバリ岩、文化なら相撲や島唄、他にもたくさんみたい場所がある。南大東島をじっくり満喫するなら最低3泊……いや、気の向くままのスロートラベルなら1週間あっても足りないかもしれない。

また必ず来ると誓い、アバヨーイ!


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離島経済新聞 目次

スロウに旅する沖縄離島

旅程をぎゅっと詰め込まず、気の向くままに心の向く場所へ行き、その土地の風土をたのしむ旅行のスタイル「スロートラベル」。 そんな旅を、国内180島を歩いてきた『ritokei』統括編集長・鯨本あつこが沖縄離島3島で実体験。旅の様子をお届けします。

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