つくろう、島の未来

2024年10月15日 火曜日

つくろう、島の未来

日本の島々は、知る人ぞ知るお魚天国。島々会議では、漁業・水産業に従事する「魚食を支える島の仕事人」にお話を伺います。島々会議009の参加者は、沖永良部島(おきのえらぶじま|鹿児島県)の皆さんです。

漁師の職場は海の上。遠洋漁業ともなれば陸で過ごす時間もほんの束の間です。

沖永良部島ではそんな漁師さんたちが17年前にはじめた「みへでぃろ市」が大盛り上がり。毎月第4日曜日に開催されている島のマルシェは、漁師の皆さんはもちろん農家さんや、島で働く外国人の方、福祉の分野で働く方など、業種・世代・国籍を越えた交流の場となっています。中には、みへでぃろ市の横をうっかり(?)通り過ぎたことがきっかけで島に移住した人も……。

今回は、そんな「みへでぃろ市」に携わる漁師さんにお話を伺います。

人物紹介


漁師・島人ぷらざ代表 関根博和さん
キハダマグロとソデイカを扱う漁師歴38年のベテラン漁師、ただいま漁船を新調中。お父さんや山下さんのお父さんの影響で漁師に。みへでぃろ市の主力参加団体「島人ぷらざ」代表。山下安富さんとはいとこ、趣味はカラオケ。


漁師・みへでぃろ市責任者 山下安富さん
漁師歴38年のベテラン漁師。関根さんと同じく専門はキハダマグロとソデイカ。お父さんが亡くなられた跡を継ぎ、追い込み漁の網元になったことが漁師になるきっかけ。関根博和さんとはいとこ、趣味はビリヤード。


旅する料理人・一般社団法人えらぶ手帖探究マネージャー 後藤健太さん
みへでぃろ市で出会った農家さんの仕事を手伝ったことをきっかけに、2020年12月に沖永良部島へ移住。趣味は、釣り、素潜り、無人島探検。島生活をYouTubeで配信中。
Instagram / YouTube


ライター・ネルソン水嶋
合同会社オトナキ代表。ライターと外国人支援事業の二足のわらじ。鹿児島県・沖永良部島在住。祖母と二人暮らし、帰宅が深夜になると40歳手前なのに叱られる。
Twitter


離島経済新聞社 石原みどり
『ritokei』編集・記事執筆。離島の酒とおいしいもの巡りがライフワーク。著書に奄美群島の黒糖焼酎の本『あまみの甘み 奄美の香り』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)。

【後編】ヤギの匂い!?島の漁師はあーばたが好物

地元の方が楽しんでいらっしゃるおいしい魚の食べ方を教えてほしいです。

釣り人から好かれているものは「すみちゃ」かな。

沖永良部島の方言で「すみちゃ」。カンモンハタのこと。

すみちゃはリーフでも釣れる魚で、唐揚げにするとおいしい。個人的には、「あーばた」の皮目を焼いて刺し身にするのが好き。漁師しか食べない魚で、すごいクセがあるんですよ。

前に、仲買人さんが「ヤギの匂いがする魚」と言ってお客さんに売って怒られてました(笑)。

ヤギの匂い!どんな味がするんだろう、食べてみたいです。

食べない方がいいですよ、1週間は匂いが取れないので(笑)。

追い込み漁をするときに捕れるんだけど、金にならないので漁の時期はあーばたしか食べないですね。漁師が飲む席には必ずあるくらい。

沖永良部島の島酒といえば、全国でも奄美群島だけに製造が許可されている黒糖焼酎がありますよね。皆さん、焼酎はどうやって飲んでますか?

ふだんは水割りです、半々に割って。

今でこそきれいに飲むんですけど、昔はそこらに焼酎瓶があるから生(き)でドバッと入れて回して飲んだり、アルコールさえあればいいって感じでしたね(笑)。

漁協で行われる競りの様子

第4日曜日は沖永良部島へ!

読者に向けたメッセージをいただければ。

僕は島の自然や、まるで友だちや親戚みたいに接してくれる島の人の性格のよさが気に入って住んでいるんですけど、島外の人から「知らない島に住むなんて勇気あるね」と言われるんですね。

でも勇気を振り絞って来た訳ではないし、僕みたいにひょんなことから住むきっかけに巡り会えることもあるので、まずは来てみてほしいですね。

でも、どこでも、「人がいい」って言うじゃない。本人次第だと思うんですよ。健ちゃんの人柄がいいから、周りがそう接してくれるというのはあると思う。

えらぶの人は知らない人に声を掛けるってなかなかない、本人が惹きつけるっていうのはあるのかな。

そういう意味では、健ちゃんはえらぶに呼ばれたようなものだね(笑)。

まさに、本当にそうだと思う。

山下さんはどうですか?

漁師って危ないってイメージがあると思うんですけど、今はそうでもないんですよね。

海に落ちれば確かに危ないですけど、今は天気予報とかレーダーとかいろんな設備があるので、昔みたいに時化て船が沈むような、命に関わる危険はあり得ないと思ってます。

魚とのやりとりで生活ができる楽しい仕事。ぜひ、漁師も仕事のひとつに考えてもらいたいですね。

漁師に興味のある人は山下さんに弟子入りできる?(笑)

そうできるように心がけたいと思います!(笑)

今の時代って、円安も進んで食料品も値上がりして、都会にいるからといって必ずしも住み心地がよい訳ではなくなってくると思ってます。

島は、外から物を入れないといけないけど、農業は盛んだし、漁業もいくらでも伸びしろがあるし、助け合って生きる人間同士のつながりもある。

本土や沖縄へ出るためにある程度経済的な豊かさは必要だけど、島の方が快適に過ごせるのではないかと思ってます。

ありがとうございます。あ!そういえば、島に来るときは第4日曜日で合ってますよね?

沖永良部島に来るなら、毎月第4日曜日「みへでぃろ市」へ!

そうですね、第4日曜日に来てもらえれば島のことが分かります(笑)。

みへでぃろ市関係者のみなさん

みへでぃろ市の場所


この企画は次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。

     

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