つくろう、島の未来

2024年04月19日 金曜日

つくろう、島の未来

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新聞づくりを通して海と島でできた日本を学ぶ学習プログラム『うみやまかわ新聞』の2015年度版が完成。第3回目は弓削島(ゆげじま|愛媛県上島町)の子どもたちによる新聞づくりを紹介します。

小学校高学年向けの総合学習プログラムとして、2014年度からスタートした『うみやまかわ新聞』は、「新聞づくり」を通して海と島でできた日本を学ぶプロジェクト。今年度も全国の小学生が参加し、2月1日に2015年度版が完成した。

新聞づくりを行った離島地域5カ所[利尻島(りしりとう|北海道利尻町)/家島(いえしま|兵庫県姫路市)/弓削島(ゆげじま)・生名島(いきなじま)・佐島(さしま)・岩城島(いわぎじま)・高井神島(たかいかみしま)・魚島(うおしま)など(愛媛県上島町)/対馬島(つしまじま|長崎県対馬市)/津堅島(つけんじま|沖縄県うるま市)]を含む全国12地域の子どもたちが東京に集まり、2月21日に発表会を行った。この連載ではプロジェクトに参加した離島地域を中心に、発表会の様子と実際の記事の内容を全5回にわたって紹介する。

取材を通して、島の未来に想いをはせる

瀬戸内海のほぼ中央に位置する愛媛県上島町では、弓削小学校の6年生18人が新聞づくりに参加した。25の島で構成される上島町は、平成16年に弓削町・生名村・岩城村・魚島村の4町村が合併した町。児童らは、自らが暮らす弓削島以外の有人島にも取材へ出かけ、上島町の島々の話題を盛り込んだ上島町版『うみやまかわ新聞』を完成させた。

発表会の会場にやってきたのは4人。上島町では18人の児童が4班に分かれ、10個の記事を分担して新聞づくりを行ったため、各班の班長が代表で東京に来たと、発表の冒頭に伝えられた。

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上島町版『うみやまかわ新聞』の一番の特徴は、「上島町の未来を考えよう!」というテーマに沿って、取材対象者に共通して「20年後、どんな上島町になっていて欲しいか」という質問を投げかけたことだ。

20年後、12歳の児童たちは32歳の大人になる。具体的に思い描ける未来として「20年後」を設定した背景には、未来を担う児童たちの切実な気持ちが込められている。

そんな想いは取材対象者にも伝わったはず。どの記事にも、未来を見据えて語られる、いきいきした言葉が並ぶ。

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弓削小学校の発表では、10記事中2つの記事の内容が紹介された。

ひとつめは、一面記事「未来に伝えたい 松原の風景」。島の景勝地である松原に自分たちが植樹体験を行ったことについて、「なぜ松原に木を植える活動をしているのか」を、長年保護活動をしてきた方々に取材したそうだ。紙面からは、過去の松原の様子を知り、今ある景色を守ろうという想いを強くしたことが伝わってくる。

もうひとつの記事「魚島のタイ踊る‼ 吉田磯伝説」については、鯛の漁場として知られる魚島の物語を、手製の紙芝居で紹介。最後には、物語にまつわるクイズを出題した。「正解者1人には、私のお父さんがつくった『のり』を差し上げます」のアナウンスで、会場が色めき立つ一幕を演出し、発表会を盛り上げてくれた。

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最後には、新聞づくりを通しての感想をそれぞれが発表。

「新聞づくりを通していろいろなことを体験したから、ひとつも忘れないようにしたい」といい、新聞づくりの過程が楽しかったと口々に発言してくれた。

「小さな町でも、町の人の優しさや温かさがあって、自然が豊か。海や山の特産品もたくさんある。古くからの歴史や文化、自然を守ろうとしている人もいると知って欲しいと思います」という言葉には、すべての記事に通じる島の大人たちの想いが集約されている。

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さて、他の記事も少し紹介。

上島町版『うみやまかわ新聞』は、タイトルの工夫にもひきつけられる。「おいしい!さいこう!弓削ののり!」は、児童が父親に取材した記事。本文からは父への尊敬が伝わってきて、シンプルで力強いこのタイトルにも納得。「知ってほしい!岩城島の○○レモン」は、○○の答えが知りたくて読み進めずにはいられない。

発表会も無事終わり、弓削小学校で行われた最後の授業でのアンケートには、「思った以上に大変だったけど、来年の6年生にもこの素晴らしい体験をして欲しい!」との答えも。上島町の未来を担う子どもたちの想いは、しっかりと受け継がれていきそうだ。

[#04 対馬島(長崎県)編へ続く]

【関連サイト】
うみやまかわ新聞公式ホームページ
※実際の紙面に掲載された記事はこちらから読むことができます。

離島経済新聞 目次

島と海でできた日本を学ぶ 『うみやまかわ新聞』プロジェクト

『うみやまかわ新聞』は小学校高学年向けの教育プログラムとして、「地域への愛着の醸成」「同年代児童とのコミュニケーション機会の提供」「情報の基本知識(メディアリテラシー)」などを目的に小学校の総合的な学習の時間や地域活動の一環として導入しています。2016年度は7つの離島地域を含む全国14地域の児童が「うみやまかわ新聞」を制作しました。


<2016年度参加離島地域>

利尻島(北海道利尻町)/沖島(滋賀県近江八幡市)/弓削島・生名島・佐島・岩城島・高井神島・魚島など(愛媛県上島町)/対馬島(長崎県対馬市)/口永良部島(鹿児島県屋久島町)/沖永良部島(鹿児島県和泊町)/津堅島(沖縄県うるま市)


<プログラム概要>

このプログラムでは1年間に20コマ(1コマ×45分)ほどを使い「メディアリテラシー」「地域情報のリサーチ」「取材」「原稿制作」「校正」などを学びながら、自らが暮らす地域を紹介する新聞を制作。離島経済新聞社が講師を担当し、学校の先生や地域コーディネーター(※1)と連携して授業を行います。

毎回の授業は「テレビ電話システム」も活用。関東や沖縄など各地にいる講師陣と小学校とを接続して実施。テレビ電話を使うことで、遠く離れた地域ともリアルタイムな授業ができ、参加地域同士を接続した交流授業も行います。

新聞完成後には、東京スカイツリーで「2016年度うみやまかわ新聞完成発表会」を開催。各地域の代表児童が東京に集まり、地域のことや制作した新聞について発表しました。

※1 地域コーディネーター……授業のファシリテーションやICT機材の接続など、小学校と離島経済新聞社をつなぐ役割として、実施地域に詳しい方や地域で活動している方にお願いしています。

詳細は『うみやまかわ新聞』公式サイトをご覧ください
http://umiyamakawashinbun.net/

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