瀬戸内の海に囲まれ、豊かな自然を有する愛媛県高井神島。この島を舞台に、町内の交流やアート活動などを目的とする「かわうそキャンプ」が開催されている。主催の藤巻さんに話を聞いた。
■人口30人の高井神島で行われている「かわうそキャンプ」
上島町は弓削島、生名島、岩城島、佐島などが属する上島諸島、高井神島、魚島が属する魚島群島など、有人島無人島合わせて25の島からなる人口7,405人の自治体。今年で4年目を迎える「かわうそキャンプ」は、弓削島で農園を営む藤巻光加さんが、地域おこし協力隊員として赴任した2012年より、上島町の児童を対象に、同町内の高井神島で行っている交流プロジェクトだ。
高井神島は弓削島から船で約30分。面積1.34平方キロメートルの小さな島に、30人(2015.6末現在)が暮らしている。島の大部分は山がちで、比較的傾斜のゆるやかな島の北東部に集落を形成している。
上島諸島と地理的に離れている魚島群島。とりわけ高井神島は人口が少なく、高齢化率は70%と、島内に子どもはひとりもいない。キャンプをはじめた背景について藤巻さんは「上島町のこれからを担う子どもたちが、高井神島へ行く機会はほとんどなく、同じ町内にもかかわらず、近くて遠い存在だった。また、子どもたちがアートに関わる機会も少ないと感じていた」と話す。
かわうそキャンプの舞台は、1909年に開校し、2008年から休校となっている高井神小中学校。島に講師役のアーティストを招き、子どもたちがアートに触れながら、高井神島住民との交流も楽しめるよう、藤巻さんが企画した。
これまで開催された3回のキャンプでは、延べ80人以上の子どもたちが参加。第1回目には島内に設置する椅子の制作やモビール(飾り)を製作。第2回目には集落を囲むように設置された、イノシシ除けの柵を飾り付けた。作品づくりのほかは、島の夕食会など、にぎやかな時間を過ごす。「ものづくりや絵を描くことが好きな子にはぴったりの企画だと思います。みんな、時を忘れて熱中しています」(藤巻さん)。
一方、高井神島の住民にとっても、島に子どもたちとの交流は楽しみとなっているという。藤巻さんは「最初はあまり受け入れてもらえなかった。毎年島に来て学校の草刈りや掃除を行っているうちに、多くの住民の方から応援してもらえるようになったと感じる」と振り返る。
キャンプ当日は講師となるアーティストや保護者のほか、地元高校の生徒もスタッフとして参加する。「毎年かわうそキャンプに参加してくれる小学生がスタッフの高校生と仲良くなって、『自分も高校生になったらスタッフをやりたい』と言うのを聞いたときはすごく嬉しかったです」(藤巻さん)。
昨年までは、地域おこし協力隊が主催する町のプロジェクトとしてキャンプを行っていた。昨年10月に協力隊の任期を終え、現在は町内で農園を営んでいる藤巻さん。4年目となる今年は日本離島センターの助成事業として「かわうそキャンププロジェクト」を行う。
また、今年から始まる新たな取り組みとして、町内の県立弓削高等学校、国立弓削商船高等学校の学生を対象とした高井神島の魅力の発掘、発信活動も行う。「学生たちには、実際に高井神島にも足を運んでもらい、地域の産品を使った商品を作ってもらう予定です。夏祭りなどの地域の行事、土産物店などで商品の販売やPRも行っていきます」(藤巻さん)。
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