つくろう、島の未来

2024年12月03日 火曜日

つくろう、島の未来

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新聞づくりを通して海と島でできた日本を学ぶ学習プログラム『うみやまかわ新聞』の2015年度版が完成。第2回目は家島(いえしま|兵庫県姫路市)の子どもたちによる新聞づくりを紹介します。

小学校高学年向けの総合学習プログラムとして、2014年度からスタートした『うみやまかわ新聞』は、「新聞づくり」を通して海と島でできた日本を学ぶプロジェクト。今年度も全国の小学生が参加し、2月1日に2015年度版が完成した。

新聞づくりを行った離島地域5カ所[利尻島(りしりとう|北海道利尻町)/家島(いえしま|兵庫県姫路市)/弓削島(ゆげじま)・生名島(いきなじま)・佐島(さしま)・岩城島(いわぎじま)・高井神島(たかいかみしま)・魚島(うおしま)など(愛媛県上島町)/対馬島(つしまじま|長崎県対馬市)/津堅島(つけんじま|沖縄県うるま市)]を含む全国12地域の子どもたちが東京に集まり、2月21日に発表会を行った。この連載ではプロジェクトに参加した離島地域を中心に、発表会の様子と実際の記事の内容を全5回にわたって紹介する。

暮らしを見つめて、島の文化を再発見する

兵庫県から新聞づくりに参加したのは家島の子どもたち。姫路市立家島小学校5年生の16名が、主に総合学習の時間を利用して「うみやまかわ新聞」を完成させた。発表会には代表の4名が上京し、全12地域のなかで最後の発表をつとめた。

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発表会当日は、実際の授業でも使用したインターネット接続のテレビ会議システムを使用して、4地域[東京都江戸川区/家島(兵庫県姫路市)/高知県佐川町/対馬島(長崎県対馬市)]と接続。会場に来られなかった児童が、教室から発表の様子を見守った。

家島小学校の児童12名も、テレビ越しに各地域の発表を視聴。家島小学校の発表直前には、教室から「心はひとつ」と書かれた横断幕を持って、元気に声を合わせた「がんばれ」の応援メッセージが届けられた。

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緊張の面持ちでステージにあがった4名の顔も少しほころんだところで、「みなさんこんにちは」と、元気な声で発表が始まった。

大小44島からなる家島諸島には、4つの有人島があり、なかでも中心部に位置するのが家島だ。姫路駅からバスと船を乗り継いで1時間半ほどで来られる利便性から、神戸や大阪から日帰りでマリンスポーツを楽しむ人も多いという。

島の概要を紹介したところで、新聞づくりを振り返る。

家島小学校ではまず、どんなことを全国の人に紹介したいかを話し合った。すると、みんなから挙がる事柄が暮らしにまつわることが多いと気づき、テーマが「家島の暮らしを支える文化」に決定したという。

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確かに新聞を読んでみれば、島での暮らしが多岐にわたる文化に支えられているのだと気づかされる。

バリエーション豊かな記事の中で一面を飾るのは、「家島に代々伝わる祭」。2600年以上の歴史を持つ家島神社の祭りを紹介している。獅子舞を守る2つの保存会の、獅子舞衣装とだんじり船を、図解して比較しているのが興味深い。

暮らしを支えるうえでなくてはならない産業について書かれた「山がけずられる島」も、メイン記事のひとつだ。家島小学校の保護者の実に55パーセントが、主産業である砕石に携わっているというデータに驚く。発表会では「砕石した石はみなさんの身近で使われています。何か分かりますか」と会場に向かって問いかけ、全国の工事現場や線路の砂利として活用されていることが伝えられた。島と島外の世界との接点に気づくのも、「うみやまかわ新聞」ならではの学びだ。

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さて、ほかにも「日本一長い!海底送水管」、「かめの神様『どんがめっさん』」、特産品や豊かな播磨灘の魚介類を紹介する記事など見どころはたくさん。

どの記事も丁寧な取材背景が透けて見えるものばかりで、「地域の人がなんでも丁寧に教えてくれました。いつも見守ってくれている人の存在に気づかされて、僕も島の人を大切にしようと思いました」という発表を締めくくる言葉に、取材相手との間に良い関係を築けたことも伝わってきた。

いつも当たり前に感じている父親の仕事や、近所の人との会話、新聞をつくる目的を介して向き合った当たり前が、実は尊いものなのだと子どもたちはしっかり体感したようだ。

[#03 上島町(愛媛県)編へ続く]


【関連サイト】
うみやまかわ新聞公式ホームページ
※実際の紙面に掲載された記事はこちらから読むことができます。

     

離島経済新聞 目次

島と海でできた日本を学ぶ 『うみやまかわ新聞』プロジェクト

『うみやまかわ新聞』は小学校高学年向けの教育プログラムとして、「地域への愛着の醸成」「同年代児童とのコミュニケーション機会の提供」「情報の基本知識(メディアリテラシー)」などを目的に小学校の総合的な学習の時間や地域活動の一環として導入しています。2016年度は7つの離島地域を含む全国14地域の児童が「うみやまかわ新聞」を制作しました。


<2016年度参加離島地域>

利尻島(北海道利尻町)/沖島(滋賀県近江八幡市)/弓削島・生名島・佐島・岩城島・高井神島・魚島など(愛媛県上島町)/対馬島(長崎県対馬市)/口永良部島(鹿児島県屋久島町)/沖永良部島(鹿児島県和泊町)/津堅島(沖縄県うるま市)


<プログラム概要>

このプログラムでは1年間に20コマ(1コマ×45分)ほどを使い「メディアリテラシー」「地域情報のリサーチ」「取材」「原稿制作」「校正」などを学びながら、自らが暮らす地域を紹介する新聞を制作。離島経済新聞社が講師を担当し、学校の先生や地域コーディネーター(※1)と連携して授業を行います。

毎回の授業は「テレビ電話システム」も活用。関東や沖縄など各地にいる講師陣と小学校とを接続して実施。テレビ電話を使うことで、遠く離れた地域ともリアルタイムな授業ができ、参加地域同士を接続した交流授業も行います。

新聞完成後には、東京スカイツリーで「2016年度うみやまかわ新聞完成発表会」を開催。各地域の代表児童が東京に集まり、地域のことや制作した新聞について発表しました。

※1 地域コーディネーター……授業のファシリテーションやICT機材の接続など、小学校と離島経済新聞社をつなぐ役割として、実施地域に詳しい方や地域で活動している方にお願いしています。

詳細は『うみやまかわ新聞』公式サイトをご覧ください
http://umiyamakawashinbun.net/

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