つくろう、島の未来

2020年10月29日 木曜日

離島振興策をめぐる法整備の「原点」で、最も歴史が古く、最も多くの島を対象としている「離島振興法」(1953年~)。「時限立法」として10年おきに改正・更新されてきたが、近年はハード面からソフト面重視への転換姿勢を鮮明に打ち出していることから、抜本改正とも評される。2012年に改正された現行の離島振興法についてまとめた。

(取材・文 竹内章)

離島振興法対象の1島。約120人が暮らすトカラ列島の宝島(たからじま|鹿児島県十島村)

ソフト施策重視にシフト。大幅改正となった現行の離島振興法

「国土の均衡ある発展」を目指した地域振興法のひとつで、1953年に制定された離島振興法。法律の有効期限をあらかじめ設定する「時限立法」として、10年ごとに改正を重ねてきた。

現行の離島振興法は2012年に改正されたものだが、ソフト面に関する政策を重視する姿勢を前面に打ち出すなど内容に大きな変更がみられたことから、関係者からは抜本改正との評価を得ている。

現行法に改正されるまでの離島振興法と比べ大きく異なる点としては、以下の項目が挙げられる。

・目的規定に、無人島増と人口の大幅減の防止、定住促進を追記
・ソフト施策の大幅な拡充
・離島活性化交付金等事業計画の創設

続いて、これらの項目を確認していく。

島の将来だけでなく、国の安全保障も視野に入れた目的規定

現行の離島振興法では、目的規定(※)に「居住する者のない離島の増加及び離島における人口の著しい減少の防止」「定住の促進」との文言が新たに盛り込まれた。

※法律の制定目的を簡潔に表現した条文

背景には、無人化により島の貴重な歴史や文化が失われることを危惧する考えもあるが、海洋を挟んだ近隣諸国と近接している排他的経済水域(EEZ)や海洋資源を守るうえで、有人離島が担っている役割をより重視しよう、という意図も感じられる。

離島振興策は、存在そのものが無人化の防止と定住促進につながっているともいえるが、目的規定の条項に明記することで、法が目指す方向性を強く示す意味合いがある。

基本方針等でソフト面の充実を明確化

目的規定同様、ソフト面の強化を目的に、法の基本方針や基本的施策も大幅に変更・拡充された。

基本方針や基本的施策に、就業や介護、自然環境、エネルギー、人材に関する項目が新たに設けられたほか、ヒト・モノの移動費の低廉化や妊産婦の出産・通院支援、就学支援、防災・地震対策なども明記された。

これを受け、例えば、高校がない島の高校生が島外へ通学する場合の交通費や寄宿費を支援する規定や、産科のない島の妊婦が出産や検診のために要する通院費や入院費について支援する規定などが設けられた。

離島振興法は設立当初、島のハード面の整備に重点を置いていたが、一定水準までハードが整備されたことを受け、ソフト施策の重視に大きく舵を切る形となった。

ソフト事業に幅広く活用できる「離島活性化交付金」制度

離島振興法でソフト関連施策を推進させるためのスキームの一つが、島の活性化と定住促進を目的に、国が直接補助を行う「離島活性化交付金」制度だ。ソフト事業の着実な推進を後押しするため設けられた。

事業対象は、大きく分類すると「定住促進」「交流促進」「安心安全向上」。事業主体は、都道県や市町村といった地方自治体や民間団体となっている。

活用事例としては、島の空き家を改修しUIターン者の受け入れ体制強化を図った鹿児島県十島村・中之島(なかのしま)、宝島(たからじま)の定住促進事業や、プレミアム付き商品券をツールに島の魅力をPRした長崎県壱岐市・壱岐島(いきのしま)の交流人口拡大事業などがあり、全国で様々な取り組みが展開されている。

時代に即した形で60年以上、改正を繰り返してきた離島振興法は、2022年に次の改正を迎える。

有人離島をめぐる環境や政治的な位置付けが大きく変化し、求められているものも多様化するなか、今後再び改正・更新されることになれば、さらにきめ細やかな対応が求められそうだ。

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