つくろう、島の未来

2020年10月20日 火曜日

離島などの過疎地域を舞台に、安定した雇用環境創出を目的として2020年6月に施行された「特定地域づくり事業推進法」。

前回(島への移住・定住を後押し。新たな雇用環境を創出する特定地域づくり事業協同組合制度とは(1) 【島×制度・法律】)は、地域の事業者らが設立する組合組織が移住者らを雇用し、複数の事業者へ「働き手」として派遣する制度概要を説明したが、今回は組合の設立方法や運営に関する注意点など、実務面にもクローズアップしつつ制度内容を深堀りする。

(取材・文 竹内章)

対象地域は「過疎法」に基づく過疎地域など

特定地域づくり事業推進法(以下、推進法)に基づき組合を設置できる地域には「地域社会の維持が著しく困難となるおそれが生じる程度にまで人口が急激に減少した状況」との規定がある。

具体的には「過疎地域自立促進特別措置法」(過疎法)に基づく「過疎地域」と、この地域と同程度の人口減少が生じている地域、と定められている。

過疎法に基づく「過疎地域」の要件は、長期・中期の人口減少率や地域の財政力など、複数の指標をベースとして決められる。

そもそも制度を活用できるのか? まずは、出発点に立てるかどうかのカギを握る、「要件」を確認することから始める必要がある。

一方、過疎法の基準を満たす市町村と、満たさない市町村を組み合わせた単位で組合を設立することも法令上、可能となっている。ただ、要件となる人口減少率などの指標は、組み合わせた地区全体の数字をもって基準に合致するかどうかで判断される。




特定地域づくり事業協同組合の認定イメージ(総務省自治行政局地域力創造グループ・地域自立応援課地域振興室作成資料「人口急減地域における特定地域づくり事業の推進について」から抜粋

組合設立には発起人が4人以上必要

推進法により設置することができる組合は「中小企業等協同組合法」に基づく事業協同組合となる。

設立には「4人以上の発起人が必要」だが、この発起人は、ただ発起人に名を連ねるだけでなく、組合設立後、組合員になることが必須条件となっている。認定手続きは、組合の申請に基づき都道府県知事が行い、10年毎の更新制となる。

また、推進法における雇用事業は、労働者派遣法に基づく労働者派遣事業と同じく、組合が地区内の事業所に人材を「派遣」する形となる。元来、こうした労働者派遣事業を行うためには厚生労働大臣に対し、申請書を提出し、その許可を受ける必要があるが、同法では特例として、都道府県への届出のみでの実施が認められている。

組合員となる事業者は法人、個人を問わない

組合員は地域の「小規模の事業者(※)」が担うことになるが、この事業者とは「法人、個人を問わず事業を行っている者」が対象。個人経営の農家なども組合員になれるほか、市町村が出資している事業者、例えば第三セクターなども組合員になることができる。

※原則として資本金又は出資金が3億(小売業又はサービス業は5千万円、卸売業は1億円)を、又は従業員数が300人(小売業は50人、卸売業又はサービス業は100人)を超えない事業者(法第8条より)

ただし、市町村や法人格を持たない任意の組織、団体、グループなどは組合員にはなれないので注意が必要だ。

組合の地区外に本社・本店がある事業者も、地区内に拠点があれば組合員になることができるので、場合によっては、都市部に本社を構える大手資本などの参画も十分考えられる。

組合の地区エリアは一つの都道府県内であれば柔軟に設定可能

組合の地区エリアは、市町村単位をはじめ、「平成の大合併」前の旧市町村単位、複数の市町村や旧市町村の区域を組み合わせた単位など、一つの都道府県区域内であれば、柔軟に設定することができる。

ただし、先に説明したように法が定める「過疎地域」であることをはじめ、設定した地域が経済や自然環境などの面で一体となっているほか、地域づくりの人材確保に関して「特に支援を行うことが必要な地区」であることも求められている。

地区が重複する複数の組合を設立することも法令上は可能だが、なぜ複数設立する必要があるのか? という必要性や合理性を組合設立時に十分説明することが求められるようだ。

円滑な運営には他団体との連携が重要

組合の安定運用を図るため、国は、事業計画を具体化し円滑な組合立ち上げにつなげられるよう、地元市町村や都道府県などの行政機関をはじめ、労働局、中小企業組合の発展などを目的とする「中小企業団体中央会」などとも綿密に連携し、相談や調整を行うよう組合に求めている。

人材面においても、組合が雇用し派遣する移住者などの人材だけにとどまらず、派遣先事業所との調整やバックオフィスを担う事務局員の確保も事前に見通しを立てておく必要がある。

島の一体感醸成に寄与も

平成の大合併により島でも市町村合併が加速したが、歴史や文化、商業などの面でもいまだに旧市町村単位がベースとなっていて、ある程度の規模がある島では一体感がはぐくまれていない自治体もある。

旧市町村単位など、ある程度区域を柔軟に設定できる組合エリアは、地域間の交流促進や一体感醸成にも寄与する可能性があり、その点で島に思わぬメリットや化学反応をもたらすきっかけになるかもしれない。

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