つくろう、島の未来

2021年04月17日 土曜日

山口県周防大島出身の民俗学者 宮本常一氏の著書に導かれて、2013年2月より瀬戸内海の島、屋代島で周防大島町地域おこし協力隊として活動を始めた、島記者 三浦の島歩きコラム。

浮島のいわし網

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[宮本常一撮影(昭和39年10月) / 周防大島文化交流センター所蔵]

周防大島町におけるイワシの水揚げ量は山口県全体の約4割、加工品のイリコに関しては出荷量の87.4%を占めています。そんな周防大島の中でもイリコといったら、離島の浮島が有名です。浮島にはイワシ網漁を営む船が5つあるのですが、その中のひとつ共栄丸さんに乗せていただけることになりました。

7月某日 朝6時過ぎ、共栄丸の平野さんからのメールを着信「8時の定期で来る?」といっ内容。件の山本さんが船長を務める日良居丸に乗って浮島へ向かいます。指定された場所で待つこと30分ほど、再び平野さんからの着信「今、波止に船着けるから、気を付けて飛び乗って」。

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イワシ網漁は4隻の船で行われます。イワシのいる場所を探す船が1隻、網を引く船が2隻ペアでいて、もう1隻の船が獲ったイワシを運搬します。まず最初に乗せていただいたのが運搬を担当する平野さんの船。

「朝一番の網が調子良かったから三浦君呼んだんだけど、その後2回全然ダメよ。せっかく来てもらったのに、獲れんかったら、ごめんな」

これまでメールのやりとりしかしてなかったので、おっかない人だったらどうしよう…なんて思ってたんですが、みんながカズ兄と慕う優しい兄貴といった雰囲気の平野さん。向かう先はもちろん他の船が待つ漁場です。

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「あっちの船とちょっと間空いてるけど、気を付けて飛び乗って」

この日2回目のジャンプ。2隻に別れて引いていた網にイワシが充分に入ったことを知らせる無線が入ると、2隻の船がまるで1隻の船になるように合体します。ここで反対側の船に乗る人たちにもご挨拶。海の上で知り合いが増えていきます。

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「ありゃ、もうすぐ死んでいなくなるけ、写真撮っちょけ(笑)」言われるがままシャッターを切るのもどうかと思いますが、一応。

そんな悪口みたいな冗談が言いあえるのも、この網に関わる約20人全員が「みんな、だいたい親戚」という間柄だからでしょうか。過疎に悩む島ではあるけれども、都会では珍しくなった非核家族がこの島にはあります。周防大島で四世代同居はよく聞く話です。

いよいよイワシの入った網を巻き上げる作業。ボタンひとつで網が巻き上がって、大きなクスダマみたいなものがパカッと割れて、イケスに向かって大量のイワシがダダーッと落ちるようなオートマチックな世界を想像していましたが、実際はかなり手作業です。大型のクレーンが手伝ってはくれますが、網を上げるために4人がかりでロープを掛け替え掛け替え十数回の重労働。

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最後は機械の力も借りずに、大人6人が人力だけで網を引っ張ります。
網からイケスにイワシを移すのも人の手。引き上げた巨大な網の中に、運搬係の平野さんが自分の体より大きな網を突っ込んでイワシをすくいます。この回の網は運搬船が沈むんじゃないかと心配になるほどの大漁。

午前10時の終漁までにもう1回戦。平野さんは加工場へイワシを運び、合体して1隻になっていた2隻の船は再び分離して網を海の中に流していきます。10時に漁を終えるのは浮島の漁師さん同士の取り決めで、1~5番まで番号を付けられた漁場を輪番制の日替わりで使うのも、みんなが不公平なく、この海で末永く漁を続けていくための知恵なのでしょう。

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今回の漁で知り合った茶髪の漁師カズシ(17歳)。不躾に「高校は?」と聞いてみると「落ちました。僕、結構有名だったんですよ、悪い意味ですけど(笑)」高校に行ってても、行ってなくても、将来の夢は漁師。

「日本一の漁師になります。僕、負けず嫌いなんで」

ケンカばかりだった中学時代のエピソードとともに語られたその夢には、妙な説得力がある。中学卒業してすぐに将来像がカチッとしてる。自分探しの旅なんて必要ない。高校、大学、十数年の社会人生活を経てこの島にたどり着いた自分の人生の遠回りを無意味に振り返ってしまったよ。海は広いな大きいな。


〈浮島データ〉

面積:2.30k㎡/外周:6.80km/人口:234人(101世帯)/高齢者比率:41.45%
※平成25年4月1日現在

〈周防大島~浮島 町営渡船〉

大人320円/小児160円

便 樽見発 楽ノ江 江ノ浦 日前着 日前発 江ノ浦 楽ノ江 樽見着
1 7:10 7:18 7:26 7:40 8:00 8:14 8:22 8:30
2 10:00 10:08 10:16 10:30 11:30 11:44 11:52 12:00
3 15:00 15:08 15:16 15:30 16:50 17:04 17:12 17:20
4 17:25 17:33 17:41 17:55 18:00 18:14 18:22 18:30

問い合わせ先:周防大島町役場

離島経済新聞 目次

【連載】周防大島、宮本常一の島をあるく

山口県周防大島出身の民俗学者 宮本常一氏の著書に導かれて、2013年2月より瀬戸内海の島、屋代島で周防大島町地域おこし協力隊として活動を始めた、島記者 三浦の島歩きコラム。

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