スマホやパソコンなど誰でも簡単に使えるインターネットが身近になった今、ICTという「情報と通信の技術」があることで、島の暮らしがどのように変わるのか? ICTをフル活用しながら奄美大島と本土の2拠点生活を行う、勝眞一郎教授の連載コラムです。
ネット通販は島の調達能力をアップした
前回は、島の商店のお話しを書きました。みなさんの反響がよかったので、今回も買い物つながりの「ネット通販」がテーマです。ネット通販は、今や島の生活の一部となりました。
ネット通販は、大きく分けると、通販会社、ネット上の通販サイト、そして品物を届ける物流の3つの組み合わせで構成されています。
これまでのカタログなどの紙媒体による通信販売と違って、インターネットを使ったネット通販は島の暮らしを大きく変えました。まずは、商品に対する知識です。これまでは島では限られた商品の情報しかなかったものが、メーカーの商品情報、ユーザーのレビュー、価格比較などメーカーの人よりも詳しい情報を入手できるようになりました。
そして、何と言っても選択肢の増加です。離島地域への出荷を可能としているショップであれば、全世界のネットショップから商品を購入できるようになりました。まさに島はICTにより都市部と変わらない買い物環境になったのです。ネット通販が島の調達能力をアップしたと言えるでしょう。
しかし、いくらインターネットが発達しても、これまでと同じく島が抱える課題は残ります。
それはずばり「輸送費」です。みなさんご承知の通り、離島地域に届く商品は、本土側の流通拠点を出発して、港で商品をトラックから船(あるいは飛行機)に積み替え、目的地の島で降ろされ、さらにトラックに積み込まれ輸送されてくるため、本土内で届けられる商品以上に、高いコストがかかります。
とはいえ、購入者の立場からすれば、商品価格は同じなのに、本土分の輸送費に加えて離島分の輸送費が上乗せされてしまうと、経済的に厳しいのも事実。そこで、島の人ならまず行なうのが、ネットショップで「送料無料」を検索することなのです。
島のネット通販5大あるある
島ならではのネット通販あるあるを5つにまとめてみました。まず1つ目は、先ほどの「送料無料」の文字の下に「沖縄・離島を除く」の文字がないか確認することです。500円のものを買って、送料1,000円なんてことはよくあること。島の人は、送料無料でも決して油断しません。「別途送料」は怖いです。
2つ目は、「離島にはお届けできません」の表記です。お、いいなと思っても、注意書きに「お住まいの住所には、お届けできません。」や「離島にはお届けできません。」の文字を見るとガッカリします。
3つ目のあるあるは、ネット通販のひとつ、ネットスーパーの利用です。水やビールなど重いものを沢山安く買いたいならネットスーパーがお得です。自宅の玄関まで運んでくれます。高齢者や子育て中の方にも好評なサービスです。スーパー側も新たに店舗を立地することなく、過疎地域の顧客、今後増加する高齢者、そして子育て世代を顧客層として抱え込みができるので、戦略的に強化していきたい販売ルートとして考えています。ここでもネットスーパーの配送地域に含まれているかどうかが注意点です。
4つ目は、港の風景です。港に降ろされたコンテナを開くと「あの」ネットショップの段ボールがずらりと見えます。通販業者のロゴが入っていない箱は、通販かどうかわかりませんが、2大通販会社の箱は、どこの島でも目立ちます。改めて島の生活への通販の浸透を感じる光景です。
そして、最後のあるあるは、宅配業者の方との距離感の近さです。配達エリアは広いですが、担当者も決まっていますし、島だと何らかしらのつながりがあるので、融通がききます。「今日は、ここの集落にいるから、そこで受け取るね」とか、「今、どこにいるの?車で受けとりに行くから待ち合わせしよう」とかが可能です。(全部の島がこうではないと思うけど)どんな山奥でも荷物がある限り届けてくれる宅配屋さんは、本当にありがたい存在です。
ネット通販はICTの活用で今後とも成長が期待される分野です。賢く使って島での生活を豊かにしていきましょう。