人の営みが変化するにつれ、それぞれの地域で受け継がれてきた文化は形を変え、姿を消すものもあります。ここではリトケイ読者が想う「なくしたくない島文化」を紹介します。
※この記事は『季刊ritokei』36号』(2021年11月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
渡嘉敷島(とかしきじま|沖縄県)の大綱引き
旧暦6月25日に行われる大綱引きは、自然・暮らし・信仰(沖縄らしい多神・先祖を大切にする信仰)が途切れなく過去から現在まで繋がっていることを表すもの。行事はその年に収穫された米の稲藁を用いて、当日の朝集落を東西に二分して綱づくりから行われる。
五穀豊穣や豊漁、無病息災などさまざまな願いのこもった大切な行事であり、朝からの準備は世代を超えてゆんたく(※)しながらのんびりとスタートするが、大綱ができあがるにつれて意気があがっていき、旗頭の舞(※)や奉納と綱引きに向け活気がどんどん盛り上がっていく。
※ 沖縄地方の方言で「おしゃべり」を意味する
※ 沖縄地域で地域のシンボルとして伝統行事で掲げられる大型ののぼり旗
勝敗が決まった後は東西混じって酒宴。翌日は綱を持ち帰り、次年の肥やしとするところに、この行事が島民の生活とともに終わりなくつながっていることを感じる。(sunnyさん)
五島列島(ごとうれっとう|長崎県)の潜伏キリシタン時代からの文化
潜伏キリシタン(※)が迫害のなかで守ってきた信仰を今でも受け継ぎ、継承している日常の営み。信仰を守ってきた姿が力強く、美しい。そんな場所や人が日本に存在することを知ってほしい。
※ 江戸幕府の禁教令によりキリスト教が弾圧されるなか、密かに組織をつくり信仰を守り伝えた人々
どんなに人数が少なくなっても近隣と統合せず、自分たちの教会・共同体として維持しようとしていて、ご高齢の方からも、自分の教会・共同体を守るという思いが感じられる。(M.K.さん)
屋久島(やくしま|鹿児島県)の祝い申そう
お正月行事の一つで、子どもたちが1番楽しみにしている年中行事だから。1月7日の夜に集落の子どもたちが集まり「福の神」となり、集落のすべての家をまわって福を届ける。
各家の玄関先で歌う歌は集落ごとに歌詞が異なり、船頭の家など職業によって歌詞が異なる集落もある。家の人たちは歌のお礼にお年玉やお菓子などを手渡す。(はるかさん)
答志島(とうしじま|三重県)の寝屋子
中学を卒業した男子(寝屋子)が血縁関係のない家庭(寝屋)で寝泊まりをする漁師町のしきたり。お世話をしてくれる大人(寝屋親)と寝屋子は一生ものの絆でつながる。
核家族は当たり前で近所の人との交流もない家庭がたくさんある現代に、こんなに豊かな文化はないのでいつまでも続いて欲しい。(トバさん)
瀬戸内海の島々にある島四国遍路
4月の第3土曜日から月曜日の3日間で、四国88カ所を模して作られた島の中の88カ所をめぐる行事。
200年以上守られてきた伝統で、島の人がその日のために札所を掃除し、お接待(※)を用意しお遍路さんをもてなす様子がとても暖かい。その日以外も札所の掃除やお供えなどをしていて、生活に根付いている感じがする。(こりおり舎さん)
※ 地域住民が軽食や飲み物を用意して巡礼者を迎えもてなす風習
与那国島(よなぐにじま|沖縄県)の与那国語
沖縄県の与那国島で話されている言語。話者数は推定400人ほどで、ユネスコの消滅危機言語にも指定されている(※)。
※ 消滅の危機があるとしてユネスコが認定する言語。日本国内ではアイヌ、八丈、奄美、国頭、沖縄、宮古、八重山、与那国の8言語・方言が定められる
近い将来、話者がいなくなってしまう可能性が非常に高く、今しか聞くことができないかもしれない貴重な島の文化だから。言語復興の活動なども積極的に行われているので、なんとかずっと残り続けて欲しいと思う。(moeさん)