第二次世界大戦以降、人類が直面する最大の災禍とも呼ばれている新型コロナ。島に暮らしながら、島を想いながら、ポストコロナ時代を考えるヒントに、各界の知識人が叡智を寄せる一冊をオススメしたい。
※この記事は『季刊ritokei』33号(2020年11月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
次にやってくる社会は、今までとは違ったものにならざるを得ないだろうーー。『コロナ後の世界を生きる』の編者・村上陽一郎氏は、新型コロナウイルス感染症という災禍を機に起きる社会の変容を、そう表現する。
同著には24人の論者が、コロナ後の世界を生き抜くための指針となる提言を寄せている。離島地域やへき地の暮らしに詳しい、沖縄県立中部病院の高山義浩医師や『里山資本主義』で知られる藻谷浩介氏も寄稿。島に暮らす人々にとって参考になる意見も多い。
論者の多くは、感染症の現状や収束だけでなく、コロナ禍をきっかけに世界中で浮かび上がっている社会のひずみに注目している。
その一人、早稲田大学で国際社会を研究する最上敏樹教授は、感染症の発生という危機的状態により「ふだんは意識されない現実」が浮かび上がったという。曰く、「浮かび上がってくるものの多くは、われわれの社会(国内・国際)に足りなかったもの、その歪み、異様さ、脆弱さなどである」。
その一例に挙げられるのは、経済社会で求められてきた「グローバル化」だ。最上教授はグローバル化の利点も一部に認めるが、国や企業間で加熱する競争は「個別国家では規制しきれない巨大経済活動とそれに比例した巨大環境破壊をも伴ってきた」と警告する。
広大な海に取り囲まれる孤島であれば、グローバル化を物理的に遮断することも不可能ではないが、現代的な生活を送るにはインターネットや流通、交通は欠かせず、すべてを遮断することは難しい。島をとりまく多様な価値観に触れるうちに、いつの間にかグローバル化の激流に巻き込まれてしまうこともあるだろう。
最上教授は、グローバル化の行く末を「控えめにいっても経済的安寧ではない」と切り捨て、「経済であれ領土であれ軍事的支配であれ、無限に拡大することなどできない」と断言。コロナ禍を「際限なき自己拡大と、そのための抑制なき自由競争を、ともに見直す好機でもある」と説く。
ならば、来るべき世界の理想とは一体どのようなものだろうか。「それは他者と共に生き残ることを本気で構想する、《利他的生き残り》の哲学に立ったものでなければならない」(最上教授)。自らが生きるポストコロナ社会をより良くしていくヒントに、多様な意見を参考にしたい。