つくろう、島の未来

2022年05月22日 日曜日

つくろう、島の未来

【離島マンガ「南国トムソーヤ」うめ先生鼎談】離島マンガ『南国トムソーヤ』、作者の「うめ」先生お二人との鼎談2回目です。
マンガの舞台、「羽照那島(はてなじま)」のモデルは、八重山諸島の日本最南端の島、波照間島。人口500人規模の小さな島を舞台にしたからこそ、描けるものとは…?

小学校が舞台だからこそ見える、島の世界

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左:小沢高広(うめ)中央:妹尾朝子(うめ)右:鯨本あつこ (聞き手=小野)

鯨本:マンガの舞台である架空の島「羽照那島」は、名前からも分かる通り
波照間島(はてるまじま|沖縄県)がモデルのようですが、一番最初に波照間に行ったのは?

小沢(うめ):9年前くらい前ですね。

妹尾(うめ):マンガの「羽照那島」は、波照間島と鳩間島の間くらいの規模を
想定して描いています。
石垣島とかになると、今住んでいる巣鴨よりも栄えていたりするので…。

鯨本:人口500人くらいの島の、絶妙な人と人の距離感がよく表れていますね。

小沢(うめ):うん。500人規模の島の経済ってどういうふうに回ってるのか。
仕組みとして、貨幣経済じゃない部分で暮らしている所がまだまだあって。
かつ、島外の世界とつながっていかないと、島内だけでは経済に限界がある。
そういうリアルな島の姿を暮らしを描いていくことで伝えたい。

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鯨本:『南国トムソーヤ』はなぜ小学生たちが主人公なんですか?

小沢(うめ):色々考えたんですよ。最初はゲストハウスを舞台にするとか。
だけど黒島に行った時、通りがかったアパートの入口に、
小学校か中学校に新しい先生が来る予定だったのか、
「歓迎!◎◎先生!」って張り紙がしてあって、手作りの飾りがついてて。
個人情報とかダダ漏れじゃん!みたいな(笑)

鯨本:本人もまだいないのに(笑)

小沢(うめ):でもそれが微笑ましくて。その先生との距離感もいいなと思って。

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鯨本:小学校を舞台にしたのは正解かもしれないですね。
島だと、学校行事って地域の人が全員参加だったりして、
小学校に島の人みんなが関わっていたりしますし、
たとえば「漁協」が舞台だったら出て来なかったような人も出せますしね。
色んな人物がこれから登場しそうで、楽しみですね。

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島方言から見える島の今

鯨本:マンガのネタ集めは、取材に行って集めるんですか?

小沢(うめ):はい。書き始める前に、一度取材に行きました。
あとは、島に移り住んだ友だちに、かなり細かくネタを教えてもらっています。

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鯨本:そうじゃないと描けないですよね。
「島のマンガ」を描く上で、一番頭を悩ませたのはなんでしょう?

小沢(うめ):言葉です。
最初は沖縄の方に方言指導をしてもらったりしていたのですが、
島ごと、集落ごとに違うので、正解がない。なので、そこは諦めて
標準語でしゃべらせています。
マンガは、アメリカ人が英語をしゃべっていても日本語で表現したっていい。
なのでそこは読みやすさを取りました(笑)

鯨本:島出身の人ですら、方言が分からない場合もありますよね。

妹尾(うめ):意外に、島では小学生が標準語を使用しているんです。

—へー!

小沢(うめ):昔から島にあるものは、日常の会話で親たちが使っているから
覚えるけど、今の子どもが話題にするものはテレビやゲームに出てくるものばかり。
それを指す方言はない。ドラクエはドラクエだし(笑)

鯨本:確かに!
リトケイがこれまで取材した中では、いろんな島人さんが方言が
使われなくなっていくのを危惧して、奄美大島でラジオをされている方が
わざと奄美弁でしゃべられたり、五島列島ののミュージシャンが
五島弁で歌を歌ったりしています。
わかってはいるけど、無くなるのはさみしいですよね。

小沢(うめ):うん。でももし、僕が島の小学生だったら
「絶対方言なんかしゃべらないぞ」って思ってそう(笑)

妹尾(うめ): twitterでつぶやいても、島の方言じゃ伝わらないしね…。

小沢(うめ):若いうちは、「島から出てゆく!」くらいの気概で
いいのかなとは思うんですが。

鯨本:たとえば鳩間島だと、高校がないので、外に行かなければいけない。
どこの島もそういう事情があって。ちょっと切ないです。

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「好奇心の壁」がくすぐられる

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—『南国トムソーヤ』には、ファンタジーの要素も含まれていますよね。
民俗学、考古学的な謎解きの要素があって、そういった観点でも
続きが楽しみなのですが…。

小沢(うめ):はい。これに関してはかなり自分でも調べましたね。
マンガの中に出てきた「好奇心の壁」の発言じゃないですけど、
「ここから先、誰も調べてないだろうなというライン」が自分でも見えてきて
チリチリしてるんですよ(笑)

鯨本:島の情報ってただでさえ手に入りにくいですからね。

小沢(うめ):マンガに登場する翼竜の話を含め、
リアリティのある説を描きたいなと思っています。

—実際に、波照間島のあたりにはそういう伝承があるんですか?

小沢(うめ):たとえば、波照間で見つかった昔の農機具が
インドネシアで使われていたものだったりとか、そういう符合はけっこうあります。

鯨本:へぇー!

妹尾(うめ):他にも、そんなに大きな島じゃないのに
創生神話が二種類あったりとか。

鯨本:バリに行っていた経験がつながってますね。

小沢(うめ):そうなんです!これバリで見たな、みたいなのはありますね。

妹尾(うめ):その時の経験やカンを活かして描いてるなというのは、
(小沢さんを)見ていると思いますね。

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(明日のその③に続きます)

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