つくろう、島の未来

2022年08月09日 火曜日

つくろう、島の未来

徳島県内の保育園や障害者施設などで年間200回以上の無料サッカー教室を行うスポーツ巡回ネットワーク徳島(徳島市)が、コロナ禍を機にオンラインでのサッカー指導をスタート。手探りで始まった活動は離島地域の小学生を対象としたオンライン交流授業に発展し、島々の子どもたちにスポーツ交流の機会を創出している。代表の黒部雅統さんに話を聞いた。

笠岡市立北木小学校と宇和島市立日振島小学校のオンライン交流授業

「スポーツの地域格差をなくしたい」無料のサッカー教室開催

徳島市のスポーツ団体「スポーツ巡回ネットワーク徳島」が、離島地域の小中学生を対象としたオンラインサッカー教室や島々の交流授業を企画。2021年の開始から北木島(きたぎしま|岡山県)、六島(むしま|岡山県)、日振島(ひぶりじま|愛媛県)、奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)の4島4校で開催された。

同団体を運営する黒部雅統さんは、2005年に黒部さんの兄で元サッカー日本代表の黒部光昭さんが社会貢献のため出身地である徳島県に開設したフットサル施設の運営を任され、外部指導者として2009年より徳島県内の保育園や幼稚園・子ども園・学童保育所・障害者施設で無料のサッカー教室を開催してきた。

「スポーツの地域格差をなくしたい」との基本理念を掲げ、2019年に任意団体として同団体を発足し、全国のスポンサー企業からの寄付やクラウドファンディングで運営費用を集め、年間総数約200回以上サッカー教室を開催するなど、活動に力を注いできた。

黒部さんの指導先には、山間地域など「子どもが少ない」「指導者が少ない」などの理由でサッカーがしたくてもできない地域も含まれていたが、2020年に始まったコロナ禍が島と出会うきっかけとなった。

コロナ禍で活動休止。西表島の指導者との出会いが転機に

2020年春に発令された緊急事態宣言のもと、保育活動における公園での活動が一時禁止され、子どもたちが屋外でのびのびと活動できない状況が生じていた。巡回ネットワークでも、サッカー教室の活動を休止せざるを得なかった。

やがて、コロナ禍で増える感染対策などの業務や園児たちのストレス対応に苦慮する保育現場から、「子どもたちの間で些細なケンカが増えて困っている」「(教室を)オンラインでもいいのでやってもらえないか」との相談を受けるように。

それまでオンラインでのスポーツ指導経験はなかったものの、保育士らの声に背中を押され、コロナ禍に対応したオンラインでのサッカー教室開催に乗り出した。

機材や指導方法など全てが手探り状態だったが、オンライン化したことで指導対象地域を徳島県外にも広げることが可能になった。全国の施設と教室開催に向けたやりとりを進める中、黒部さんは西表島(いりおもてじま|沖縄県)のサッカー指導者から「子どもの少ない島では交流を大切にしていたが、コロナが原因で交流の機会が失われている」といった離島の課題を聞いた。

「オンラインで子どもたちにスポーツを学び、交流する機会をつくりたいと思いました」(黒部さん)。この出会いが、島々での活動へ向けて動き出すきっかけとなった。

北木小学校でのオンラインサッカー教室の様子

2021年11月、島々の学校を結び、巡回ネットワーク初の交流授業が実現。オンラインサッカー教室で個別に指導していた学校同士を巡回ネットワークが間に入って調整し、宇和島市立日振島小学校(全校生徒8人)と笠岡市立北木小学校(全校生徒6人)で「総合学習」の時間を使ったオンライン交流授業を行った。

授業では、現在もプロサッカーチームの現場で活躍する黒部さんの兄(現名古屋グランパスエイト強化担当)も参加。オンラインウェブ会議システムで名古屋グランパスの練習場から接続した指導者と参加校をつなぎ、画面越しに「サッカー選手になるには?」「夢のつくり方」などをテーマに交流し、その後身体の使い方から準備運動、ドリブルなどのトレーニングを実演を交え一緒に体験した。

「なかなか島に招待が難しいプロサッカー選手の存在を感じ、一緒にプレイする楽しさを感じられるのもオンラインのメリット。子どもたちに大きな世界とつながる感覚をもってもらえたらうれしいです」(黒部さん)。

オンライン教室では、小学校低学年から高学年までの生徒が共に参加しやすいよう工夫している。指導者のいるフィールドの臨場感が伝わるような中継方法にも工夫を凝らした授業は、回を重ねるごとにブラッシュアップされ、これまでに日振島と北木島、六島と北木島でのオンライン交流授業や、奄美大島でのオンラインサッカー教室を開催してきた。

オンラインで培ったつながりを活かし、今年7月には笠岡諸島(かさおかしょとう|岡山県)の北木島、六島、真鍋島(まなべしま)の小中学校がリアルに集うサッカー教室も予定している。

市小学校(奄美大島)でのオンラインサッカー教室の様子

サッカー教室や交流授業は無料で開催しているが、ゆくゆくは各地域で自走化できることを期待し、青年会議所など各地域の団体と共催しながら関係づくりを進めているという。

「スポーツ交流を通してできた人のつながりを活かし、困りごとを相談し合える島々のオンラインコミュニティづくりにも取り組んでいきたい」と意気込む黒部さん。今後もオンラインならではの指導法を研究しながら、離島も含めた地域のスポーツ格差をなくすための活動を続けていく。


【関連サイト】
スポーツ巡回ネットワーク徳島

関連する記事

ritokei特集