つくろう、島の未来

2024年12月07日 土曜日

つくろう、島の未来

「地方創生☆政策アイデアコンテスト2017」(主催:内閣府 地方創生推進室)高校生・中学生以下の部で、屋代島(やしろじま|山口県周防大島町)の山口県立周防大島高等学校2年生による2案が「優秀賞」「ナビタイムジャパン賞」「日本政策投資銀行賞」を受賞した。(画像提供:周防大島高等学校)

山口県立周防大島高等学校普通科特別進学コース2年生の10名

データ分析に基づく地方創生を推進

2015年にスタートした「地方創生☆政策アイデアコンテスト」は、データに基づく地方創生の推進を目的に開催。「地域経済分析システム(RESAS)」を活用した地域振興につながる政策アイデアを全国公募している。

※RESAS(リーサス)……地方創生を支援する目的で国が提供している、産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約・可視化するシステム。

2017年度は、全都道府県から計975件(高校生・中学生以下の部328件、大学生以上一般の部647件)の応募があり、山口県立周防大島高等学校 普通科特別進学コース2年生の10名が4つの政策アイデアを応募。応募した3案を含む42案が地方予選を通過した。

最終審査会に向けた全国審査委員による書類選考では、高校生・中学生以下の部から5組、大学生以上一般の部から5組が選定され、周防大島高校普通科特別進学コースAチームと同Dチームの案が最終審査会に残った。

最終審査会では、10組が各自の政策案についてプレゼンテーションし、各部門の「地方創生担当大臣賞」及び「優秀賞」を決定。Aチームが高校生・中学生以下の部の「優秀賞」と「ナビタイムジャパン賞」を、Dチームが「日本政策投資銀行賞」を受賞した。

きっかけは高校生たちの自発的な思い

2_話し合い

政策アイデアについて話し合う生徒たち

「地域に愛され、地域とともにある学校づくり」を推進する周防大島高校は、日本で唯一の「地域創生科」を設置し、島じゅうをキャンパスとして、地域の社会や文化を支える人材の育成に取り組んでいる。平成27年度には「キャリア教育優良学校文部科学大臣表彰」「ESD大賞ユネスコスクール最優秀賞」を受賞し、平成28年4月からは「やまぐちコミュニティ・スクール」の指定も受けている。

今年2組が受賞を果たした「地方創生☆政策アイデアコンテスト」への挑戦は2年目。受験のための勉強に力を入れて取り組む普通科特別進学コースの1年生が、他学科・他コースの生徒たちの地域貢献活動を目にし、「自分たちも、もっと地域と関わる活動がしたい。地域貢献をしたい」と申し出たことがきっかけだという。

2016年は総合的な学習の時間を使い、同コースで力を入れている国際交流をテーマに政策アイデアを立案。初年は海外からの観光客へ向けて島全体を楽しんでもらう案でコンテストに応募したが、受賞は逃した。2017年は前年の案を磨き上げ、4つの政策アイデアを応募した。

島からでも全国レベルの活動ができる

Aチームの政策アイデア「ヒッチハイク★リッチタイム IN周防大島 〜ヒッチハイクから生まれる島民との交流〜」は、島内を「ヒッチハイク特区」とし、島の住民が島内を観光する人の移動をサポートするアイデア。観光客の移動手段が限られるという地域の課題を補い、観光客と地域住民の交流を促すことで交流人口増や将来の移住定住増につなげる。

Dチームの政策アイデア「みかんの島 周防大島をまるごとテーマパーク化 〜空き家や耕作放棄地を活用したオリジナル遊園地〜」は、交通量の少ない広域農道を「オレンジロード」として活用し、環境への負荷が少ない電動モビリティでの島の周遊や、果樹運搬用のモノレールを乗り物に活用するなどし、島全体を楽しんでもらう観光プランを提案した。

周防大島高等学校で特別進学コースを指導する芝山勝教諭は、「Aチームは大きな費用をかけずに実施できる実現可能性の高さが、Dチームは島の資源を有効活用する点が評価されたと思う」と話す。

Dチームプレゼンテーション資料より

特別進学コース生は、7時間の授業のほかに部活動などもこなす。今回のコンテスト応募に際しても多くの時間を割くことが難しいなか、生徒たちは地元の若手起業家や行政担当者など様々な大人に意見を聞き、企画を磨き上げたという。

芝山教諭は「大人も子どもたちも地元への思いが強い。地域の方々からは厳しい意見もいただいたが、その分期待の大きさも感じた」と振り返る。受賞が報じられると、たくさんの方が受賞を喜んでくれたという。

「普段お世話になっている地域への恩返しの気持ちを形にし、それが評価されたことで、生徒たちの自信と成長につながった。離島地域からでも全国レベルで評価される活動ができるということを証明したと思う。これからも他の過疎地域などのモデルになれるよう頑張ってほしい」(芝山教諭)。

コンテストから事業化する例も

「地方創生☆政策アイデアコンテスト」から具体的な取り組みにつながる事例も生まれている。

2016年度コンテストの大学生以上一般の部で「地方創生担当大臣賞」を受賞した福岡県糸島市では、特産品の販路開拓・広告宣伝・商品開発の一体的実施を行う案が市のマーケティングモデル推進事業として正式に採用。2017年春に新商品が発売されるなど、成果が現れている。

     

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