琉球大学では、2009年度より離島固有の課題の克服に向け、離島出身の学生講師陣が出身地の学校に赴き、交流授業や生徒・保護者への進路相談会、合宿プログラムなどを開催する「知のふるさと納税」事業を実施している。開始から6年継続する取り組みの今を取材した。
自らの知識や経験をもって、ふるさとの島に恩返し
琉球大学(沖縄県)の離島出身の学生が講師となり、故郷で後輩たちに授業やイベントを行う「知のふるさと納税」が現在、八重山諸島、宮古島(みやこじま)、久米島(くめじま)で行われている。
2009年、同大生涯学習教育研究センターの背戸博史教授を中心に、離島支援の「特別講座」として始まった同事業。「ふるさと納税」をモチーフに、在学生による授業や進路相談、出張学園祭などを通じて、中高生やその保護者に知識と経験を還元している。
当初は学問の分野で成功した離島出身者が講師となっていたが、「大学がない離島部では、大学生の姿を見たことがなく交流する機会が持てない」という声を聞き、2010年以降は在学生を派遣する形式に切り替えた。
開始から6年が経った現在は、高校在学中に授業を受けた生徒が同大に進学して講師を志願したり、大学時代に講師をした学生が故郷の島で教職に就いたりする好循環も生まれている。
背戸教授は「大学生の目的意識が『いつか島に帰りたい』から『島で活躍したい』に進歩している様子も見受けられる」と話し、「学生たちの故郷への思いの強さが事業の成功につながっている。島の方々も若者の将来を応援してくれているので、今後も続けていければ」と意欲を見せている。