沖縄県那覇市の繁多川公民館が実施する進学支援事業。島などの遠隔地から都市部に進学する高校生の進学費負担軽減と、単身高齢者の生活支援を同時に行う事業内容について担当者に聞いた。
■離島地域から進学する高校生の負担軽減と単身高齢者の生活支援に同時に実現
沖縄県那覇市の繁多川(はんたがわ)公民館は、離島地域など遠隔地出身の高校生の下宿先として、単身高齢者の自宅を活用する「進学支援サポート下宿事業」を開始した。
同事業では、遠隔地から都市部に進学する高校生の進学費の負担軽減と単身高齢者の生活支援を同時に行うことが可能。2015年7月24日~8月25日、宮古島(みやこじま|沖縄県)、多良間島(たらまじま|沖縄県)、与那国島(よなぐにじま|沖縄県)などの出身高校生が、高齢者の自宅に下宿する試験運用をスタートした。保護者、家主、高校生、教師から意見を集め、次年度の本格稼働を目指す。
繁多川公民館の進学支援サポート下宿事業担当者の南信乃介さんは、事業開始のきっかけを「沖縄では年間600人が進学のため離島地域などの遠隔地を離れると聞いた。一方、単身高齢者は日々の買い物や台風など災害時にも苦労が多い。高齢者の住む空き部屋を利用して、双方をつなぐことで、お互いの問題を解決できるのではと考えた」と話す。
南さんによると、離島地域を離れて進学する高校生の進学費は、生活費だけでも平均約81,000円は掛かり、負担の重さに進学を断念する家庭もあるという。同事業では、家賃30,000円を基準に試験を開始。別途食費は掛かるが、下宿先で高齢者の手料理を食べることもでき、食生活の面でも安心だ。
「高校生の一人暮らしには『友だちのたまり場になる』と心配する保護者の声があった。高齢者と生活することで、規則正しい生活習慣を身に付けることもできる」(南さん)。下宿する高校生には、買い物を手伝うといった生活支援、他団体の主催する認知症支援の演習を受講などの約束事も設定されている。
沖縄には寮のある高校もあるが、夏休みに閉鎖することが多い。夏休み期間中も塾等に通う生徒も多いことから、進学支援サポート下宿事業では期間限定の下宿プランを用意することも視野に入れる。「夏休み期間中は、ホテル暮らしや他の市町村に住む親戚宅から通ったり、普段は宿泊施設ではない学校の施設に泊まる子もいる。そうした負担を軽減したい」(南さん)。
同事業は現状の課題改善の先も見据える。「高校卒業後、沖縄を離れる高校生も多いため、彼らにはいつか地域に戻って頑張りたいと思えるような体験をしてほしい。単身高齢者宅の下宿を終えた後も、手紙で連絡を取り合うことができるサポートをつくり、10年、20年かけて高校生と沖縄がつながる循環を生み出したい」(南さん)。
【関連サイト】
「繁多川公民館」ウェブサイト