つくろう、島の未来

2022年12月02日 金曜日

つくろう、島の未来

日本の島々は、知る人ぞ知るお魚天国。島々会議では、漁業・水産業に従事する「魚食を支える島の仕事人」にお話を伺います。

島々会議第8回は、大分と宮崎からゲストをお招き。

今回お話を伺うのは人口14人の屋形島(やかたじま|大分県)でゲストハウス運営と緋扇貝(ヒオウギガイ)の養殖業と、二足のわらじを履く後藤猛さん。島野浦島(しまのうらしま|宮崎県)の食堂で島の海鮮物などを提供しながら特産品を開発する岩田大志さん。お二人の共通点は九州の島からEC販売をされていること。取り組みを紐解くと、「人をつなぐ場所をつくる」という、とても大きなつながりも浮かび上がってきました。

人物紹介


後藤緋扇貝 後藤猛さん
人口14人の屋形島(大分県佐伯市)で緋扇貝の養殖と「屋形島ゲストハウス」を運営。インドのダラムサラにあるチベット人コミュニティを訪れたことをきっかけにUターン。
Twitter / ECサイト


日々とデザイン株式会社 岩田大志さん
島野浦島(宮崎県延岡市)で、デザインの力を活かし満月食堂の運営と特産品の開発に取り組む。食堂の名前は、満月の週は漁師たちが船の修理や体を休めるかつての日常にちなむ。
Twitter / Instagram / ECサイト


ライター・ネルソン水嶋
合同会社オトナキ代表。ライターと外国人支援事業の二足のわらじ。鹿児島県・沖永良部島在住。祖母と二人暮らし、帰宅が深夜になると40歳手前なのに叱られる。
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離島経済新聞社 石原みどり
『ritokei』編集・記事執筆。離島の酒とおいしいもの巡りがライフワーク。著書に奄美群島の黒糖焼酎の本『あまみの甘み 奄美の香り』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)。

海の幸と向き合いながら場所づくり

後藤さんは、ゲストハウスと緋扇貝養殖の二足のわらじ。繁忙期が重ならないのがいいなぁと思いました。

夏は出荷も多いので若干は重なりますけどね、でもやっぱり緋扇貝が忙しいのは冬ですね。緋扇貝養殖は父の代からはじめたもので、「屋形島ゲストハウス」は知人の古民家を改装して2018年4月にはじめました。

緋扇貝は色鮮やかで、赤やオレンジになることが多いという。(写真提供:後藤猛さん)

岩田さんが取締役を務める会社は、飲食店の経営と特産品開発の二本柱なんですね。

はい。もともとはデザイン会社なんですが、「満月食堂」という飲食店の運営と、島の養殖業者さんの鯛を使って、「濃厚鯛ほぐれ」というふりかけのような調味料をつくっています。

満月食堂をはじめられたきっかけはどのようなものだったんですか?

オーナーと遊びに来たときに島の方から相談されて、2019年に開かれたビジネスプランコンテストで入賞したことがきっかけです。コロナの影響でなかなかはじめられなかったんですが、3月にようやくオープンできました。

できたてホヤホヤということなんですね。

そうなんです(笑)。

「濃厚鯛ほぐれ」は塩と醤油の2種類、真鯛一匹から6個分しか作れない贅沢な一品。(写真提供:岩田大志さん)

食堂への島民のみなさんの反応はどうですか?

すごく喜んでもらってますね。もともとこの島に15年間、飲食店はゼロだったんですよ。イートインやお惣菜があるのですが、一人暮らしの高齢の方から「助かった」という声や、「帰ってきた親族と集まれる場所があるのはうれしい」という声をいただいています。

満月食堂の話は、以前リトケイにもコラムを書いていただきましたね。島野浦島ではライトを使って魚を集める漁法があるけど、満月の日はできないので漁師さんたちは船の修理や体を休める。その日は飲み屋なども盛り上がっていたとか。

そうなんです。映画館やカフェもあったそうですが、よく聞くと30年も40年も前の話で。そんな月夜に休むのはおもしろいなと思って。漁法としては全国にあるみたいなんですけど、月夜に休む風習はどこでも同じなのかな、島特有なのかな、と思っていました。

満月食堂。二階は加工場となっている。(写真提供:岩田大志さん)

屋形島は蒲江湾にありますが、本土側で満月の日に休むことを「月よくい」といいますね。

なるほどー。やっぱり関係してますね。

うちの島は休みのことを「よこい」って言うんですよ、ちょっと近いですね。

そうなんですか!島が隣ですもんね。

そうですね。見えるんじゃないかな、みたいな距離ですよね。

屋形島ゲストハウスのコミュニティスペース(写真提供:後藤猛さん)

海の幸、どう食べている?

後藤さんのゲストハウスではご飯を出されることはあるんですか?

提供はしていないですね。キッチンで自由に料理できるので、食材は島外から買ってきてもらっています。緋扇貝だけはうちで買えるので、バーベキューで焼いて食べたり、知り合いが来たらいっしょに料理して食べることもあります。

バーベキュー以外には酒蒸しとか?

はい。酒蒸しは発送するお客さんに一番オススメしている食べ方で、自分も緋扇貝を広めるためにいろんな食べ方を知っておきたいので、料理人の方が泊まられたときにはいろいろとアイデアをもらって知見を広げていますね。

緋扇貝の酒蒸し(写真提供:後藤猛さん)

いいですね!ゲストハウスと緋扇貝の相乗効果が生まれてる。

そうですね!どっちともすごいつながってくるので。県外で緋扇貝を食べたお客さんが泊まりに来たり、泊まりに来た方から注文を受けたり。

緋扇貝って、見た目もすごくきれいですよね。ワイン蒸しにしたりハーブと合わせたり、小さいのをパスタ料理にしても華やかになりそう。島ではどのように食べられているんですか?

緋扇貝養殖はうちだけなので、島の人たちが食べるときは自分たちが配ったときだけで、酒蒸しとかおすすめした食べ方くらいしかしないですね。うちは形が悪いものをフライにして食べるけど、一個150円するものなのですごい贅沢ですよね。

鮮やかな色が映える緋扇貝料理(写真提供:後藤猛さん)

満月食堂の人気メニューは何ですか?

島外の方は海鮮丼を食べたいとおっしゃいますね。あとは7月にはじめたばかりの日替わり定食、刺し身とフライを出しています。2回目の方は鯛茶漬けを頼まれます。ほかにも500円からある、うどんとか、チキンカツ丼とか、こちらは島内の方が食べられますね。

島の方からすると日常的に食べられるものがほしいですもんね。

はい、「飾らなくてもいいから安いものがいい」と(笑)。

人気メニューの月見海鮮丼(写真提供:岩田大志さん)

島の方がふだん、食堂以外で食べられているものは何ですか?

漁師町なので、水揚げのときに漁師さんが配った魚を食べる習慣はありますね。保存方法やちょっと傷んだ魚をおいしく食べる文化があって、醤油に漬けたりすり身を揚げる「たたっこ」とかがある。後藤さんの話のように食べ方が贅沢で、ブリを一本丸々炭火で焼いて七味じょうゆで食べたりして。酒と合わせるとたまらんのですよ。

お酒はどんなものを飲まれるんですか?

最初から芋焼酎ですね。大分の屋形島では麦ですか?

いや、うちらは芋も麦も飲みますね(笑)。

島の養殖業者「木下水産」さんが育てた真鯛(写真提供:岩田大志さん)

緋扇貝って、色分けを養殖業者さんができるって聞きましたけど本当ですか?

うちは四国から天然物の貝の赤ちゃんを買っていますが、色はそれで決まりますね。人工ならできると聞いたことはあるけど、ぜんぶきれいに揃った緋扇貝は見たことがなくて、赤やオレンジが多くて黄色と紫が少ないというのはどこを見ても変わらないです(笑)。

牡蠣とかって淡水が混ざらないとおいしくならないっていうじゃないですか。緋扇貝は完全海水ですか?

海水ですね!淡水に弱いです。でも山からの養分は必要なので、山際のプランクトンは大事だと思います。四国に比べても成長速度が早いっていわれています。

今度、見せてもらったりできます?

もちろんもちろん!ぜひ来てください。

緋扇貝を水揚げする様子(写真提供:後藤猛さん)

場所が生まれたことによる島と人の新たな関係

ゲストハウスと食堂ってどちらも人が訪れる場所という点で共通すると思うんですね。そこで、島の中や、または外のつながりによってこうした変化があったという話はありますか?

食堂ができてからは、こういう取り組みがしたいという声が聞こえてきたり、実は魚で醤油をつくっている人がいると分かったり、島のおじさんが持ってきた海苔を佃煮にしてみたらおいしくて、島内のプチブームになったとか。島内にいるプレイヤーが見えてきましたね。

満月食堂によって島野浦島のプレイヤーが見えはじめた(写真提供:岩田大志さん)

めちゃくちゃいいですね!後藤さんはどうですか?

もともと観光地じゃなくガッツリと人と関わりたがらない島民性なので、私も「迷惑かけるけどすみません」って感じではじめたところがあるんですね。なので、お客さんが興味を持って自然な交流が生まれる方がいいと思っています。たまに地域授業で来た大学生に、「あのおじちゃんはいろいろ話してくれるよ」という裏情報くらいは入れますけど(笑)。

来島者から、島に惚れ込んで移住するような人が出てくるとおもしろいですよね。

そうですね。今までなかったけれど、ゲストハウスの存在でその可能性が生まれてきたと感じています。

屋形島を歩く子どもたち(写真提供:後藤猛さん)

二人が感じる、屋形島のよさ、島野浦島のよさ。

お二人が感じる島の良さってありますか?

生まれた場所というのはあると思うんですが、海や山の感じが自分に合ってるなとは思いますね。今まで狭いコミュニティが嫌いで、何度も出たり帰ったりしてたんですけど、26歳のとき、インドのダラムサラって町に行ったんです。そこで故郷を追われたチベットの人たちが生き生きしている様子を知って、どこでも暮らせるな、島をベースにしてもいいな、と思ったんです。

後藤緋扇貝の養殖作業所で、代表の弟さんと(写真提供:後藤猛さん)

これまで島から出た子どもたちも、そんな島の可能性を感じられたらいいですね。

そうですね!これが島の良さと言えるか分からないけど。

いや、僕は今めちゃくちゃ感銘を受けています……。

そうですか(笑)。

岩田さんはどうですか?

僕は島に暮らして1年と半年ですが、惚れ込んだというよりビジネスファーストみたいなところがありました。「地域の活性化が今後の日本に必要になる」というオーナーとの共通認識のもと、かつて九州でも高速道路がなく陸の孤島と呼ばれていた延岡市の、さらに離島から盛り上げることができれば、全国でも世界でも通用できるのかなと思ってます。そういう意味では、この島は、熱い方が多く変えていこうという意識など、ポテンシャルを感じる。ポジティブなところが島のよさですね。あとはまぁ、魚がおいしいところ(笑)。

それ大事(笑)。島をひとつの実験場じゃないですけど、地域で経済を循環させるモデルをつくって、それを全国に広げていくというのは、可能性があって素敵な話だと思います。

延岡市と島野浦島で活動する日々とデザイン株式会社のメンバー

一番は、島に直接来て魅力を感じてほしい。

最後に、読者に伝えたいことがあれば教えてください。

まずは来てみていただきたいですよね。2日や3日じゃ足りないので、一週間くらい来てもらえれば僕が魅力を伝えまくるので(笑)。民泊や、今は僕が借りている一軒家もあり、そこに泊まっていただくこともできます。満月食堂でアルバイトしながら滞在できますので!

緋扇貝はポケットマルシェ(EC)でも買えるけど、やっぱり来て食べてほしいですね。屋形島もそれこそ島の雰囲気だったり、ネットで見れる情報とは違うものが見れると思うので足を運んでほしい。もちろん、ポケマルで買ってもらうのもありがたいですけど(笑)。

お二人とも一番は、島に来て島を感じてほしい!ということですね。

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