つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

日本の島々は、知る人ぞ知るお魚天国。島々会議では、漁業・水産業に従事する「魚食を支える島の仕事人」にお話を伺います。

島々会議第8回は、大分と宮崎からゲストをお招き。

今回お話を伺うのは人口14人の屋形島(やかたじま|大分県)でゲストハウス運営と緋扇貝(ヒオウギガイ)の養殖業と、二足のわらじを履く後藤猛さん。島野浦島(しまのうらしま|宮崎県)の食堂で島の海鮮物などを提供しながら特産品を開発する岩田大志さん。お二人の共通点は九州の島からEC販売をされていること。取り組みを紐解くと、「人をつなぐ場所をつくる」という、とても大きなつながりも浮かび上がってきました。

人物紹介


後藤緋扇貝 後藤猛さん
人口14人の屋形島(大分県佐伯市)で緋扇貝の養殖と「屋形島ゲストハウス」を運営。インドのダラムサラにあるチベット人コミュニティを訪れたことをきっかけにUターン。
Twitter / ECサイト


日々とデザイン株式会社 岩田大志さん
島野浦島(宮崎県延岡市)で、デザインの力を活かし満月食堂の運営と特産品の開発に取り組む。食堂の名前は、満月の週は漁師たちが船の修理や体を休めるかつての日常にちなむ。
Twitter / Instagram / ECサイト


ライター・ネルソン水嶋
合同会社オトナキ代表。ライターと外国人支援事業の二足のわらじ。鹿児島県・沖永良部島在住。祖母と二人暮らし、帰宅が深夜になると40歳手前なのに叱られる。
Twitter


離島経済新聞社 石原みどり
『ritokei』編集・記事執筆。離島の酒とおいしいもの巡りがライフワーク。著書に奄美群島の黒糖焼酎の本『あまみの甘み 奄美の香り』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)。

【後編】場所が生まれたことによる島と人の新たな関係

ゲストハウスと食堂ってどちらも人が訪れる場所という点で共通すると思うんですね。そこで、島の中や、または外のつながりによってこうした変化があったという話はありますか?

食堂ができてからは、こういう取り組みがしたいという声が聞こえてきたり、実は魚で醤油をつくっている人がいると分かったり、島のおじさんが持ってきた海苔を佃煮にしてみたらおいしくて、島内のプチブームになったとか。島内にいるプレイヤーが見えてきましたね。

満月食堂によって島野浦島のプレイヤーが見えはじめた(写真提供:岩田大志さん)

めちゃくちゃいいですね!後藤さんはどうですか?

もともと観光地じゃなくガッツリと人と関わりたがらない島民性なので、私も「迷惑かけるけどすみません」って感じではじめたところがあるんですね。なので、お客さんが興味を持って自然な交流が生まれる方がいいと思っています。たまに地域授業で来た大学生に、「あのおじちゃんはいろいろ話してくれるよ」という裏情報くらいは入れますけど(笑)。

来島者から、島に惚れ込んで移住するような人が出てくるとおもしろいですよね。

そうですね。今までなかったけれど、ゲストハウスの存在でその可能性が生まれてきたと感じています。

屋形島を歩く子どもたち(写真提供:後藤猛さん)

二人が感じる、屋形島のよさ、島野浦島のよさ。

お二人が感じる島の良さってありますか?

生まれた場所というのはあると思うんですが、海や山の感じが自分に合ってるなとは思いますね。今まで狭いコミュニティが嫌いで、何度も出たり帰ったりしてたんですけど、26歳のとき、インドのダラムサラって町に行ったんです。そこで故郷を追われたチベットの人たちが生き生きしている様子を知って、どこでも暮らせるな、島をベースにしてもいいな、と思ったんです。

後藤緋扇貝の養殖作業所で、代表の弟さんと(写真提供:後藤猛さん)

これまで島から出た子どもたちも、そんな島の可能性を感じられたらいいですね。

そうですね!これが島の良さと言えるか分からないけど。

いや、僕は今めちゃくちゃ感銘を受けています……。

そうですか(笑)。

岩田さんはどうですか?

僕は島に暮らして1年と半年ですが、惚れ込んだというよりビジネスファーストみたいなところがありました。「地域の活性化が今後の日本に必要になる」というオーナーとの共通認識のもと、かつて九州でも高速道路がなく陸の孤島と呼ばれていた延岡市の、さらに離島から盛り上げることができれば、全国でも世界でも通用できるのかなと思ってます。そういう意味では、この島は、熱い方が多く変えていこうという意識など、ポテンシャルを感じる。ポジティブなところが島のよさですね。あとはまぁ、魚がおいしいところ(笑)。

それ大事(笑)。島をひとつの実験場じゃないですけど、地域で経済を循環させるモデルをつくって、それを全国に広げていくというのは、可能性があって素敵な話だと思います。

延岡市と島野浦島で活動する日々とデザイン株式会社のメンバー

一番は、島に直接来て魅力を感じてほしい。

最後に、読者に伝えたいことがあれば教えてください。

まずは来てみていただきたいですよね。2日や3日じゃ足りないので、一週間くらい来てもらえれば僕が魅力を伝えまくるので(笑)。民泊や、今は僕が借りている一軒家もあり、そこに泊まっていただくこともできます。満月食堂でアルバイトしながら滞在できますので!

緋扇貝はポケットマルシェ(EC)でも買えるけど、やっぱり来て食べてほしいですね。屋形島もそれこそ島の雰囲気だったり、ネットで見れる情報とは違うものが見れると思うので足を運んでほしい。もちろん、ポケマルで買ってもらうのもありがたいですけど(笑)。

お二人とも一番は、島に来て島を感じてほしい!ということですね。


この企画は次世代へ海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。

日本財団「海と日本プロジェクト」

さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。

     

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