つくろう、島の未来

2024年04月20日 土曜日

つくろう、島の未来

「デアゴスティーニ♪」のCMでおなじみのデアゴスティーニ・ジャパンから、週刊『日本の島』が発売されるビッグニュースを聞きつけたリトケイ編集部。2022年1月11日の発売を記念して、“週刊『日本の島』を読んでみる会”を開催しました。島が大好きなリトケイ読者に、週刊『日本の島』に登場する島に暮らす皆さん、全国の島を歩く島旅のプロ、という三者三様の視点から読む、週刊『日本の島』とは?

《其の一》編集部・松本が島好き読者と読んでみました(2022/1/11公開)
《其の弐》編集部・石原が島の皆さんと読んでみました(2022/1/19公開)
《其の参》リトケイ編集長が島旅のプロと読んでみました(2022/1/26公開)

参加者プロフィール

 
斎藤 潤(さいとう・じゅん)
島旅作家。日本の海に浮かぶ全ての有人島を踏破、現在も毎年数十島を巡る。『日本《島旅》紀行』『東京の島』『沖縄・奄美《島旅》紀行』『吐噶喇列島』(光文社新書)『瀬戸内海島旅入門』(マイナビ出版)など著書多数。
 

 
小林 希(こばやし・のぞみ)
旅作家、Officeひるねこ代表。旅、島、ネコをテーマに書籍や雑誌などで執筆、撮影。瀬戸内海の島にゲストハウスをオープンするなど、島おこしにも取り組む。『週末島旅』(幻冬舎文庫)ほか、著書多数。2019年日本旅客船協会船旅アンバサダーに就任。御船印めぐりプロジェクト事務局を運営。
 

 
鯨本あつこ(いさもと・あつこ)(ritokei)
1982年生まれ。大分県日田市出身。NPO法人離島経済新聞社 代表理事。地域づくりや編集デザインの領域で事業プロデュース、人材育成、広報ディレクション、講演、執筆等に携わる。2012年ロハスデザイン大賞ヒト部門受賞。美ら島沖縄大使。2児の母。一般社団法人石垣島クリエイティブフラッグ理事。
 

週刊『日本の島』に寄稿する島旅のプロと語る

今日は週刊『日本の島』の制作にも携わる島旅のプロ、斎藤潤さん・小林希さんと語っていきたいと思います。まず、斎藤さんは今回どのページを担当されたのでしょうか?

毎号掲載される「しま山100選」(※)を中心に、無人島の記事なども担当しています。

※(公財)日本離島センターが、島の魅力を再発見し交流の促進につなげることを目的に、全国の島々を対象に100山を選定
 

「しま山100選」のリストで標高を確認してみると意外にも”低い山”が多いことに気がつきます

すべて登られたのですか?

7割くらいは。「しま山100選」の中で本格的な登山対象になる山は、利尻山(りしりざん|利尻島)と宮之浦岳(みやのうらだけ|屋久島)ぐらいで、後は比較的登りやすい山が多いんです。

登山中にみられる植物や山頂からの景色など、まるで筆者とともに山に登っているような気分で楽しめる「しま山」のコーナー

そういわれると確かに、1,000メートルを超える山があるのは数島だけですよね。

僕が島で訪れる場所のひとつが山なんです。その島で一番高い山に登ってみると、小さな島なら島全体の様子が俯瞰できる。昔、天皇が国見をしたような感覚が味わえますよ。

「しま山100選」の文章は紀行文のようでいいですよね。

「しま山100選」の一覧には標高も載っていますが、粟島(あわしま|新潟県)の八幡山(101メートル)のような低い山なら、初心者でも登りやすそうですね。

そう、島だと100メートルくらいの低山は結構ありますね。

私は低山を狙っていきたいです(笑)。小林さんはどの記事を担当されましたか?

編集部より、いくつかの島に加えて“猫の島”も担当してほしいとオーダーいただき、まずは2号で田代島(たしろじま|宮城県)の記事を書きました。

猫好きである小林さんは週刊『日本の島』でも猫の島を担当。猫の話題はもちろん島の見所などについても紹介しています

田代島ページにある「主な動植物」のデータには「(動物)ネコ」という記載もありますね。猫の島として知られていますが、読んでいくと猫だけではない見所も知れておもしろいです。

本文は図鑑らしく説明的に書いていますが、観光でネコと接する際のマナーや、しっかり猫に出会いたいなら島に泊まってゆっくり滞在した方がいいよ、というメッセージを伝えたくて、ページ下にコラム調の文章も書ける場所をつくってもらいました。

地図やデータもさることながら、ページの下に小さく載っている「島とーく」で、実際に島を訪れた執筆陣が書いたプチ情報が読めるのもおもしろいです。

「猫の島」として知られる石巻市の島・田代島の島影(写真提供・石巻市)

現地で体験してこそ実感できる歴史や文化がありますし、本文の情報に加えて「しまトーク」でも、島のイメージを膨らませてもらえたらうれしいです。

一般人は上陸不可。あの無人島も網羅

週刊『日本の島』には、簡単に訪れることのできない無人島も掲載されています。斎藤さんは太平洋エリアの沖ノ鳥島(おきのとりしま|東京都)(同誌5号に掲載)に実際に行かれたことがあるそうで、この記事は斎藤さんが担当されているんですよね? (沖ノ鳥島の写真をみて)実際にはこんな風になっているとは……。

沖ノ鳥島の周囲は約11キロメートル。週刊『日本の島』には知られざる無人島の姿も詳細に説明されています(写真提供・国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所)

東小島は満潮時に10センチメートルくらい海面から出ている島で、波に削られてしまうと島として要件を満たさなくなるので、防護ネットで保護されています。沖ノ鳥島1島だけで日本の国土面積(約37.8万平方キロメートル)よりも広い排他的経済水域(約40万平方キロメートル)を確保しているというのは、すごいことです。

沖ノ鳥島に関する歴史的経緯など、日本という国を知る上で興味深い話も書かれていますね。

無人島というと『ロビンソン・クルーソー』で描かれる絶海の孤島のイメージが強いですが、瀬戸内海エリアのように、人と関わりが深い無人島もあるんです。そうした島と人の関わり方はおもしろいんです。

週刊『日本の島』には無人島の記事も豊富。そんな無人島の背景もおもしろいのだと斎藤さんは語ります

週刊『日本の島』には)今後もそういった無人島の記事が掲載されていくんですね。
それにしても、有人、無人に関わらず、その人がどこに居住しているかによって、島に対して思い浮かべるイメージは全然違いますよね。

瀬戸内海エリアなら本土側の人でも、ふらりと出掛けられる場所というイメージを抱きそうですが、東京には伊豆諸島の青ヶ島(あおがしま)や小笠原諸島(おがさわらしょとう)のような絶海の島もありますよね。

西日本は(島が多いので)比較的、島が身近ですよね。

島数でいえばほぼ西日本に分布していますもんね。とはいえ、東日本にも興味深い島がたくさんあって、知れば知るほど興味を惹かれるポイントがたくさん増えてしまいます。

有人離島の約8割が西日本に分布。週刊『日本の島』を眺めるだけで、知られているようで実はあまり知られていない日本列島の姿が見えてきます

移り変わる島々の「今」を記録する貴重な図鑑

週刊『日本の島』のいいところは、例えば、ある島の歴史文化をもっと掘り下げようとなったときに、一度紹介した島の情報でも追加できるところですよね。

バインダーに綴じていくスタイルの強みですよね。リトケイとしてもある意味、うらやましい(笑)

情報が追加されていくのは楽しみですよね。「日本列島の成り立ち」の神話編にもあるように、島の各地にさまざまな神話や伝説があるので、情報を集めて行くと、島同士のつながりや日本の歴史のような壮大な全体像も見えてきそうですね。

そうですよね。西表島(いりおもてじま|沖縄県)のページでは伝統行事の概要だけじゃなく、写真を何枚も使って行事の流れまで紹介しています。伝統的な文化も時代の流れで少しずつ変化していくので、今の時代に存在する島の姿を記録した図鑑としても意義深いと思います。

西表島で継承される伝統行事の風景。祖納集落の節祭(左上)に登場するミルク神(右上)。干立集落の節祭に登場するオホホ様(下)(写真提供・左上:西表島エコツーリズム協会/右上:竹富町島じまの文化遺産の伝承・活用協議会/下:竹富町)

ちなみに、私が訪れた沖縄のほかの島の伝統行事では、皆がおそろいのTシャツを着ていたりしました。昔は着物だったものがTシャツに変わるような変化は、今後もきっとありますよね。

Tシャツといえば、悪石島(あくせきじま|鹿児島県)(同誌1号に掲載)では、運動会などで集まって何かする際に、みんな背中に「悪」って書いたTシャツを着てるんですよ。悪、悪、悪と、悪ばっかり(笑)。一度、東京駅でそのTシャツ着ている人を見かけて、思わず声をかけそうになりました。

ああ!声をかけてほしかった(笑)。

先ほど小林さんがおっしゃっていた神話の例もひとつですが、北前船(きたまえぶね)のような交易のネットワークでの、島々のつながりもおもしろいですよね。

佐渡島(さどがしま|新潟県)(同誌3号に掲載)の、帆が張られた千石船(せんごくぶね)の写真には感動しました!

佐渡島で見た千石船の勇壮さに感動したという小林さん。そうした船が実際に島々を行き交っていたロマンあふれる時代に思いを馳せます

昔はこんな船が島々を行き来していたのかなと思うと、感慨深いですよね。

北前船や朝鮮通信使など、島と島、島と外部のつながりを示す企画もいいですね。昔の人たちは、本土も含めて今よりも自由に行き来をしていたように思いますし。

人の移動で言えば、佐渡島や隠岐諸島(おきしょとう|島根県)(同誌3号に掲載)など、島には天皇や貴人のように高貴な人が流されていますよね。隠岐に流された後鳥羽上皇のように、流人たちによって形成されてきた島々の文化も興味深いです。

日本海に浮かぶ佐渡島。北前船や流人たちが運んできた彩り豊かな文化が息づく(写真提供・佐渡汽船)

島に流された流人の企画もいいですね。「今月の流人」みたいな。

いいですね(笑)。これから週刊『日本の島』にどんな記事が増えてくるのか、楽しみに読んでいきたいと思います。

ビジュアルマガジン 週刊『日本の島』

週刊『日本の島』は、自然・歴史・文化・暮らしなど島に関するあらゆる情報を網羅するビジュアルマガジンシリーズ。日本列島を8つのエリアに分け、400島余りの全有人島および周辺無人島を解説。創刊号に付属する専用特製リングバインダーにエリアごとにファイリングしていくことで 、日本の島の一大図鑑が完成!定期購読者にはリトケイオリジナルデザインのTシャツなど豪華プレゼントが付いてきます。

>>週刊『日本の島』公式サイト
https://deagostini.jp/nsm/ritokei_3/

離島経済新聞 目次

リトケイ編集部員が読む週刊『日本の島』

週刊『日本の島』(デアゴスティーニ・ジャパン)発売のビッグニュースを聞きつけたリトケイ編集部が、2022年1月11日の発売を記念して、"週刊『日本の島』を読んでみる会"を開催。島が大好きなリトケイ読者に、週刊『日本の島』に登場する島に暮らす皆さん、全国の島を歩く島旅のプロ、という三者三様の視点から読む、週刊『日本の島』とは?

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