つくろう、島の未来

2024年04月20日 土曜日

つくろう、島の未来

離島経済新聞社は、10月22日に10周年を迎えます。
10年間の感謝を込めて、10月22日(木)夜に全国の島々のゲストと中継をつなぎ、音楽ライブやトークをお楽しみいただくオンライン生配信イベント「シマナイト ON LINE」を開催します。(※)。

※TwitCasting(ツイキャス)有料配信。生配信終了後、録画再生可能

ここでは、2012年に創刊した『季刊ritokei』のバックナンバーより、シマナイトのゲストが登場した記事をWEB上で特別に掲載。第4回は、五島列島(ごとうれっとう|長崎県)で五島弁の方言シンガーソングライターとして活躍するベベンコビッチさんへのインタビュー、2012年7月『季刊ritokei』3号「逢いたい島人」企画をお届けします。

音楽で、島人の心をつなぎたい

島で生まれて島を出た島人は、ふるさとが海に隔てられる分、島への想いを募らせるのかもしれません。
ふるさとへの想いを唄にする福江島(ふくえじま|長崎県)のバンド「ベベンコビッチオーケストラ」。時に静かに、時に熱く。島の方言で唄われる唄は、聴く者の心を揺さぶります。この春に島外から島へ戻り、音楽活動をベースに活躍するボーカルのベベンコビッチさんに話を伺いました。
(文・甲斐かおり)

※インタビューは、すべて『季刊ritokei』vol.3(2012年7月発行)掲載時のものになります

方言で歌うのは、同郷人に島を思い出してほしいから

リトケイ:

以前お会いしたのは、1年半前に開催された東京ライブでした。あの時は、お客さんたちがみんな本当に熱くて、涙ながらに聴き入っている姿を見て、感動したのを覚えています。

ベベンコビッチ:

僕らのバンドは、お客さん同士がみんな仲間みたいで。ライブが始まる前からもう出来上がっているというか(笑)。音楽を聴きにくるっていうよりも、みんなに会いに来ている感じかもしれません。

リトケイ:

方言で歌われるのは、島の人に向けて唄いたいという想いからですか?

ベベンコビッチ:

そうです。地元や同郷の人に向けて唄っています。初めは方言をリズムに乗せたら面白いやん!ってことになって始めたものなので、内輪受けと言われることもあるけど、それでもいいと思っています。

唄が広まれば人の注目は集まるし。あと、島への想いを標準語とか英語で唄っても説得力がない。やっぱり自分の言葉でストレートに唄ってこそ、共感を得られるんだと思います。

リトケイ:

お客さんがあれだけ熱く感情移入するのって、すごいことですよね。

ベベンコビッチ:

やっぱり音楽の力ですね。僕がどれだけ立派にふるさとへの愛を語っても、音楽にはかなわない。まずは同郷者が、僕らの音楽を聴いて島のことを思い出して、頻繁に帰ってくるようになったらいいなと思っています。

いくら観光が魅力だとアピールしても、出身者も帰ってこんような島に人は集まらないと思います。

リトケイ:

本土になりますが私も田舎があって、もちろんその土地のことは好きですけど、島の方ほど強く郷愁を感じてはなかったように思います。いつでも帰れる気がして。

島出身の方は、「島を出た」という想いをより強く意識している感じがします。

ベベンコビッチ:

やっぱり海で隔てられているからこそ、想いが強くなるんでしょうね。それも島のひとつの財産で。

僕らのライブに来る人たちも五島出身の人が多いけど、「なんやこの熱さは」って思いますもんね。

島の人たちだけで、島のことを考えなくてもいい

リトケイ:

島に戻られたのは、わりと最近なんですね。

ベベンコビッチ:

そう、この春からです。以前も島に2年半いて、その時に音楽活動を始めて。最初は趣味やったけど、もう島や音楽から離れられなかった。

リトケイ:

最近はカフェも始められたようですが、始めて間もないとはいえ、Facebookなどで見ているとすごく盛り上がっていますよね。

ベベンコビッチ:

そうですね。カフェを始めた理由は、自分が食べていくためもあるし、バンドの練習場所の確保ということもあるけど、外から遊びに来た人たちが集まれる場所があるといいなと思っていました。

リトケイ:

ベベンコビッチさんのライブを聴くために島を訪れる人も増えましたか?

ベベンコビッチ:

そうですね。島外で出会った人たちが遊びに来てくれたり。でも、もっといろんな土地にいる島出身者が、島の方を向いてくれたらいいなと思っています。

今、五島高校からは年間110人くらいが国公立大学に行っていて、島のみんなは喜ぶけど「ちょっと待てよ」とも思うんです。手塩にかけて育てた優秀な人ほど出ていってしまうってことでもあるから。

島を離れた人たちに軽々しく帰ってこいとは言えないけど、島の人たちはもっと助けを求めていいと思うんですよね。島の人たちだけで、島のことを考えなくてもいいってね。

リトケイ:

外に出て行った島人には、ものすごくいいスキルや場を持っている人もたくさんいるはずですもんね。

ベベンコビッチ:

そうそう。そういう島を離れている島人たちが、もっとふるさとに貢献できるような仕組みがあったらいいよね。

今も「ふるさと市民」みたいなものもあるけど、島に来た時だけレンタカーが10%安くなります、みたいなんじゃなくて。1万円、2万円払ってでも島のためになるようなことに使ってほしい人っていると思うんですよね。でも今は、その人たちの気持ちを活かす術がないから。

リトケイ:

いろんな島々でIターンや観光客を増やすのにものすごく予算かけたりパワーを使ったりしていますが、実は出て行った島出身者に戻って来てもらう方が、安定感もあるし経済効果も高いような気がしています。

ベベンコビッチ:

観光は水ものやけんね。あと、戻りたいけど戻れない人もいると思うけど、そんな人が例えば本土で偉くなっていたら、島のおいしいものを「これ食べてみろ」って自分の部下に勧めるとか。社長やったら100人、200人相手の営業になるし。島に戻ってなくても、島のことにちょっと意識を向けてもらうだけでも全然違ってきますよね。

島外への広がり

リトケイ:

これから先、音楽以外にも、地域づくりや島のために予定している活動などもありますか?

ベベンコビッチ:

うん、10月14日に兵庫県でフェスティバルをやろうと思っています(※)。ライブと写真展と市場を一緒にした「五島を丸ごと持ってきました」っていうようなもので、一見物産展のようにも見えるけど、本当の狙いは、島人と島外の人が一緒になってそういうイベントをやってみることです。

※イベントは終了しています(2012年10月開催「まるごと五島in関西。」)

島のイベントだからって島の人だけでやるとは限らなくてもよく、誰がどこでやってもいい。ここでうまくいけば、他のところでもやっていこうと思っています。とにかく五島に意識を向けてくれる人をたくさん集めることが、僕らの役割です。

リトケイ:

面白いですね。行政や島人の力だけで、人を集めていくのは難しいですもんね。最後に、島に戻りたいけれど迷っている人がいるとしたら、何かアドバイスはありますか?

ベベンコビッチ:

僕もまだ戻ったばかりだから、無責任に島に帰ってこいとは言えないけど、本土で暮らしていながらでも、島に貢献できることを僕らはつくっていくので、応援よろしくってことかな。

あとは、移住するとしたらその前に、段階踏んでみたらどうかな。年に一度車買い換えるつもりなら、東京から年に10回とか20回は通えるはずで。まずは足しげく通ってみることから始める!かな。

【話を聞いた人】
ベベンコビッチ/大口 久(おおぐち・ひさし)
五島弁の方言シンガーソングライター
2009年より活動をスタートし、これまで作成したオリジナルアルバムは8作品。すべての楽曲で島の情景や風俗を方言を交えながら歌っている。現在は、小値賀島にて宿泊施設「オヂカノオト」、飲食店「おと家」を経営しながら音楽活動を行っている。公務員だった前職を2012年に退職するまでに、出身地である五島市をはじめ、対馬市、壱岐市などでの生活経験があり、長崎県離島全体がゆかりの地となっている。
http://ojikanooto.com/


さまざまな島のゲストが登場するリトケイのオンライン生配信イベント「シマナイト ON LINE」は10月22日に開催。ベベンコビッチさんのライブ&トークもお楽しみいただけます♪ 下記の【チケット申し込み】URLよりお申し込みのうえ、ぜひご視聴ください。

【シマナイト ON LINEイベント概要】
日時:10月22日(木) 19:30〜22:00
料金:1,500円(ツイキャス有料配信 別途手数料あり)
出演者:okei(小笠原諸島)、黒島慶子(小豆島)、大口久(小値賀島)、山下賢太(上甑島)、麓憲吾・渡陽子・楠田莉子(奄美大島)、宮良賢哉・池城安武(石垣島)、リトケイ一同
チケット申し込み:https://twitcasting.tv/tokyoculture2/shopcart/26611

関連する記事

ritokei特集