つくろう、島の未来

2025年09月18日 木曜日

つくろう、島の未来

リトケイでは、理念や取り組みに共感した仲間たちのコミュニティ「うみねこ組」を運営しています(詳しくはこちら)。仕事や活動はもちろん、島に住んでいたり、行き来していたり、いつか住みたかったり、島との関わり方もさまざま。本記事は、そんなうみねこ組メンバーによる週替りのミニコラムです。

第4回は、東京を離れて家族で小豆島に移住した喰代(ほおじろ)伸之さんです。外国人住民というニューカマーが増える島で、日本語教室の運営や、外国人従業員を新たに迎え入れる企業を集めてのワークショップ型イベントの企画・運営など、外国人との共生に取り組まれています。


私は瀬戸内海の島・小豆島に移住して約7年になります。もとは東京で国家公務員をしていましたが、都会での生活に限界を感じ、家族で島に移住しました。現在は、一般社団法人LINGO(リンゴ)の代表として、外国人との共生のための事業を進めるほか、教育や地域おこし協力隊の支援など、地域づくりに関わるさまざまな活動を行っています。

小豆島はオリーブの産地として知られ、年間約100万人が訪れる観光地ですが、近年は移住先としても注目され、毎年約500人が移住しています。「移住者」はまったく珍しい存在ではなくなり、行政、産業、地域の担い手として欠かせない存在となっています。

小豆島の集落遠景

しかしながらここ数年は、これまでにない動きが見られるようになりました。それが外国人の増加です。現在島には約340人の外国人が暮らし、多くは技能実習や特定技能といった在留資格で地元の企業に勤めています。国籍はベトナム、インドネシア、フィリピンをはじめ、中国、ミャンマー、ネパールなど多様で、オリーブや醤油、佃煮、石材といった地場産業に加え、観光、介護、自動車整備など幅広い分野で活躍しています。

島にこれだけの外国人が移住するのは歴史上初めてのことなので、課題も少なくありません。ことばや文化の違いから孤立しやすく、偏見や差別の問題もあります。また彼らはどうしても短期の労働力として見られる傾向があるため、地域で共に生きるパートナーとしてとらえ直す必要があります。

島の伝統行事「虫送り」に参加する外国人のみなさん

これらの課題に対処するため、LINGOは、大きく分けて二つの事業を進めています。

一つ目は、外国人雇用に関する事業です。これは、企業が外国人を採用し、職場に定着を図る際のサポートを行うものです。具体的には、企業向けの外国人雇用に関するシンポジウムや意見交換会の開催、島の「合同入社式」における外国人社員向けワークショップなどを行っています。

二つ目は、多文化共生事業です。これは、外国人が日本語を使って地域社会の中で自立して生活していくためのサポートを行うものです。具体的には、毎月の日本語サロンのほか、「食」を通じた国際交流イベント、「虫送り」やお祭りなど島の伝統行事への外国人の参加促進、小学校における「総合的な学習の時間」を活用した国際交流クラスなどを進めています。

島の産業や地域の未来を考える上で、外国人は担い手として欠かせない存在になりつつあります。私はLINGOの事業を通じて、ことばや文化の壁を乗り越え、共生するための環境づくりを続けていきたいと考えています。

LINGOの交流イベント「多文化ごはんのゆうべ」の様子

喰代伸之(小豆島)





     

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