つくろう、島の未来

2025年11月04日 火曜日

つくろう、島の未来

国内417離島に暮らす人は100万人弱。それぞれが住人の生活空間であり、訪れる人に癒しや学びを与える場であり、国にとっては、世界6位という広大な面積を誇る 「日本の海」を平和的に維持するための拠点でもあります。

一方、人口減少によるインフラ縮小や気候変動などの諸課題が急増。2025年は隠岐諸島や奄美群島の主要航路で減便が発表され、医師、保育士、公務員など暮らしを支える人材の不足も深刻化しています。

いま、私たちは考えるべき岐路に立っています。未来に向けて、流れに身をゆだねていくのか。それとも、「こんな未来をつくりたい」という意志を持ち、歩んでいくのか。リトケイは、未来に向けた 人々の「意志」を共有します。

今回は、小値賀島で自分軸・直感性・ポジティブ思考を体現する「ギャル」マインドの普及に取り組む﨑元愛琴さんが、「意志ある未来」 を問う5つの質問に答えます。

※この記事は『季刊ritokei』50号(2025年8月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

編集・ritokei 編集部

人の魅力はそのままに誰もが挑戦できる島へ

﨑元愛琴さん

長崎/小値賀島・大島
﨑元愛琴(さきもと・まこと)
2003年小値賀町生まれ。 人口約50人の大島で4歳まで育ち、家族で小値賀島に移り子ども時代を過ごす。小中学生の頃は、大島で民泊を営む祖父母宅で世界中からやってくる来島者と接し、平成の大合併時に単独町政を選んだ小値賀町の大人たちが語り合う背中をみてきた影響から、高校時代の夢は 「町長」に。高校卒業後は長崎県立大学地域創造学部公共政策学科へ進学し、地方政治・市民参加について学ぶ(現在休学中)。島の人からの声かけにより 「移住ドラフト会議」 などの地域振興イベントにも多数参加。町に関する活動を主体的に行うなか、ギャルマインドの重要性に気が付き小値賀での普及に取り組む。モットーは「迷ったらとりあえずやってみる」

Q1. ご自身にとっての「愛しき島の風景」とは?

「誰かのためになにかしたい」という利他的な人たちが、自給自足とか物々交換とかをしている 「人間本来の人と人とのつながり」が残っている風景です。昔から小値賀の一番の魅力は人だと思っていました。

観光面では正直、目立った観光地もないから 「なにもない」とも言われますけど、 人と関わったり、島の暮らしそのものを楽しんだりできるのも、人の魅力があるからだと思います。

農業を営む大島の島人
大島で農業や民泊を営む﨑元さんのおじちゃん。小値賀島から定期船で10分の大島には約50人が暮らしている

Q2. ご自身が望まない 「なりゆきの未来」とは?

誰かが新しいことをやりたいと思った時に、何かしらの「圧」とか感情的な理由でできなくなってしまうことが増えること。

Q3. どんなことでも叶うとしたら、ご自身が望む島の未来(意志ある未来)はどんな姿をしていますか?

例えば誰かが「戻ってきたい」と言った時に、「コミュニティが狭いから」「仕事ないから」と言って選択肢が削られることなく、「小値賀だからできるでしょ」と言い合える島が理想です。

「移住ドラフト会議」でのパフォーマンス
ギャルマインドで島を盛り上げるべく、ギャル姿で出場した移住促進イベント「移住ドラフト会議」

地域振興イベントに参加しながら小値賀に必要なものを考えた時に気がついたのが「とりあえずやってみよう!」という人が増えることだったんです。それなら陽キャが必要じゃない?と思って調べてたら、ある会社がギャルのマインドを「自分軸、直感性、ポジティブ思考」 と定義していて、 それだと思ったんです。

だから島がギャルマインドだらけになったらすごく理想ですね。見た目ギャルだらけだったらカオスすぎるのであくまでマインドですけど(笑)。

「移住ドラフト会議」での受賞記念写真
「移住ドラフト会議」では特別賞を受賞

Q4. いま、島にはどんな現実的な壁があると感じていますか?

島にいた頃は何とも思わなかったことですが、大学に進学して初めてジェンダー平等に関するギャップを感じました。

島は地区のお祭りで男性がずっと座っていて、女性は台所に立ちっぱなしでご飯も食べれるか食べれないか。女性の議員や町長が今までいないことも課題だと思います。

性別によって向いている仕事はあると思いますが、変わっていったほうがいい伝統的な価値観もあると思います。

牛のいる小値賀島の風景
五島列島の北部、5島の有人離島からなる小値賀町は人口約2,000人

Q5. その壁を越えるために必要なアクションは?

いろんな人と対話できる場がどんどん増やせたらいいなと思います。高校の頃に「町長になりたい」と言っていた理由は、町長になりたいというよりは手段的なことで、若い女性が立候補すれば、 町民の意識が変化していろんな人がいろんなチャレンジをしやすくなるんじゃないかなと思ったことでした。

新しいことを実行する人はいろんなことを言われて気持ち的に辛くなることもある。だからそんな「圧」を乗り越えていけるように、新しく何かをしようとする人と島の人が意見を言い合えるような対話の場が、もっと身近にできたらいいなと思います。

小値賀島の浜辺の風景




     

特集記事 目次

島々が向かう意志ある未来となりゆきの未来

国内417離島に暮らす人は100万人弱。それぞれが住人の生活空間であり、訪れる人に癒しや学びを与える場であり、国にとっては世界6位という広大な面積を誇る「日本の海」を平和的に維持するための拠点でもあります。

一方、島々では人口減少が進み、インフラの維持や気候変動などの課題が急増しています。2025年は、隠岐諸島や奄美群島の主要航路で減便が発表され、医師、保育士、 公務員など暮らしを支える人材の不足も深刻化しています。

いま、私たちは考えるべき岐路に立っています。このまま流れに身をゆだねていくのか。それとも、「こんな未来をつくりたい」という意志を持ち歩んでいくのか。本特集では、未来に向けた 人々の「意志」 を共有します。

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