つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)で行われている島の特産品づくり「奄キャンものづくり事業」。奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の5島でつくられている産品についてご紹介します。

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鹿児島と沖縄の間に浮かぶ奄美群島で行われている島の特産品を育てる取り組み「奄キャンものづくり事業(以下、奄キャン)」では、平成24年度から20事業者が参加し、島の特産品を育てています。(事業のはじまりについては vol.1をご覧ください)

ひとえに奄美群島といっても島々によって個性はさまざま。ここでは、奄キャンで育てられている産品を島ごとに紹介します。

■奄美大島では「すもも」や「パイナップル」を素材に開発

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なだらかな地形が続く北部地域や、深い山々や養殖に適した湾のある南部地域で、それぞれの地形を生かした農業、畜産、漁業などが行われている奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)。

奄キャンではこれまでに、笠利町の「味の郷かさり」がつくるヨモギを使った郷土菓子の「かしゃ餅」、大和村の事業者「まほろばグループ」がつくるスモモのコンポートやスモモのフルーツソース、龍郷町の「株式会社あいかな」がつくるパイナップルジャムなどを育成。奄美大島産のパイナップルを使用したジャムはちょっと贅沢なジャムとして人気になりつつあり、お年寄りにも好評という「かしゃ餅」は今後、売上の柱として確立されるように期待されています。

ほかにも、サメ油を採るために捕獲されていた深海ザメを使ったジャーキー(乾燥加工品)や、地元で水揚げされるレンコ鯛の加工品などが、奄美大島の特産品として育っています。

■喜界島は国内生産量ナンバー1の「白ゴマ」や在来種の素材が強み

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奄美大島の東に浮かぶ喜界島(きかいじま|鹿児島県)は、生産量日本一を誇る白ゴマや、在来種の大豆、そら豆、けらじみかんなど、独自の素材が強み。国内に流通するゴマの99%以上が海外からの輸入品であるなか、希少な国産ゴマを生産する喜界島では、ゴマをつかった加工品づくりに力が入れられています。

奄キャンでは、「結いグループ喜界」がつくるゴマを使ったしゃぶしゃぶのタレや、在来種のそら豆をつかった粉末飲料、「南村製糖」がつくる島ゴマと島黒糖をつかった板菓子などを育成中。在来種を使った産品は首都圏のバイヤーにも注目されつつあり、ゆくゆくは特産品が喜界島全体の注目度アップにつながることが期待されています。

■徳之島では奄美マンゴーをチリソースとして提案

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群島一の耕地面積を誇る徳之島(とくのしま|鹿児島県)は、サトウキビをはじめ、じゃがいも(バレイショ)、マンゴー、パッションフルーツ、タンカンなどをつくる農業が島の基幹産業。

奄キャンでは、天城町の「天城町熱帯果樹生産組合女性部」がつくるマンゴーチリソースや、マンゴーのピクルスをはじめ、島で育った島豚を使ったレトルトカレーや長命草(島の方言でサクナ)を使った産品を育成しています。まだ試作段階というマンゴーチリソースは、甘いマンゴーの新しい食べ方提案としても注目されています。

■沖永良部島では高評価をうける高い魚の「生ハム」が完成

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東洋一といわれる鍾乳洞が自慢の沖永良部島(おきのえらぶじま|鹿児島県)は、「えらぶゆり(テッポウユリ)」などの花卉栽培をはじめ、サトウキビ、じゃがいも、キクラゲなどの農業が盛ん。

奄キャンでは、 伝統的な「かしゃ餅」や「ふくれ菓子」の島内消費を増やせるようブラッシュアップが図られているほか、和泊町の「有限会社メークマ」がつくる島で水揚げされるソデイカ、シイラを使った生ハムは完成品となり、鹿児島県漁業振興大会第48回水産物品評会水産庁長官賞受賞など2つの賞を受賞。メディアからも注目される特産品が誕生しています。

■与論島では小型のトビウオ「さがま」をつかった商品を開発中

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サンゴ礁のリーフに囲まれる与論島(よろんじま|鹿児島県)は、基幹産業であるサトウキビ栽培に加えて、農業、畜産、漁業が営まれています。奄キャンでは、「楽園企画」が手掛ける島で水揚げされる「さがま(トビウオの一種)」を使った加工品を開発中。成魚になっても10〜15cmほどにしかならない「さがま」は、他地域ではあまり見られない魚種のため、新たな島の特産品となるよう、干物やダシの開発に力が入れられています。

奄キャンに参加し、特産品づくりを行う事業者に共通する想いは、地元の素材を活かした特産品を開発、あるいはブラッシュアップすることで、島内・群島内・本土での販売機会を増やすこと。また、奄キャンでの学びを通して、商品の開発、PR、販売を事業者が一貫して行う「6次産業化」のスキルを身につけることです。

ここでの学びを通して完成した特産品のなかでも、2つの賞に輝いた沖永良部島の「ソデイカ、シイラの生ハム」は、味はもちろんパッケージの評価も高く、島内のレストランで提供されているほか島外での販売もはじまっているとのこと。各島で育つ産品について、奄キャンを担当する奄美広域事務組合の林健太郎さんは、「島を代表する特産品に育ってもらいたい」と展望を語ります。

さて、そんな奄キャンでは現在進行形で育成されている特産品をさらにブラッシュアップするために、今年の3月に東京で販売会を実施します。次回は、3月の販売会にどんな特産品と事業者が登場するのか、産品づくりの現場からレポートします。

(文・離島経済新聞社)

     

離島経済新聞 目次

【奄キャンものづくり】奄美群島特産品づくりチャレンジ

「奄キャンものづくり」は奄美群島で行われている「特産品づくり」プロジェクト(主催:奄美群島広域事務組合)。奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の有人8島からなる奄美群島で特産品をつくる事業者に向けた継続研修を通して、奄美群島産品を育てています。

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