NPOリトケイ(特定非営利活動法人離島経済新聞社)は、離島地域の未利用魚や低利用魚などを活用し、おいしく味わい、海を学べるサステナブルな商品づくりに挑戦しています。リトケイが他団体や島々の生産者と協力して進める、商品開発プロジェクトについてご紹介します。
本企画は、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
海の問題を商品開発の足がかりに。
海水温の変化や食害魚による影響から、海の生き物を育む「藻場」が激減し、砂漠のようになる「磯焼け」が、全国的に問題となっています。
この問題をサスティナブルな商品づくりのヒントとして、リトケイは、豊かな海と日本の魚食文化を未来につなぐことをミッションに活動するChefs for the Blue(シェフスフォーザブルー)と協力し、対馬島(つしまじま|長崎県)で磯焼け対策として捕獲されたアイゴを活用したスープを開発しました。現在、レトルト商品化を目指しさらなる試作を重ねています。
今回は、アイゴを生み出した対島の海について理解を深めるため、磯焼け対策に取り組む生産者の犬束さんに、対馬島の海で進行する磯焼け問題と、島ぐるみで進む対策について聞きました。
「子どもたちに豊かな海を残してあげたい」生産者の思い
九州と朝鮮半島の間に浮かぶ、対馬島。約28,000人が暮らす島では、漁業は15.5%を占める主要産業です(※)。
※平成27年国勢調査
イカやブリなどのほか、サザエ、アワビなどの貝類やヒジキなど海藻類にも恵まれ、マグロや真珠の養殖も盛んで、アナゴの水揚げは全国一を誇ります。
そんな豊かな漁場を誇ってきた対馬島で、近年、磯焼けによる近海の魚介の減少が深刻化しているといいます。
島内で水産加工や飲食店を営む丸徳水産の犬束さんは、「子どもの頃は家の前の海に潜り、サザエを捕りお小遣いを稼いでいたのに、今は貝がいなくなってしまった」と身近な海の変化を語ります。
同社では、藻場を再生し豊かな漁場を守ろうと、2019年より食害魚のイスズミの活用に取り組んできました(※)。
※丸徳水産「そう介プロジェクト」
この取り組みを島全体に拡大し、2021年から自治体のサポートのもと、島内の漁業水産業と飲食業が連携した一体的な対策がスタートしました。
海藻を食べるアイゴやイスズミなどの食害魚を捕獲、新鮮なうちに島内の水産加工所で調理しやすい状態に加工し、地元飲食店のメニューや学校給食に。加工後の残さは、養殖魚のエサになります。
活用先が広がったことで、対馬島のアイゴの水揚げは5.6トン(2021年)から13トン(2022年)に倍増したといいます。
「山の木が枯れたら目に見えてわかるけれど、海の中は禿げていても気づいてもらいにくい」と犬束さん。海の課題や未来の可能性を多くの人と共有できるよう、漁業者が案内し、磯焼けや養殖の様子、地層や漂着ゴミを観察するエコツーリズムも実施しています。
「島の子どもたちに豊かな海を残してあげたい」と思いを語ってくださった犬束さん。アイゴのスープを商品化し島外に販路を広げることで、島の取り組みの後押しとなれるよう、本プロジェクトにも期待がかかります。
\オンライン取材をYouTubeで公開中!/
リトケイ、シェフスフォーザブルーのプロジェクトチームによるオンライン取材を動画で公開しています。対馬島で進む島ぐるみの磯焼け対策について、詳しくは動画をご覧ください。