つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

東西南北3,000キロメートルに広がる日本列島には、多様な歴史背景や地理的条件を持つ島があります。今回は、離島特有の事情をサポートする6つの法律をご紹介します。

※この記事は『季刊ritokei』42号(2023年5月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

島の暮らしや産業の基盤を整備・改善する「離島振興法」昭和28(1953)年

10年間の期間限定で有効な「時限立法」としてスタートした歴史ある法律。北海道・本州・四国・九州の周辺に存在する島々を対象に、交通・通信・水道・下水道・電力などの基盤整備、医療・教育現場の充実、雇用創出支援、農林業・漁業などの産業振興支援、防災対策の支援などにかかる事業費の多くを国が負担することで離島地域をサポートしてきた。

現在までに7回延長され、ハード整備からソフト支援に広がるなど、時代に即したアップデートがなされています。

離島振興法の対象離島、7つの有人島を有する岡山県笠岡市の風景。同じ行政区内に本土エリアと離島エリアがある島は「一部離島」と呼ばれます

奄美群島の振興開発を計画し自立的発展を支える「奄振法」昭和29(1954)年

※正式名称・奄美群島振興開発特別措置法

戦後のアメリカ統治下期間を経て、昭和28年に日本復帰した奄美群島が自立的に発展し、住民の生活や福祉が向上することを目的に制定されました。支援の柱は、人々が主体的に活動できるよう定住促進や交流拡大、本土に比べて不利になる条件の改善、生活基盤の確保・充実など。

奄振法をもとに、産業振興や雇用創出を進める奄美群島振興交付金事業や、農林水産物の輸送コスト支援事業、住民の航路航空運賃軽減などが実施されています。

奄美群島振興特措法の対象離島である与論島(よろんじま|鹿児島県)の風景。奄美群島は人口約60人から6万人までの8島からなる島々

強制疎開からの復興と自立的発展を支える「小笠原特別措置法」昭和44(1969)年

※正式名称・小笠原諸島振興開発特別措置法

戦時中には強制疎開を強いられ、戦後はアメリカ統治下におかれた小笠原諸島。昭和43年の日本返還を機に、かつての住民の帰島を促し、島の復興と自立的な発展を図ることを目的に制定されました。

地域の基盤整備や産業振興などの施策に対して財政的支援を行うことが規定され、交通・通信・水道・下水道・電力などの基盤整備、公共施設の拡充、生活物資や島外に出荷する鮮魚や野菜などの輸送費補助、定期船の運航補助などを行っています。

都心から約1,000キロメートルの距離にある小笠原諸島。父島(ちちじま|東京都)まではおがさわら丸(右)で片道24時間。父島〜母島(ははじま|東京都)間はははじま丸(左)がつなぐ

日本復帰から沖縄本島と38の沖縄離島を支える「沖振法」昭和47(1972)年

※正式名称・沖縄振興特別措置法

戦後、26年余りにわたってアメリカ統治下に置かれた沖縄。沖振法は1972年に日本復帰を果たした沖縄の特殊な事情に配慮し、沖縄本島および沖縄離島の経済や社会の自立的発展を促進するために制定されました。

産業振興や雇用の促進、社会福祉の充実、教育・文化の振興、地域開発や環境整備などを行うための施策が盛り込まれ、歴史的、地理的、自然的、社会的に特殊な事情に由来する条件の不利性を緩和できるよう、多様な財政支援が行われています。

沖縄本島から橋でつながる伊計島(いけいじま|沖縄県)の風景。沖振法は沖縄本島およびすべての離島(38島 ※令和5年3月時点)が対象となる

海洋国家の国境を守る71島を支える新たな法律「有人国境離島法」平成29(2017)年

※正式名称・有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法

日本の領海・排他的経済水域を保全するためにも重要な国境付近の離島において、住民生活の維持・継続を支援するために制定されました。

有人国境離島法をもとに創設された特定有人国境離島地域社会維持推進交付金により、離島住民が負担する航路・航空路運賃をJR運賃・新幹線運賃並みに引き下げる支援をはじめ、民間事業者向けの創業・事業拡大支援による雇用創出、輸送コストの支援、滞在型観光の促進などの各種施策が実施されています。

特定有人国境離島地域に指定されるトカラ列島の宝島(たからじま|鹿児島県)。鹿児島本土から宝島までは週2便の定期船で約13時間

島の生命線・離島航路を維持改善する「離島航路整備法」昭和27(1952)年

本土と島を結ぶ航路や、島と島を結ぶ航路をはじめ、船舶以外に交通機関がない、もしくは船舶以外の交通機関を使うのが不便な地点間を結ぶ航路を対象に、離島と本土を結ぶ航路の整備や、港湾施設の整備、定期船の運航費用の補助などを行い、経済・文化の発展を支援する法律です。

国が離島の自治体に対して財政支援を行うことも明記され、航路経営によって生じる欠損の一部が、この法律によって補填されます。

種子島(たねがしま|鹿児島県)の西之表港に停泊するフェリー。離島航路整備法により島の住民や生活物資の輸送手段が維持されています

もっと詳しく知りたい方は法令検索サイト「e-Gov(イーガブ)」へ

日本の法令(憲法・法律・政令・勅令・府令・省令・規則)を検索できるデータベースから検索すると、法律の全文を読むことができます。
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>>次回:「島は優遇されている?!キホンのQ&A【特集|島を支える仕組みのキホン】」に続く

特集記事 目次

特集|島を支える仕組みのキホン

1万4,125の島からなる日本には421島の有人島があり、そのうち416島が有人離島と呼ばれています。 人の営みがある島のそれぞれに、自らが暮らす地域を支える人がいて、島の外から島を支える人や、島を支えるさまざまな法律や制度があります。 この特集では、離島特有の法律や制度を中心に、島を支える仕組みのキホンを紹介します。

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