2020年に広がった新型コロナウイルス感染症は、人々のふれあいや移動に制限をかけた。そんな中、直接手がふれられない距離にいる人と人の間で、さまざまな支え合いがみられた。ここでは新潟県の佐渡島と粟島、鹿児島県の獅子島の動きを例に、”海にも隔てられない支え合いの輪”を紹介する。(編集・ritokei編集部)
※この記事は『季刊ritokei』34号(2021年2月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。
休校中の島の後輩たちにLINEで学習指導
新型コロナウイルスの第1波が日本列島をゆるがした2020年4月。佐渡島(さどがしま|新潟県)出身で都内の大学に通う村川剛さんは、緊急事態宣言により大学にも行けず自宅にこもっていた。
ふるさとの学校でも休校が続いているらしい。そんな中、都内に住む同郷の先輩とのLINEで「(地元の)高校生に学習指導するのはどうだろう?」と話したことが、ことの始まりだった。
「先輩は理系をお願いします。私、文系やります」。そんな軽やかな会話を経て、島の後輩づたいに先生と連絡をとり、学習指導につかうLINEアカウントを教えて、SNSに「高校生に勉強を教えます」と投稿した。
すると「中学生はダメか?」という問い合わせが届き、対象を中高生に拡大。「手伝いたい」という賛同者も集まり、やがて東大や京大など難関大学を含む21人もの佐渡出身大学生が学習指導役として揃った。
その後、「広報活動もしなくちゃ」と、ウェブ制作に詳しいメンバーがホームページを開設し「てのひら教室 #佐渡中高生学習支援プロジェクト」が整った。
彼らの取り組みはマスコミにも取り上げられ、記事を見たという新潟本土の中学生からも問い合わせが入った。「多い時で60人くらい。だんだん減って40人くらいになり、一時期は質問もこなかったけど、入試の時期になってきたので、数人の中学生から頻繁に質問がきています」と村川さんは話す。
「この問題の解き方がわからない」など、LINEに届く中高生からの質問には対応できるメンバーが回答している。「最近は大学やバイトも再開してみんなが忙しくなってきたので私が返すことが多いですが、数学など私だけで手に負えないものは、メンバーに任せています」(村川さん)。
もとはコロナによる休校が終了し、学校が再開するまでと考えていたが、「高校3年生の受験が終わるまではやった方がいいのでは?」という思いから、2021年3月31日までは継続するという。
そんな若者たちの動きに感化され、佐渡にゆかりを持つ大人たちもプロジェクトを立ち上げている。「佐渡の『宝』支援プロジェクト」と名付けられたそれは、寄付金をもとに島外にいる出身学生らに、佐渡産のお米や農産物などを「仕送り」する企画だ。
5月の開始から2,114,000円もの寄付が集まり、2カ月間で377人の学生に仕送りが届けられた。
プロジェクトのホームページには、仕送りを受け取った学生たちからのメッセージが並び、「家族以外にも佐渡を出た自分のことを親身になって考えてくださる人たちがいると感じられた」「今度は私が佐渡のために何かしら貢献できるように頑張りたい」と、ふるさとを鎹(かすがい)に支え合う人々の想いが交差している。
>>新潟県・粟島
「島の生命線を守るためGCFに寄せられた想い」に続く