つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

伊豆諸島北部に位置する伊豆諸島最大の島、伊豆大島(いずおおしま|東京都)。移住から5年経つ今も、島の魅力発掘の冒険にいそがしいデザインユニット「トウオンデザイン」。彼らが運営しているコミュニティースペース『kichi』での活動や日々の出来事をつれづれに。

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今回はコミュニティスペース『kichi』を立ち上げた経緯についてお話します。
kichiを立ち上げるまでに至った頭の中のイメージを整理してみました。
ちょっとコムズカシイかもしれませんが最後までお付き合いくださいませ。

〜kichi立ち上げまでの道のり〜

まず、伊豆大島が抱える『課題の背景』を設定しました。
伊豆大島は東京から南に約120km離れた洋上に浮かぶ島であり、首都圏からもっとも近く、伊豆諸島への玄関口としてもとらえることができる離島。また、多くの自然が残されており、活火山という極めて特徴的な自然環境をも有している。
一方、依然として続く人口減少、観光客の減少、そして、一次産業の衰退等、将来を考えるにあたって多くの問題を抱えている島でもある。

はい。そこから、『課題および解決への糸口』について考えてみます。

【課題】
1)人口減少に歯止めをかけたい
2)観光客の減少を食い止めたい
3)一次産業を盛り上げたい
【解決への糸口】
1)問題意識を共有したメンバーとのビジョン共有
2)各種情報媒体の企画・制作・運営による情報発信や観光従事者との連携による企画・事業化
3)他地域の成功事例の研究や講師・専門家派遣による勉強会の設定
4)島外団体・組織・人と島内団体・組織・人とをつなぐパイプ機能

課題や解決への糸口が整理できたところで、『想定しうる主対象とその特質』を考えます。
島のキーマンや当事者意識の高いメンバーを発掘する。例えば、
1)伊豆大島在住者 ⇒ 地域振興に繋がる活動を行っている各地域の青年団員や商工会青年部員等、地域振興について感心が高い人
2)伊豆大島へのU・Iターン希望者 ⇒ 島を何とかしたいという思いが比較的強い傾向にある。
3)地域活性に関心がある人 ⇒ 地域との関わり方については千差万別だが、他地域の活動事例を知っていたり実際に経験している

ここで一旦、今回の課題に対する『周囲の状況や動向』についてチェックしてみます。
1)地方へ飛び出す若者の増加 ⇒ 都会や都心を離れて完全に移り住む人、都会と地方の2拠点生活をおくる人
2)地域活性やまちづくりを行うNPOや団体の活動をよく目にするようになってきた
3)地域資源とデザインを結びつけた活動を行うデザイナーやプランナーが話題にあがるようになってきた

続きまして、『地域振興の発端の条件・狙い』をイメージしてみます。
1)情報発信(各種メディアを駆使した情報発信)⇒ 周知活動から生まれる、出会いや繋がり。もちろん今回のリトケイさんのコラム執筆も“出会い・繋がり”です
2)コンセプトづくり ⇒ 地域で活動するにあたって、その地域の歴史や魅力等を探り、その地域ならではの明確なビジョン・コンセプトをつくる必要がある
3)モチベーションアップ ⇒ メンバーの意識改革・意識向上を図るような機会や場づくりが必要

で、ようやく『アイデア(kichi立ち上げの要件定義)』にたどり着きます。
1)あらゆる人や情報が出会うリアルな場所
2)個々人が日常的に所属する組織を超越し、自由な雰囲気の中、自由なアイデアが集まる場所
3)島外の人が憧れるような場所、何かが生まれそうな期待感を醸し出す場所
4)わかりやすい場所に存在すること、絶好のロケーションに位置していること
5)いわゆる“フューチャーセンター”をつくる

というわけで、あれこれ考えた結果、
コミュニティスペース「kichi」を立ち上げる意義があると判断しました。
そして、「kichi」のコンセプトづくり、そこからロゴデザイン等を詰めていきました。

kichi<キチ>のコンセプト
首都圏からのアクセスが比較的容易でありながらも自然豊かな島として、伊豆大島はまだまだ注目を集める可能性を秘めている。また、伊豆諸島の玄関口、そして首都圏と伊豆諸島を結ぶ中継地点として、伊豆大島は“島内外の人々をつなぐ場所”として好条件の島と考えられる。

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そこで、元町港前の旧ZENスペース(元々ジャズ喫茶だった場所)をコミュニティスペース、制作スペース、イベントスペース、カフェ、コワーキングスペース等の機能を備えたクリエイティブスペースに仕立て上げ、島内外の様々な分野の人々が集い、企めるような場所にしたいと考える。
結果、外部と内部が有機的に交差する刺激的な拠点となり、閉塞感のある地域に対してひとつの方向性を提案する場所になるものと期待する。

いわば、内外をつなぐ“基地”をつくる、ワクワクする拠点をつくる。

そして、ロゴデザインへ。
kichi<キチ>
基地、吉、機知の意味。
ワクワクする事が起こる場所、吉が多くあつまる場所、さまざまな事に順応して発言(発信)する場所。
なお、kichiを逆から読むと「地域」になる。
ロゴデザインは“K”を屋根や三原山に見立て、ひとつ屋根(三原山)のもと、様々な人々が集い、企んでいる様子を表現しました。

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そして、2012年7月にコミュニティスペース『kichi』はオープンしました。

というわけで、今回はだいぶ頭をこねくり回すコラムになってしまいました。
次回はこのkichiで行われているワクワクすることお伝えしたいと思います。

〈 次回へつづく 〉

     

離島経済新聞 目次

【連載】伊豆大島「kichi」で繰り広げられる日々のモノコト

伊豆諸島北部に位置する伊豆諸島最大の島、伊豆大島。移住から5年経つ今も、島の魅力発掘の冒険にいそがしいデザインユニット「トウオンデザイン」。彼らが運営しているコミュニティースペース『kichi』での活動や日々の出来事をつれづれに。

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