気仙沼大島では、椿の花が見頃となる3月13日〜5月7日にかけて、「椿まつり」を開催する予定です。写真家・榎本の気仙沼大島ルポ。
「気仙沼大島のいまとこれから」 vol.2
2011年12月、再び気仙沼大島を訪れました。
島人はいま、どんなことを考え、これからに向けて何をしているのか。
季刊リトケイ創刊号の拡大版としてお伝えします。
#05 第1回 気仙沼大島復興椿まつり
昨年12月、気仙沼大島にある冬の椿農園を訪れました。
10月に来た時よりも多くの椿の花が咲いていましたが、
ほとんどは寒さで枯れていました。
「枯れた椿は椿油に使えないんだ。
今咲いてる花は自然に落ちるのを待ってるんだよ。
もっと暖かくならないと椿油に使う椿は採れないんだよ」
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椿農園の中を案内してくれた小野寺栄喜さんは、
大島に自生しているヤブツバキから気仙沼大島の復興を考えています。
「椿油を搾るだけでなく、椿を鑑賞したり、
椿染め体験ができたり、植樹したり、
様々なことができると思うんだ。
そういった環境を整えて、
大島にた多くの人が来てくれるといいなと思う」
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東日本大震災後に小野寺さんが発足したプロジェクト
「つばきの島復興21世紀プロジェクト」では、
椿の花が見頃となる3月13日~5月7日にかけて、
「椿まつり」を開催する予定です。
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約10週間もの長い間開催されるこの椿まつりでは、
様々なイベントを企画しています。
現在決まっているのは、3月8日プレオープン、
13日にオープニングイベントを計画。
東京から80人ほどが島へ来て、
島の小中学校のお母さん達も一緒に、鎮魂フラダンスをしたり、
太鼓やソーラン節をする企画があります。
これは例年7月に開催していた
「癒しの日」の代わりとなるイベントになるようです。
毎年4月に実施していた「気仙沼つばきマラソン大会」は、
3月18日のミニウォーキング、3月24日のメインウォーキングで
「早春椿ウォーキング」と名前を変えて実施予定です。
これは、宮城県ウォーキング協会などが協賛してくれています。
さらに、ウォーキング翌日の3月25日には
ボランティアや観光客と一緒に
植樹祭の開催を予定しているそうです。
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「大島に自分の居場所を作っていってほしい。
自分が来た証を残してほしい。
そしてまた再び大島に来てほしいんだ」
イベントは週末を中心に予定し、
いくつかの旅行会社も毎週末ツアーを組んでいます。
「これまで来てくれた人に恩返ししたい。
決してハイレベルな祭りを求めるのではなく、ちょっとずつだけど、
自分たちで満足いくように手作りでやりたい」
大島では、朝市も島人たちには重要な話し合いの場のようです。
朝市では小野寺夫妻をはじめ、菅原市議も姿があり、
火を囲み、凍えそうな身体を暖めながら話をしていました。
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「島内外のみなさんに応援してもらってるから頑張れる。
椿祭りはみんなで集まってわいわい騒ぐ。
そんなことができたらいいな。
復興のきっかけが椿になる。
きっかけが椿で、それが椿の持つ魅力なんだ。
椿祭りはそのスタート地点なんだ」
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「椿農園にみんなが休めるカフェをつくりたいの。
そこで椿染め教室をやったり、椿農園から見える海を見ながら
ゆっくりお茶を飲める場所があるといいわよね」
小野寺さんの奥さんも大島に来る人達のことを考え、
いろいろな提案をしていました。
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「野菜と違って木は長い時間をかけて成長していく。
時間をかけて復興する大島も、自分が植えた椿の木も、
その過程を見ていってほしい」
そう語る小野寺さんの力強い眼差しが印象的でした。
椿祭りは気仙沼大島の復興の
第一歩となるよう、島の外からでも応援できます。
約10週間続く椿まつりを機会に、
ぜひ気仙沼大島へ訪れてみてはいかがでしょうか。
島のみなさんは、沢山の方の来島を待っています。
#06 気仙沼大島の船運賃と島人の生活
12月の気仙沼は雪が降っていました。
気仙沼港にも雪が積もり、桟橋にはまだ足跡がありません。
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気仙沼港の玄関であるエースポートも復旧されていないようです。
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仮設の待合室にはストーブにあたり船を待つ人々がいます。
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港に着くフェリーを見てみるとフェリー亀山が戻ってきていました。
大島汽船の船がやっと復旧されました。
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今回は、この気仙沼大島と気仙沼市内を結ぶ船の話です。
大島汽船が運営するこのフェリーが、
現在の気仙沼大島に住む人たちの唯一の足となります。
約20分で気仙沼港に到着するこのフェリーは、一人片道400円。
車は一般車両(5m未満)で片道2,520円。
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気仙沼港に到着してからも、更にそこからの移動は
車かタクシーでないと、遠くには行くことができません。
気仙沼市内で仕事を持つ島人も多いので、彼らは気仙沼市内用と
大島用の2台の車を所有している場合がほとんどです。
これは、いくつかの理由があっての選択でした。
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① 車と同乗の乗船は少なくとも往復5,000円程するので、
毎日使うのは経済的に難しい。
② カーフェリーには車乗船限定があるので、
あらかじめ予約しないと確実に乗れない.
③ 仕事などで遅くなった場合、臨時船が小舟で運航するが、
最終便は一人片道1,200円かかり、更に車を乗船できない。
以上のような理由から、市内にアパートを借りる人もいるほど、
島と市内を行き来することは経済的に容易ではないようです。
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更に、昨年の東日本大震災をうけて、島人からはより一層、
船の運賃に対して不満の声が出てきました。
運賃に加え、駐車場代もかかるので2台保有は経済的に難しく、
大震災を機会に大島を離れる人も多くいました。
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そこで、大島で牡蠣の養殖業を営んでいた小松政行さんは、
「高速道路は無料になるのに、なんで船はならないんだ。」と、
島人の大事な足である船の運賃交渉へと踏み切りました。
小松さんは島中の家々を周り、2,000件以上の署名を集めました。
この署名は気仙沼市→宮城県→国へと順を追って嘆願するもので、
私が取材に大島へ訪れた12月、気仙沼市町へ届けました。
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「今は再び車を2箇所に所有する人も戻ってきたけど、
生活は大変でも車はどうしても必要だから最初に揃えるんだ。
結局、橋ができたら全部解決するんだけどな。
島の人と話すといつも、早く橋ができたらいいねって言って、
最後にはそれに尽きるんだ。」
気仙沼大島と市内を結ぶ橋は、9年後完成予定で進行中とのこと。
橋ができれば、今回の震災で島を出た人も戻ってくるかもしれない。
どこの島でも同じような問題があると思いますが、
島に橋をかけることは各島、賛否両論あるようです。
けれども大島の人にとっては、
島と市内を繋ぐ橋は今後の復興にもとても重要であり、
多くの島人が望んでいるように思えます。
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船の運賃に関する事は、被災地の復興を考える中でも
なかなか取り上げにくい問題だと小松さんは言います。
けれど、より多くの人に知ってもらいたいとも話しています。
「多くの人に、大島に住む我々の問題を知ってもらうことで、
少しでも改善されるかもしれない。そんな我々を応援してほしい。」
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1月末に、気仙沼大島に宮城県県長が訪問した際に、
小松さんはじめ、大島の有志達で直接お話したそうです。
今後、この問題を県がどのようにとりあげ、
国に話をしてくれるかが、行く末を握っています。
いつ解決するかもわからない問題ですが、
多くの島人は少しでも前の暮らしのように戻り、
少しでも暮らしやすくなることを望んでいます。