つくろう、島の未来

2024年04月26日 金曜日

つくろう、島の未来

全国の子どもたちが「新聞づくり」を通して海と島でできた日本を学ぶ「うみやまかわ新聞」が2月1日に完成。離島3島を含む全国5地域の子どもたちが東京に集まり、成果発表を行いました。後半は発表会後に行われたワークショップの模様についての様子についてレポートします。

■日本各地の「つながり」や「ちがい」を知るワークショップ

利尻島(りしりとう|北海道)、檜原村(東京都)、弓削島(ゆげじま|愛媛県)、中津江村(大分県)、与那国島(よなぐにじま|沖縄県)の5地域16人の小中学生が、『うみやまかわ新聞』の制作を通して学んだことについて発表した後は、全員でワークショップを行いました。
(発表会の様子は前半のレポートをご覧ください)

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『うみやまかわ新聞』のねらいは、自分の暮らす地域の新聞をつくるだけでなく、他の地域がつくった新聞と見比べることで、日本各地の「つながり」や「ちがい」を知ること。

そのため、5地域の新聞が合体した『うみやまかわ新聞 全国版』の最終ページには、各地の新聞を見比べながら海と島でできた日本や、自分の暮らす地域についてイメージを膨らませてもらえるよう「各地の『うみ』『やま』『かわ』はそれぞれの地域にどんな恵みをもたらしているだろう?」「自分の暮らす地域にはどんな『うみ』『やま』『かわ』があり、どんな恵みがあるだろう?」「自分の暮らす地域とよその地域にはどんな『つながり』や『ちがい』があるだろう?」という3つの質問が書かれています。

このワークショップは『うみやまかわ新聞』を読みながら、質問の答えをみんなで話し合って発表しようというもの。それぞれの地域にある「うみ」「やま」「かわ」の恵みや、自分の暮らす地域と他の地域とのつながりや違いについて、見学に来ていた大人達も加わって話し合いがはじまりました。

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昨年9月に新聞づくりがはじまった頃は、子どもたち同士のコミュニケーションもぎこちなく、考えがなかなかまとまらなかった話し合いの時間も、この日は見違えるほど活発なものになっていました。

その後、話し合った内容を発表。愛媛県の弓削島は「弓削島は水を広島から引いているので、水が豊富にある檜原村や中津江村はすごいなと思いました」と、環境の違いについて発表しながら、「弓削島には美味しいミカンなどが育ちます」と改めて実感した恵みについて教えてくれました。

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ほかにも「利尻島には利尻山があって、空気や水をきれいにしてくれるから、海がきれい。だから島の人が健康でいられる」(利尻島の子どもたち)。「海がある地域とない地域では文化や仕事がちがっている」(中津江村の子どもたち)など、それぞれが暮らす地域の恵みや、他の地域との違いについて発表し、新聞づくりを通して学んだことをしっかりと共有しました。

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『うみやまかわ新聞』づくりの工程では、各地と東京をテレビ電話でつないで会議を行うなど、ICT(情報伝達技術)を活用して、遠く離れた地域にいながらひとつのものをつくりあげる作業が繰り返されました。

北海道から沖縄まで、それぞれの地域に暮らす子どもたちが、新聞づくりを学びながら地域への取材を重ね、たくさんの原稿を書いてできあがった『うみやまかわ新聞』。自分たちの地域を見つめるのと同時に、遠く離れた地域の仲間がつくる新聞を通して、つながりや違いがあることを知り、大事なものを尊重する心が育まれたように感じました。

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最後に行われたランチ会では、いろいろな地域の子どもたち同士がすっかり打ち解けてわいわいおしゃべり。連絡先を交換し、全国各地に友達を得て、それぞれの村や町へ帰っていきました。

2014年度にはじまった『うみやまかわ新聞』は、来年度もたくさんの子どもたちとともに作られる予定。新聞づくりに携わった子どもたちが「多くの人に読んでほしい」「新聞を読んで、自分たちの暮らす地域に興味を持ってほしい」と口にしたこの言葉の意味はきっと、実際の『うみやまかわ新聞』を読めば腑に落ちるはず。新聞は各地域に配られるほか、都内3カ所で行われる展示会や、WEB版から読むことができます。

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登場する5地域はもちろん、自分たちの身近にある「うみ」「やま」「かわ」に思いを馳せるきっかけにもなるスペシャルな新聞が多くの人に読まれることを願ってやみません。

離島経済新聞 目次

島と海でできた日本を学ぶ 『うみやまかわ新聞』プロジェクト

『うみやまかわ新聞』は小学校高学年向けの教育プログラムとして、「地域への愛着の醸成」「同年代児童とのコミュニケーション機会の提供」「情報の基本知識(メディアリテラシー)」などを目的に小学校の総合的な学習の時間や地域活動の一環として導入しています。2016年度は7つの離島地域を含む全国14地域の児童が「うみやまかわ新聞」を制作しました。


<2016年度参加離島地域>

利尻島(北海道利尻町)/沖島(滋賀県近江八幡市)/弓削島・生名島・佐島・岩城島・高井神島・魚島など(愛媛県上島町)/対馬島(長崎県対馬市)/口永良部島(鹿児島県屋久島町)/沖永良部島(鹿児島県和泊町)/津堅島(沖縄県うるま市)


<プログラム概要>

このプログラムでは1年間に20コマ(1コマ×45分)ほどを使い「メディアリテラシー」「地域情報のリサーチ」「取材」「原稿制作」「校正」などを学びながら、自らが暮らす地域を紹介する新聞を制作。離島経済新聞社が講師を担当し、学校の先生や地域コーディネーター(※1)と連携して授業を行います。

毎回の授業は「テレビ電話システム」も活用。関東や沖縄など各地にいる講師陣と小学校とを接続して実施。テレビ電話を使うことで、遠く離れた地域ともリアルタイムな授業ができ、参加地域同士を接続した交流授業も行います。

新聞完成後には、東京スカイツリーで「2016年度うみやまかわ新聞完成発表会」を開催。各地域の代表児童が東京に集まり、地域のことや制作した新聞について発表しました。

※1 地域コーディネーター……授業のファシリテーションやICT機材の接続など、小学校と離島経済新聞社をつなぐ役割として、実施地域に詳しい方や地域で活動している方にお願いしています。

詳細は『うみやまかわ新聞』公式サイトをご覧ください
http://umiyamakawashinbun.net/

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